地球と人と
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Essay■  6_70 岩手・宮城内陸地震
Letter■ 取りやめ・蝦夷梅雨
Words ■ 被災された方々に心からお見舞い申し上げます


(2008.06.26)
  先月の中国の四川大地震に続いて、日本でも大きな地震が発生しました。人的被害もでてしまいました。岩手・宮城内陸地震の概要を紹介します。


Essay■ 6_70 岩手・宮城内陸地震 

 2008年6月14日は土曜日でした。私は実習があったので、大学にいつものように早朝からでていました。実習が終わり、夕方6時過ぎに帰宅したら、地震のニュースが夕刊やテレビのニュースで飛び込んできました。
  午前8時43分に地震は発生しました。その時、私は、研究室で座っていました。しかし、地震の揺れを感じることはありませんでした。実習が始まるまで時間があったので、前回配信したエッセイを書いていました。
  この地震は、岩手県内陸、深さ約10kmを震源として、マグニチュード7.2、奥州市と栗原市で最大震度6強が記録されました。気象庁は、「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」と命名しました。
  日本地質学会では、地震の概要や調査団の把握、関連サイトのリンクを、いち早く速報として公開しています。調査団は、秋田大学教育文化学部調査班、山口大学地形・地質班、茨城大学班などが現地にはいっていきます。地質学会が出した情報の一つに、地質学的解説も発信されています。佐藤比呂志・加藤直子(東京大学地震研究所)・阿部進(株式会社地球科学総合研究所)さんたちによる「2008年岩手・宮城内陸地震の地質学的背景」というものです。
http://www.geosociety.jp/hazard/content0031.html
  この内容に基づいて以下紹介していきます。
  今回の地震は、断層が活動したものだと考えられています。震源地は、「餅転(もちころばし)−細倉構造帯」の北部にあたり、活断層とはみなされていなかった断層が、深部で活動し発生したとされています。活断層が発見されなかったのは、この地域が複雑な地質学的背景のあるところだったからのようです。
  震源付近は、奥羽山脈と北上山地の間にあたり、正断層がいくつもある地域です。この正断層群は、日本海が開く地質現象にともなって、2000万〜1500万年前に活動しはじめたものです。断層によって沈降が起き盆地を形成するような動きがありました。その後、奥羽山脈が隆起が起こり、さらに800万年〜200万年前にはカルデラを形成するような火山活動が起こりました。そこに第四紀の火山活動(栗駒山火山)が起こっています。
  500万年前(鮮新世)以降、古い時代に形成された正断層がせり上がる(逆断層)運動が繰り返し発生しています。今回の地震も、このような断層の動きによるものだと考えられています。
  残念ながら今回活動した断層は、活断層とされていませんでした。これは、2007年の新潟中越沖地震のときと同様で未確認、あるいは未知の活断層でした。私たちは、自分たちの立っている大地について、まだまだ知らないことだらけです。それは科学が発達して、調査も行き届いているようにえる日本でも例外ではないのです。地道な調査研究の必要性を思い知らされる災害でした。
  今回の地震では、巨大な地滑りが起こっています。その様子はニュースで報道されています。まだ、災害は終わったわけではありません。余震や、梅雨の降雨による土砂災害などの二次災害にも注意が必要です。
  度重なる天災から、学ぶべきこともあります。地震は自然現象ですから止めることは不可能です。しかし、科学が進めば、予知が可能になるかもしれません。正確な予知はまだできないとしても、科学技術によって防災が進めば、地震の被害を最小限にすることも可能かもしれません。そして、多くの人の協力で二次災害なら防ぐことは可能のはずです。
  被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。そして、一刻も早い災害からの復旧を祈っています。

Letter■ 取りやめ・蝦夷梅雨 

・取りやめ・
私はこのメールマガジンのエッセイでは、進行中の災害については、
特別な場合の除いて、ほとんど書いてきませんでした。
それは、災害に無関係な人が、
あまり不用意な情報を流すことは
よくないことだと思い、自粛していたからです。
前回のエッセイを書いているとき、
急遽この地震で書こうかと思い、情報を集めました。
思いとどまり、エッセイのメモ欄に書いただけでした。
岩手には少し思い入れがあった時期だったので、
今回は、例外として書きました。
それは、岩手県へ今年の9月に調査に行く予定で、
資料を集めていたところでした。
今回の調査は急遽取りやめ、別の機会にすることにしました。
代替地を現在探しているのですが、
それも急なことなのでなかなか大変です。

・蝦夷梅雨・
北の町では、祭りが盛んに行われています。
先週も子どもの祭りがあり、
今週は近くの大学で学園祭があり、家族で出かける予定です。
初夏の北海道は快晴であれば、爽快です。
先週の祭りの時も、朝は曇っていましたが、昼前から晴れてきて、
午後には快晴で、抜けるような青空となりました。
こんな時、芝生に寝転がると最高です。
私は、昼食後、子どもたちが、水鉄砲で遊んでいる時
芝生に敷いたシートで寝転んで、快適な時間を過ごしました。
しかし、梅雨のような湿度の高いうっとしい日もあります。
多分、本州の人からすれば、それほどでもないでしょうが、
北海道に住むものには、蒸し暑さは堪えます。
特に風がない時の研究室は、窓開けても、
機器からでる熱がこもって、じわりと汗が出てきて不快です。
蝦夷梅雨(えぞつゆ)というものもあるようですが
これは、梅雨前線が北上して消える時に
北海道が少し梅雨のようになることをいうようです。
ですから、一時的に蒸し暑いのは、
蝦夷梅雨ではなく、たまたま蒸し暑い日ということになります。


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