地球と人と
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Essay■ 6_113 バイオミメティックス 3:新素材
Letter■ 放送にて・北海道も夏
Words ■ いよいよ北海道も夏らしくなってきました


(2013.07.11)
 バイオミメティックス「生物模倣」で生まれつつある技術は、近年いろいろあります。その例として、人工光合成、リブレット構造、構造色、スパチュラ造色を紹介していきます。


Essay■ 6_113 バイオミメティックス 3:新素材

 人は、生物や生物がつくったものを使っていました。生物を食べ、生物を着て、生物を利用して住んでいました。自然にやさしいのですが、量産化をしようとすれば、自然への負荷をかけることにもなります。ただし、長期間量産化している状態が維持されると、酪農地域や田園風景、里山などと、新たな自然との調和を生むことになります。
 もっと効率的に利用したと考えるる、自然への負荷がさらに大きくなります。製造工程や製造効率を考えると、生物が行なっている仕組みを必要なものだけ人工的につくっていくというバイオミメティックスが有効になります。
 1970年代には、日本でも人工光合成に力が入れられていました。人工葉緑体とも呼ばれています。現在でも二酸化炭素の消費やエネルギー源として、注目されています。二酸化炭素を利用して、エネルギー源として利用できる酸素と水素が生まれます。水素を目的とするだけでなく、光合成生成物として有用な有機物や燃料になるメタノールを生産も可能になるのではないかと期待されています。
 2008 年の北京オリンピックでは水泳の競技用水着で、SPEEDO社の製品を着れる、着れないで、日本でも大きな話題になりました。そのときの水着は、サメの肌の構造を利用したものでした。サメの肌の拡大していくと、数10μmから数100μmのリブレットと呼ばれる溝状の構造があります。そのリブレット構造は、流体力学的に抵抗摩擦が非常に少ないことがわかりました。それを水着に応用すると、水の抵抗が減り、スピードが上がることになったのです。このバイオミメティックスの技術は、汚れ防止のコーティングや船底の塗装などにも利用されています。
 チョウやタマムシは、鮮やかの色を持っています。その色には、通常の色とは違った仕組みがありました。チョウの鱗粉を拡大してみると、2〜3μmほどの構造が繰り返されていることがわかりました。この繰り返し構造は、ある光の波長と同じ間隔であり、その波長の光だけを反射して輝くことになります。つまり色を使うことなく、色を出すことができます。このような色を構造色と呼んでいます。オパールやコロイド結晶などでも同じような発色が起こっています。発色繊維として日本の企業が商品化しています。
 ヤモリは、つるつるしたガラス窓でもすべることなく登っていきます。さらに、吸着力があるのに、移動の時はすぐ剥がれることもできます。非常に不思議な特性をもっています。ヤモリの足の裏には、吸着力があるのですが、粘着質になっているわけでなく、小さな繊維があるだけです。直径5μm、長さ100μmの毛があり、その先端には枝毛が多数あります。その枝毛が、皿状(スパチュラ、spatula)の変わった構造をもっています。その皿は、直径200nmほど小さいものです。この皿状構造が、「ファンデルワールス力」という力を生み出して、くっついていることがわかりました。
 この構造をカーボンナノチューブを集めて再現されました。するとこれは強い接着力をもったものとなり、斜めにから力を加えると簡単に剥がすことができます。5cm四方のテープなら115kgの重さをくっつけること非常に強力は吸着力があります。現在、アメリカの研究者たちや日本の企業が素材を開発し、商品化を目指しています。この素材は、粘着部があるのではなく、微細構造による接着なので、剥がしても構造が壊れない限り、何度も利用できます。
 他にも、細くて丈夫なクモの糸、超撥水性をもっている蓮の葉、光を反射しないアリの眼、砂を移動するトカゲ(サンドフィッシュ)の摩擦が少ないウロコなど、いろいろな素材が開発や商品化を目指されています。いずれも、詳しくみていくと面白いところがあるのですが、今回はここまでにしておきます。
 身近なところに、人類のまだ知らないお手本が一杯ありました。そのお手本は、見て知るための観察装置、そして知ったことを再現するための技術力もなければなりません。21世紀は、そんなお膳立てが整った時代なのかもしれません。私たちは、やっと自然から学び、そして活かすことができるようになったのです。


Letter■ 放送にて・北海道も夏 

・放送にて・
先日、NHKでバイオミメティックスについての
番組がありました。
番組では、今回、紹介しようと思っていた
素材があったので、少々戸惑いました。
番組では詳しくでていなものを
今回は紹介することにしました。
今、注目されているものは、
いろいろなメディアで取り上げられるのですね。

・北海道も夏・
北海道は数日暑い日が続きました。
暑さには弱いのが北海道人です。
ぐったりとして、仕事に集中出来ません。
論文が、はかどらなくて困りました。
ただ、夜になると涼しくなり、睡眠は取れます。
やっと雨が降って涼しくなり、一息つけました。
いよいよ北海道も夏です。


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