地球と人と
表紙に戻る
 

6_24 宇宙から地球へ

Essay :6_24 宇宙から地球へ
Letter:挑戦の心・どんなクレータができるか
Words :黙祷


(2003年3月1日)
 2月1日午前9時00分(日本時間2月1日午後11時)、地球への帰還途中のスペースシャトル、コロンビア号が、空中爆発しました。異常が検知されてから、たった7分間のできごとでした。この事故で、7名の宇宙飛行士が、亡くなられました。ご冥福を祈ります。人為あるいは不可抗力などの原因は、これから究明されるでしょうが、根源的な原因は、高速で大気圏に突入すると、大気との摩擦によって高温になることです。そんな大気を突き破ってくるものがあります。


Essay

 宇宙から、地表にたどり着くのには、大気が抵抗となります。大気に突入してきた物質は、高温になります。小さなものが高速で突入してきたら、たいていは燃えつきてしまいます。そんな現象が流れ星です。流れ星は、地表に落ちることなく途中で消えてしまいます。別の見方をすれば、大気が地球のバリアとなっているのです。
 粒が小さくスピードの遅いものは、漂いながら、燃えることなく、地表まで落ちてきます。このような宇宙から落ちてくるチリを、宇宙塵(うちゅうじん)と呼んでいます。古くからあるビルの屋上を、箒ではいて、チリを集めると、なかにたくさんの宇宙塵が見つかることがあります。人には見えないほど小さいけれども、宇宙からの飛来者が、私たちの身近にいたのです。このような宇宙塵は、地球に、年間何十トンもふってくるという試算もあります。飛来者は、小さいけれどたくさんおりてきていたのです。
 大きなものが、宇宙から大気に突入してくると、高速であっても燃えつきることなく、地表まで達することがあります。これが、隕石です。隕石の「隕」とは、高いところから落ちるという意味です。ですから、隕石とは、まさに、空から落ちてきた石という意味なのです。
 隕石が小さいうちは、地表に小さな影響しか与えません。しかし、サイズが大きくなると影響は大きくなります。その結果として、クレータができます。地球の表面には多くのクレータが見つかっています。300個以上がクレータではないかとされ、そのうち198個は隕石の衝突と判定されています。
 私は、いくつかのクレータを訪れたことがあるのですが、中でもメテオー・クレータ(バリンジャー・クレータとも呼ばれます)は、印象的でした。
 アメリカ合衆国アリゾナ州、荒野の真ん中に、忽然と丸いクレータが現れます。メテオー・クレータ(Meteor Crater)のメテオーとは、隕石という意味です。隕石のよってできたクレータという名前です。名前が示すとおり隕石によってできたクレータで、世界で最初に隕石によるものと認定されたものです。
 1886年に、変な形をした鉄の破片が、クレータの西のキャニオン・ディアブロ(Canyon Diablo)というところから発見されました。これが大学に持ちこまれ、分析され、91%の鉄と7%のニッケル、0.5%のコバルトと少量のプラチナやイリジウムなどが含まれていることがわかりました。1905年に、バリンジャー(D. M. Barringer)は、このクレータが、鉄隕石がぶつかってできたものであると報告をしました。
 技術者でもあり法律家でもあったバリンジャーは、政府の許可をとり、1904年から、このクレータで鉄の採掘をはじめました。バリンジャーの発想は単純でした。周辺に大量の鉄隕石が散らばっているから、クレータの底には、もっと大きな鉄の塊があるはずだ、という考えです。それを掘りだせば、鉄として売って儲けることができるというわけです。ところが、いくら掘っても鉄の塊には、行き当たりませんでした。鉄隕石は、クレータの奥にめり込んだのではなく、ばらばらになって散らばったのです。最終的には、周辺からは、約30トンの鉄隕石が回収されています。
 メテオー・クレータの直径は、1,186mあります。このようなクレータをつくるためには、どれくらいの大きさの隕石がぶつかったのでしょうか。衝突のエネルギーは、質量に比例し、速度の2乗に比例します。大きくて、速いものが地表に衝突すると、爆発のような現象がおきます。鉄は重いので、小さくても威力があります。最高速でぶつかったとすると直径30m、いちばん低速だと直径90mの鉄隕石がぶつかれば、これくらいのクレータができます。
 地球の表面には、たくさんのクレータがあります。その大部分は、陸地で見つかっています。陸地のクレータは、浸食や風化、地殻変動で、古いものは消されていきます。それなのに約200個ものクレータが見つかっているのです。陸地は地球の表面の3分の1しかなく、あとは海です。海の中のクレータはほとんど見つかっていません。ですから、この200個のクレータとは、地球のクレータのほんの一部に過ぎないのです。
 メテオー・クレータをつくったような衝突はめずらしいものではなく、1000年に1回ほどの頻度でおこていると考えられます。でもそのときに起きる振動は、マグネチュード6.7の地震に匹敵します。メテオー・クレータの衝突は、約5万年前におこりました。この後現在まで、50回ほど、この程度の衝突はあったことになります。
 宇宙から来る小天体の衝突や小さいなものの落下は、普通におこっている現象なのです。これが太陽系の普通の姿なのです。地球は、そんなところにあるのです。


Letter to Reader 挑戦の心・どんなクレータができるか


・挑戦の心・
スペースシャトル、コロンビア号の空中爆発のニュースは衝撃的でした。
映像としてもニュースで何度も放映されました。
そして、多くの関連したニュースが流れました。
スペースシャトルは何重にも安全対策はなされたいたはずです。
でも、事故はおきました。
人間のやることに完璧ありませんし、
このごとにも予想どおりいくことばかりではありません。
つまり、予想通りいかないことも予想しておかなければなりません。
それには、非常に多大なる設備準備が必要です。
たとえば、すべての設備を2重にして用意しておくこともそうです。
アポロでは多くの設備は2つづつ用意されていました。
それでも、事故が起こるのです。
でも、どんな危険があろうとも、人間は未知の世界にあこがれ、
勇敢に挑んできました。
今のように技術や安全などの技術がないときでも、
人間は挑んできたのです。
そんな挑戦の心が、今の技術や文明を築く一番の要因だったかもしれません。
そして今までの挑戦者は、どんな事故や困難、危険に対しても
くじけずに挑んできました。
そんな勇敢な姿に、さらなる感動を覚えます。
スペースシャトルもさらなる勇気をもって取り組まれていくことを祈ります。

・どんなクレータができるか・
隕石が落ちるとクレータができます。
そのときどんなクレータができるかは、
落ちてきて衝突するものの種類によって、違ってきます。
種類としては、石(隕石とよばれる)、鉄(鉄隕石)、氷があります。
衝突の時のエネルギーは、スピードと質量によってきまるからです。
どんなクレータができるか、計算してくれるページがあります。
http://janus.astro.umd.edu/astro/impact.html
数値を変えてできるクレータの計算をしてくれます。
試してみてはどうでしょうか。