地球と人と
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Essay■ 6_140 ニホニウム:科学への共感とは
Letter■ 大雪・パソコン破損
Words ■ いよいよ押し詰まってきました


(2016.12.29)
 これが今年最後のエッセイとなります。ここ数年、その年の科学の大きな話題を取り上げていました。今年もそうしようかと思いましたが、2016年のはじめに書いたシリーズのエッセイ「5_131 113番目の元素」(2016.01.07)に関連して、その後の話を紹介したいと思います。少々長くなりました。


Essay■ 6_140 ニホニウム:科学への共感とは

 理化学研究所がはじめて合成に成功したのは昨年末のニュースでした。新元素に対して、命名権を国際純正・応用化学連合(IUPAC)に申請していたものが、このたび認定されました。そして11月30日に理化学研究所から、正式名称を伝えるニュースが出されました。
 元素名は、nihonium(ニホニウム)で、元素記号は、Nhとなりました。日本で、あるいはアジアでも、はじめての元素の発見であり、命名となります。
 発見したのは森田浩介(もりた こうすけ)さんをリーダーとするグループで、理化学研究所の最新の装置、重イオン線形加速器「RILAC」を用いて合成への挑戦がなされました。実験は2003年9月にスタートしました。10ヶ月後の2004年7月には、はじめて113番元素が合成できました。113番目の元素かどうかは、原子の崩壊過程を見ることで確認されました。ひとつでは確かかどうかがわからないので、もう一つの元素を合成することなりました。その合成も、2005年4月に成功しました。
 しかし2個目の元素も、最初の元素と同じ崩壊過程をたどりました。実は他にも崩壊の過程もあるはずなのですが、その崩壊を確認しなければ新元素とはいえないという判断がありました。別の崩壊過程を確認するためには、再度合成が必要になります。ところが、3度目の合成に手こずりました。なんと7年後の2012年8月12日にやっと合成ができて、その時の崩壊過程が期待していたものでした。これでやっと新元素であることの証拠が揃いました。
 大変な苦労を経て、この実験がなされました。その間に東日本大震災もありました。実験には膨大な電力を使うことになります。その間、節電や経費の自粛などの葛藤もあったと聞きました。しかし、この快挙の喜びを私たちは素直に共有したいと思います。皆さんも、ぜひ、科学の成果に対して喜びを共有していただきたいと思います。
 京都大学の山中さんが合成に成功したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を記憶している人も多いでしょう。その成果は、今後のいくつもの難病治療に光明を与えるとして、多くの人はその成果がでることを期待し、ノーベル賞受賞を祝福したのではないでしょうか。しかし、その後の成果をどの程度見守っているでしょうか。ノーベル賞以上のニュースは聞こえてこないので、忘れ去っている人が多いと思います。
 山中さんは、受賞当時から、「実用化には時間がかかる」とおっしゃっていました。現在も少ずつですが、研究成果は上がっています。その成果が誰もが享受できる状態にはまだなっていません。山中さんの想定通りです。
 ノーベル賞受賞の報道を聞いた人は、すぐにでも自分たちの治療に役立つと思ってその成果に期待して賞賛しました。これは、一種の誤解を与える報道だったのではないでしょうか。メディアは、山中さんん話をしっかり受け止めて、それを正確に伝えることに力を注いでほしいものです。
 近年、科学の発見にニュースが流れると、「その発見は、いったい私たちにどんなメリット、利益がありますか?」という質問が常に公にされます。本当に、それを市民が望んでいるのでしょうか。そのメリットを聞いて、本当に理解している人、あるいは納得できている人は、どの程度いるのでしょうか。
 私は、メリットや利益より、市民に対して、その成果をわかりやすく説明することや、その発見が「今後の科学にとって、どのような影響を与えるのか」を説明することの方が重要だと思います。そして、その説明がわかりにくい場合があったとしても、説明努力は必要でしょう。さらに、その発見に関わってきた人たちの努力や苦労、あるいは新しいアイディア、今までにない工夫、最新の装置などを説明していくことで、発見に伴うエピソードを説明することの方が大切だと思います。
 そんな苦労して得られた成果に対して、市民は共感を覚えるでしょうし、巨大な装置を駆使してできた発見には、子どもたちは夢や希望を持ってくれるでしょう。その最たるものが、宇宙や天文の観測や新発見、深海や極地、地球内部の探査による新発見は、説明抜きで興味や、なにより科学者の興奮を共有できます。それが科学の醍醐味ではなでしょうか。あるいは科学を支える市民、国民、人類の望みではないでしょうか。
 税金を使ったから、巨大な費用を投入したからといって、自分への見返りを本当に人びとは望んでいるのでしょうか。発展途上国の経済発展や福祉の向上のための援助である政府開発援助(ODA)は、見返りを求めてのものではないはずです。豊かな心をもって行われる行為のはずです。それを同じ心持ちで科学への支援、興味を抱いてほしいものです。


Letter■ 大雪・パソコン破損 

・大雪・
北海道は週末に大雪となり、交通が大混乱となりました。
特に札幌から千歳にかけては、
50年ぶりの大雪で、数日間その影響が続きました。
札幌に雪が降るとき、岩見沢には雪が少なくなります。
これは、地形に関係しています。
風向きによって、雪雲の広がり方が違ってくるからです。
石狩湾から雪雲が入ってくるのですが、
風向きによって手稲の山並みか当別の山並み
のどちらかに遮られることになります。
今回の雪は、南に向かって吹き込んだようで、
札幌方面が大雪になりました。
私が住む江別は通常の雪の状態でした。

・パソコン破損・
メインで使っているパソコンが壊れました。
現在、臨時体制で自宅にあったパソコンを持ってきて
それをメインにして使っています。
2015年夏にも同じようなことが起こりました。
今回はSSDの破損かと思い新規のSSDを購入して
対応しましたが、それではないようです。
マザーボードがイカれたようです。
このパソコンは自前で購入しているので、非常に痛いです。
カネがないので、しばくこの臨時の状態で凌ぐしかないようです。


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