地球と人と
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Essay■ 6_146 LIGO 4:展望
Letter■ グラフ・因果とべき乗則
Words ■ 北海道は蒸し暑さに茹だっています


(2017.07.13)
 LIGOの3回の重力波の観測で、大きな展望が開けてきます。重力波を起こすような現象がべき乗則に従うものであれば、感度を上げれば、多数の重力波が観測ができることになります。そうなれば、天文学の新しい分野が生まれるはずです。


Essay■ 6_146 LIGO 4:展望

 LIGOでの最初の重力波は、数百年に一度の現象を捉えたとされ、非常に幸運であったとされました。その後の観察で、最初の現象と比べると規模は小さいですが、重力波は稀な現象ではないことがわかってきました。
 第1期の4ヶ月ほどの観測で1個を発見しました。もしかすると、もうひとつの重力波の現象も起こっていたかもしれませんが不確実でした。その後、2016年11月30日に開始された第2期の観測から、8ヶ月ほどで2つの観測がありました。重力波の発生現象は、平均すると4ヶ月に1回くらい起こっていることになります。この値は、観測数が少ないので正確ではないのですが、稀な現象ではなく、頻繁に起こる現象だとはいえそうです。当初の数百年に一度の現象ではなく、年に数回は観測できそうです。
 一般的にさまざまな現象が、べき乗則と呼ばれる頻度で起こることは、よく知られています。べき乗則とは、規模の大きさとその出現頻度は、指数関数に似たべき乗関数的な関係があるというものです(厳密には指数関数とべき乗関数は違います)。例えば、地震の起こる頻度とマグニチュードの関係は、大きなものは稀で、小さいものは頻繁に起こる、べき乗則(グーテンベルグ・リヒター則と呼ばれています)になります。隕石の衝突のサイズと頻度の関係もべき乗則です。べき乗則は、経済学ではパレートの法則とよばれ、「売上の8割は全顧客の2割が生み出している」などの例があります。生物学では「働きアリのうち、8割が本当に働き、残りの2割のアリはサボっている」などの例があり、「80:20の法則」とも呼ばれています。
 もし重力波を発生するような現象が、べき乗則になるなら、規模の大きな合体はまれでも、小さなものはべき乗的に多くなるはずです。もちろん、ブラックホールの衝突合体自体は稀な現象ですから、しょっちゅう観測できるものではないでしょう。さらに、小さいものがどんなに頻繁に起こっていたとしても、遠くでは観測できなくなるでしょう。でも、装置の感度を上げれば、年に数個や、月に数個の観測数は期待できるとも考えられます。
 3回の重力波は、天文学において、全く新しい観測手段が生まれたことになります。
 可視光を光学望遠鏡で天体を観測していたときと比べ、他の周波数の赤外線やX線、電波などで観測ができたことで、天体現象の理解が格段に深まりました。また、ニュートリノを用いた観測では、超新星爆発や太陽の内部構造などを見る手段を得ることができました。そこに今回、重力波の観測ができる装置は、「重力波望遠鏡」とも呼べるものになるのでしょう。新たな天文学がスタートするはずです。できれば、日本で新たに開発している「重力波望遠鏡」も、観測に成功して欲しいものです。観測場所が増えれば、発生源の位置の情報の精度が上がります。今後に期待しましょう。


Letter■ グラフ・因果とべき乗則 

・グラフ・
指数関数とべき乗関数の違いは、
グラフを書くと理解しやすくなります。
片方の軸が指数にしたとき(片対数グラフ)、
直線になるのが指数関数です。
両方の軸を指数にしたとき(両対数グラフ)、
直線になるのが、冪数関数です。
線形のグラフにすると形がよく似ているのでが
べき乗関数の減少が緩くなります。
このゆるい部分が、ロングテールと呼ばれます。
昔、分析データをプロットして
規則性を見出そうとするとき、
片対数グラフや両対数グラフを
手書きで何枚も書いていました。
懐かしい思いです。
今では、Excelなどでデータを収集し、
グラフ作成ソフトで一瞬にして
いろいろ軸を変えて簡単に書けてしまいます。

・因果とべき乗則・
80:20の法則は、べき乗則の別の表現といえます。
多い頻度側の2割をとると、
全量の8割を占めることになります。
ですから、80:20となる現象があれば、
その背景にべき乗則があります。
これは現象の出現頻度を示すものであり、
その個々の現象の原因を
示しているわけではありません。
ただし、解明した原因が
べき乗則を満たしていなければなりませんが。


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