地球と人と
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Essay■ 6_143 LIGO 1:幸運な観測?
Letter■ 視覚の拡張・初夏の風物詩
Words ■ 時の流れは速い


(2017.06.22)
 大ニュースであっても時間が過ぎると、後続のニュースは流れてこなくなります。一部の専門家だけで情報が共有されているだけとなります。情報は公開されていても、ニュースにはなりません。今回は、そんな人目に触れにくい話題です。


Essay■ 6_143 LIGO 1:幸運な観測?

 LIGOという名前を聞いたことがあるでしょうか。子ども遊ぶブロックのLEGOではありません。LIGOはライゴと読みます。Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatoryの頭文字を取ったもので、「レーザー干渉計重力波観測装置」です。重力波を観測する装置で、本エッセイでも「重力波の観測」として5回のシリーズで紹介したことがありました。
 少々ややこしい話なので、まずはちょっと復習をしておきましょう。
 重力波とは、1916年にアインシュタインが一般相対性理論で予言したものです。時空に生じたゆがみが、波動として光速で伝わっていくものです。時空とは重力場を意味しますので、ゆがみが起これば重力波が発生します。重力場がゆがむことは常に起こっているのですが、それは非常に微小な現象にしかなりません。重力波を検出するためには、大きな重力のゆらぎを起こす現象が必要になります。さらに、微細なゆらぎを検出できる、非常に敏感な装置が必要になります。大きな現象と敏感な装置の2つがそろって、はじめて重力波が観測可能になります。
 そのような現象として、ブラックホール、中性子星、白色矮星などの密度が大きく、サイズの小さい天体が連星となっている場合、それらが合体する場合、また超新星爆発で大きな重力波が発生する場合などが考えられています。そのような現象でも、変動は非常に小さく、10^-21というスケールのものです。検出するには、感度が非常に高くなければなりません。
 LIGOは、2005年から2010年まで観測しましたが、検出能力が足りなく失敗に終わりました。装置を改良し2015年から観測が再開されたところ、わずか2日目に、重力波をキャッチしました。その現象は、2つのブラックホールの合体で発生した重力波でした。2つのブラックホールが、ぶつかる時の相対速度は、光速度の半分以上にまで達していました。ブラックホールは、太陽質量の29個分と36個が合体して、62個分になりました。太陽質量の3個分が、重力波として放出されたと考えられました。
 このように重力波が検出できるような現象は、数百年に一度くらいの頻度で起こるものだと考えられていました。そんな稀な現象が、観測早々に発見できたのは幸運でした。さらに、これから重力波天文学が花開くのではないかということも紹介しました。
 今回のシリーズは、LIGOの意義を再度考え、その後の活動と最新情報を紹介していきます。


Letter■ 視覚の拡張・初夏の風物詩 

・視覚の拡張・
最近の研究成果には、
人が直接見ることも感じることができないような
領域のものが多くなってきた気がします。
まあ、考えてみれば当然かもしれません。
それが科学や技術の進歩だからです。
見ることに関していえば、
目で見えるもの(波長)と比べて
検出できる範囲は何桁も広がりました。
肉眼では見れなくても、
見えるようにする技術(デジタル処理)も進んでいます。
また、遠くのものも検出したり(望遠鏡)、
行けるところはいってみること(探査機)も
できるようになりました。
それより、それを理解するための想像力が
追いつけるかどうかの方が、問題かもしれません。

・初夏の風物詩・
わが町では、ヒバリからエゾハルゼミ、
そしてカッコウの鳴き声と鳴き声が変わってきました。
早朝のカッコウの声は、
初夏を感じさせるものです。
北海道では、もう寒く感じる日はなくなりました。
まあ、乾燥しているので、
風があると涼しく感じることもありますが。
あれよあれよという間に、時間は過ぎていきます。
この間、YOSAKOIがあったと思ったら、
もう6月の下旬になっています。
時の過ぎるのは早いですね。


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