地球と人と
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Essay■ 6_133 重力波の観測 2:干渉計
Letter■ 先陣争い・変化の時
Words ■ 原理は簡単だが・・・


(2016.02.18)
 重力波をとらえれば、ノーベル賞確実といわれているような研究でした。ですから、多くの国で先を争うように、観測を進めていました。その中でアメリカの研究グループが、最初に重力波をとらえることに、成功しました。


Essay■ 6_133 重力波の観測 2:干渉計

 今回、重力波を発見したのは、アメリカのカリフォルニア工科大学(Caltech)とマサチューセッツ工科大学(MIT)を中心とする研究グループです。Caltechのキップ・ソーンとMITのロナルド・ドリーバーらが中心となって観測しました。The Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory(LIGO)という施設で検出されました。LIGOは、レーザー干渉型重力波天文台の略です。
 まずは、この観測装置の原理を説明しましょう。重力波は時空間をゆがめるので、そのゆがみを距離の変化として観測すればいいことになります。
 ゆがみをとらえるにはいくつかの方法があるのですが、今回検出した装置は、レーザー光の干渉を利用しています。レーザー光を発生させ、ひとつのレーザー光を、半透明のガラス(ビームスプリッターと呼ばれている)で、半分を透し、半分を反射させ90度に曲げます。つまり、直交する2方向に分けます。そして、長い距離(空間)を飛ばします。それを鏡で反射させてもどってこさせて、ビームスプリッターで再びひとつのレーザー光にします。その時空間にゆがみがなければ、レーザー光は合成され、もとの状態にもどり、変化なしとなります。もし、時空間にゆがみが生じたとすると、合成されたレーザー光には、ゆがみを反映した周期にずれが生じ、レーザー光に干渉が起き、検出でます。
 干渉計の原理は、もともとアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーが光速度を調べる実験に用いたものです。現在では、マイケルソン干渉計と呼ばれています。今回も、その原理による装置を用いられました。マイケルソン干渉計は光を伝える媒体(エーテルと呼ばれていました)が存在するかどうかを調べるための実験で、物理学においては非常に重要な成果となりました。この実験結果によって、光速度は一定であることが示されました。光速度一定という結果は、アインシュタインは相対性原理の基本としていました。そこから、重力波の予言が生まれてきました。今回、重力波の存在を示したのが、同じ原理を利用した干渉計でした。少々因縁めいたものを感じます。
 装置の原理は簡単です。しかも、時空間の変動による重力波は、いつでもどこでも発生しています。質量のあるものが、運動していれば、重力波を発生しているのです。それが重力です。しかし、その変動は非常に小さいもので、波として検出は不可能です。ですから、できるだけ大きな質量で、変動しているものからでる、大きなゆがみを検出することになります。そのような大きな時空の変化を起こす天文学的イベントして、超新星爆発、重い連星(中性子星同士やブラックホール同士)の衝突などがあります。
 そのような天文現象は、非常の稀なできごとです。そしてなおかつ、そのゆがみは非常に小さなものです。そのような大規模な現象の重力波であっても、時空間のゆがみの幅は、10^-21というスケールになります。ちょっと想像できないものですが、地球と太陽の距離(1億5000万km)においてこのゆがみが発生したとにすると、0.1nm程度(水素原子核ほどのサイズ)の変化が起こることになります。このスケールのゆがみをとらえる技術が必要になります。
 重力波は、これらは非常のまれな現象の、非常に小さな変化なので、とらえるには、大きな装置と、長い時間、観測する必要があります。しかし、そのような膨大な国家的予算と研究者の労力、そしてたゆまぬ知恵と工夫が必要になります。その結果、今回の発見となりました。


Letter■ 先陣争い・変化の時 

・先陣争い・
大きな装置には、多くの費用がかかります。
そのために多くの研究者グループがかかわることになります。
観測のために原理はある程度わかっているので
いくつもの国の研究グループが
それぞれに装置をつくって検出をしようとしています。
そして先陣争いをしていると思います。
どれくらいの精度で観測するのか、
いつからスタートするのかによって、
成否に大きな影響があるはずです。
遅れを取ったグループは、
非常に残念な思いをしているはずでしょうね。

・変化の時・
いよいよ短い2月も終わります。
私立大学の第一陣の合格発表がでています。
そして、現在、国公立の入試が行われています。
そして、大学に入試は第二陣に入っていきます。
大学の在学生たちは、
卒業へ向けて秒読み段階になります。
大学は出入りの人が起こる
変化が起こる時期でもあります。


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