地球と人と
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Essay■ 6_124 丸山電気石 4:ダイヤモンド
Letter■ タイプ標本・秋の深まり
Words ■ 雪虫前の秋の深まり


(2014.10.09)
 丸山電気石という新鉱物は、超高圧変成岩で見つかりました。この鉱物は、ダイヤモンドを中に含んでいました。小さな粒で宝石にはできませんが、地質学的には重要な意味をもっていました。その意味を紹介していきましょう。


Essay■ 6_124 丸山電気石 4:ダイヤモンド

 これまで、丸山電気石の発見のいきさつや特徴について、いろいろ述べてきました。最後に、この新鉱物の地質学における意味をみていきましょう。
 丸山電気石は、中央アジアのカザフスタンのコクチェタフ超高圧変成帯の岩石から見つかったことを紹介しました。超高圧とはどのような条件でしょうか。ひとつは日本列島のようなプレートの沈み込み帯で、沈み込んだプレートが大地の営みによって持ち上げられると、その岩石は高圧条件で形成された変成岩となります。しかし、その深度は深くても70km程度です。それより深くなると、マグマが形成される場(火成作用)となっていき、変成岩ではなくなります。70kmは、もちろん、それは沈み込み帯での圧力条件ですが。
 今回見つかった丸山電気石は、数百μmほどの大きさで、なおかつ知られている鉱物の中に、ある部分だけが新鉱物であるという、非常に特異な産状をしていました。そして新鉱物には、中に小さいダイヤモンド(マイクロダイヤモンド)が入っていました。それが新鉱物発見のきっかけともなっていました。電気石とダイヤモンドが一緒に産することも。初めての発見でした、
 ダイヤモンドは、宝石として貴重なものですが、地質学的にはその成因が重要視されています。ダイヤモンドは、超高圧の条件でないと形成されない鉱物だからです。その深さは、120kmより深いところだと考えられています。沈み込み帯の変成岩では考えられない深さでもあります。
 今回の超高圧変成岩は、大陸プレート同士の衝突の場で形成されたものと考えられています。大陸プレート同士の衝突のプロセスは、まず大陸プレート(ユーラシアプレート)に海洋プレート(テチス海プレート)が沈み込みんでいました。大陸同士(ユーラシア大陸とインド大陸)が近づいてくると、陸に近いところにたまった大量の堆積物をともなった地層も衝突をはじめます。やがて大陸同士の衝突になります。
 大陸プレート同士の衝突では、もともと厚い大陸地殻がぶつかって重なっていくため、高い山脈が形成されます。さらに、地下でも深くまで大陸の岩石や地層が押し込まれた重なった状態になります。押し込まれる岩石のなかには、大陸プレートの間にあった地層もありました。
 地表や海底でたまった堆積物には、カリウムや炭素や、ホウ素を比較的多く含む部分もあります。これらの成分が今回の電気石(カリウムとホウ素は主成分のひとつ)やダイヤモンド(炭素のみが主成分)の材料となりました。分厚い山脈の岩石と深くまで潜り込んだ岩石によって、大陸プレートの衝突の地下は、超高圧変成作用の場となります。
 時には120kmよりも深いところまで潜り込む岩石もありました。そのような場でダイヤモンドと丸山電気石が形成されたことになります。そして、衝突の場として激しい変動が継続しながらも、大地の営みで、深部の岩石が地表にもたらされたことになります。
 丸山電気石は、地球深部からもたらされた、地下からの手紙でもあるのでしょう。


Letter■ タイプ標本・秋の深まり 

・タイプ標本・
丸山電気石は、記載された後、
タイプ標本は国立科学博物館に保管されています。
タイプ標本とは、生物の新種記載のときに
用いられていた言葉なのですが
鉱物にも転用されています。
新しい鉱物種を定義するために用いた標本のことで
将来、似た鉱物があったとき、比べるときに
その鉱物の示す基準とする標本のことです。

・秋の深まり・
北海道はここ数日、冷え込んできました。
我が家はストーブを炊くところまではいっていませんが、
気の早いところ、寒がりの家庭では、
ストーブをつけたところもあるかもしれません。
先日の朝も、霜が降りていました。
高山での初雪の便りは9月の中頃にありましたが、
里はまだまだのはずです。
9月下旬までは、暑くて上着もいらない日もありました。
しかし、一気に秋が深まりました。
まだ雪虫の飛び交う姿が見ていないので
早すぎる秋の深まりに間に合っていないのかもしれません。


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