地球と人と
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Essay■ 6_92 海底から:レアアース3
Letter■ 研究環境・教育制
Words ■ 逆境を励みに


(2011.08.04)
  現在の科学技術において、思わぬところや、新しい素材に、レアアースが使われています。そのようなレアアースがある日突然、なくなったら今までの技術は方向転換しなければなりません。そんな時、朗報がありました。ただし、まだこれからの可能性ですが。


Essay■ 6_92 海底から:レアアース3

 レアアースは、少ない資源です。なのに重要視されています。そのような利用のされ方をしているのでしょうか。
  レアアースの用途として、古くはライターの火打ち石やテレビのブラウン管に使われてきました。ですから、案外身近なところで利用されていました。ところが、喫煙率の低下や電子ライターの出現、プラズマ・ディスプレイや液晶ディスプレイの発展によって、需要量は変化していきます。
  一方、強力な磁石・磁性体材料、光や光磁気ディスク、蛍光体やレーザーなどにレアアースは使われはじめています。今までにない新しい素材となっています。いずれもICT関係ですが、他にも、水素吸蔵合金(新しいタイプの燃料電池)、光ファイバ増幅器や超伝導材料など、これからのおおいに使われていく素材にも利用されています。どれも、現代の科学技術を考える上で、非常に重要な役割を持っています。
  このような重要素材にレアアースは使われているので、資源が枯渇するなら代替のものを見つけなければなりません。それには新素材や新しい技術を開発することになり、費用も人材もつぎ込まなければなりません。そしてなんといっても、時間的余裕必要です。ある程度の時間があれば、じっくりと開発できます。ところが先日のようには、国際事情である日突然、レアアースの供給が止まってしまうと、日本の工業が生命線を絶たれることになりかねません。とりあえずは、他の国の供給源、複数の供給源を確保することが重要になり、各地でのレアアースの確保が模索されています。
  そこに、新しいタイプのレアアース鉱床が発見されたというニュースが報告されました。発見者は東京大学の加藤泰浩さんたちです。イギリスの科学雑誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」の電子版2011年7月4日号に掲載されました。
  この論文は、太平洋の海底の泥から、レアアースが見つかったという報告でした。この論文の重要性は、海底の泥は、無尽蔵ではありませんが、膨大な量あります。これは朗報です。さらに、今までにないタイプの鉱床であることは、科学的な重要性を持ちます。この報告には、他にもいろいろ将来の可能性を感じさせる内容があります。ただし、いずれも実用化はこれからです。その詳細は次回としましょう。


Letter■ 研究環境・教育 

・研究環境・
Natureというイギリスの雑誌は、
科学の世界ではもっとも権威ある雑誌のひとつです。
この雑誌はかつては
Nature一誌しかなかったのですが、
いろいろな姉妹雑誌が出版されてきました。
今回のNature Geoscienceのそのひとつです。
他にも、Natureがつくだけでも20以上の雑誌があります。
それぞれの専門分野に別れて出版されています。
それだけ研究分野も研究者の数も多くなったのでしょう。
また論文の生産量が多くなったこともあるのでしょう。
フォローするものは、どの雑誌を見ればいいのか、
個人で雑誌を多数購入するのはもともと不可能ですし、
大学でも購入雑誌の数には限界があります。
それでも予算のある大きな大学はいいのでしょうが、
小さな大学は情報からも取り残されます。
我が大学では、Nature本誌はありますが、それ以外はありません。
研究環境において、格差がでてきます。
でも、環境や条件に左右されない
普遍的なアイディアや研究もあるはずです。
そして逆境は、なによりモチベーションになります。
これは負け惜しみでしょうか。

・教育・
大学は、今週は定期試験の真っ最中です。
午前中はまだ涼しいのですが、午後は暑いです。
まあ、北海道ですから、本州と比べるとましでしょうが、暑いです。
そんな中でテストを受ける学生はかわいそうです。
しかし、大学の講義が15回+定期試験となると
この日程になってしまいます。
この日程でも、きつきつです。
おかげで補習日が、ほとんど確保されていません。
まあ、補習などしなくてもいいのなら楽なのですが、
今度はFDや大学評価などで、授業保証や学生の満足度など、
昔は聞いたこともなかったことで、締め付けもあります。
いろいろややこしくなっています。
学生も大変、教員も大変です。
12、3回の講義から15回の講義になって、
昔より学生は、高度な内容を理解して卒業しているかというと、
必ずしもそうではありません。
昔の高校生の方がレベルが高いような部分や
高校で学んでおくべきことを大学で肩代わりしていることもあります。
大学が再教育機関であれば問題ないのですが、
これでは教育全体がレベル低下をしていることになります。
なによりモチベーションや目的意識の低下が気になります。
これでは、国民の教育度が低下していくことになります。
大学教育だけが変わってもあまり効果はなさそうです。
もっと抜本的な変化が必要なようです


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