地球と人と
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6_21 セントヘレンズ火山:自然と科学と

Essay :6_22 スペースシャトルの事故に寄せて
Letter:続報・ショック
Words :黙祷


(2003年2月13日)
 この原稿は、2月3日に書きました。そのつもりで読みください。本当は、前回の号で発信すればよかったのですが、2月6日号を発行したあとで、書きました。私が、この事件の報に接した直後に感じたことです。


Essay

 2月1日午前9時00分(日本時間2月1日午後11時)、ミッションを終えたスペースシャトル、コロンビア号が、空中爆発しました。大気圏に突入し、テキサス州上空の高度6万メートルで交信が途絶え、空中分解しました。異常が検知されてから、たった7分間のできごとでした。7名の宇宙飛行士が、亡くなられました。ご冥福を祈ります。
 現段階でわかる事故のあらましをニュースから拾っていきます。多分、このメールマガジンが出る頃には、もっと、正確で詳しい情報が公開されるでしょう。ここで示した情報は、
http://spaceflightnow.com/shuttle/sts107/
から、拾ったものです。時間はアメリカ東部時間で、日本との時差は+14時間です。
1月16日11:39(日本時間17日0:39) コロンビア号打ち上げ。
このミッションは、科学フライトとよばれるほど、多様な実験が予定されたもので、生命科学、物理、地球宇宙科学、教育までの広い範囲ものがおこなわれました。その中には、世界中の学生から公募した実験(日本の学生のものも含まれていました)がおこなわれました。
2月1日8:15(日本時間1日22:15) 着陸態勢に入る
2月1日8:53 左翼の水圧システムの信号が途絶
2月1日8:56 左側の着陸用ブレーキとタイヤデータ途絶
2月1日8:58 機体左側の三つの温度計が不能に
2月1日8:59 耐熱タイルの温度のデータが途切れ、1分後左リタイヤの圧力のデータが途切れる。
2月1日午後 ブッシュ大統領は、これに関して声明を発表し、哀悼の意を述べました。

 宇宙には、国際宇宙ステーション(ISS)があり、ロシア人1名、アメリカ人2名の計3人の宇宙飛行士が、現在も滞在中です。その補給のために、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から無人補給船プログレスが、モスクワ時間の2日午後4時(日本時間午後10時)に打ち上げられました。このニュースに気づいた人はどれくらい、いたでしょうか。宇宙に滞在中の宇宙飛行士は、3月はじめに打ち上げられる予定だったスペースシャトル、アトランティスで帰還する予定でしたが、多分延ばされるのでしょう。今回のプログレスの補給が成功すれば、この宇宙ステーションに、6月までは、滞在可能です。
 そして、スペースシャトル計画も、それによって予定されていた宇宙に関する科学は大きく遅れるでしょう。
 科学や科学技術は、完全ではありません。ただし、それに携わる科学者、技術者たちは、完全であろうと努力しています。現場にいる人たちのおこなっている作業は、大部分はチェックです。実際の製造にかかる時間の何倍の時間をかけて、これでもか、これでもか、と思えるくらい、検査や試験を繰り返えしています。宇宙飛行士の訓練も同じです。
 もちろん、事故や失敗には、原因があるはです。そして、原因がわかれば、それは修正することができます。でも、最初から原因がわかっていれば、それは、チェックにかかるはずです。そんなチェックの目を逃れる原因が、まだまだ一杯あります。
 今回の事件は、人間が万能でないこと、そして、科学も万能でないことを示しています。
 人間は完全ではありません。どんなに善意をもっておこなったとしても、どんなに慎重に取り組んだとしても、失敗はします。人類はそんな失敗を繰り返しながら、現在の文明や発展を勝ち取ってきたのです。成功の裏には、多くの失敗があったのです。ただ、失敗の結果が、人命にかかわったので、大きくニュースになりました。
 科学も完全ではありません。それは、いままで人間が作り出してきた技術や道具で、壊れなかったものはあるでしょうか。事故がおこらなかったものはるでしょうか。それほど、技術や道具には、故障や事故はつきものなのです。
 原因は追求すべきです。そして二度と同じ事故や故障が起こらないようにすべきです。そして、そこに人的ミスがあれば、その責任を追及すべきです。もし、そこに悪意や手抜きなど、あれば糾弾すべきです。
 でも、その結果として、科学や科学技術や宇宙に人間がいくことを否定的に語るのは、間違っていると思います。もともと、多くの人の合意もとにはじめられた宇宙への進出のはずです。それを、事故がおきてから批判するのは、慎重にすべきです。
 スペースシャトルがはじめて成功したときの感動、毛利さんや向井さんが宇宙に行ったときの興奮、それを思い出しましょう。そして、そのとき多く人は宇宙へあこがれたはずです。子供たちは宇宙飛行士を夢見たはずです。宇宙への夢は、人類全体の夢だったはずです。
 ブッシュ大統領の声明の中で、こんな言葉を述べました。
"Our journey into space will go on."
「われわれの宇宙への旅はまだ続くのです。」
 7名の宇宙飛行士の冥福を祈ります。


Letter to Reader 続報・ショック


・続報・
その後のニュースで、いろいろ事故原因が追究されています。
現段階では、まだ、原因は特定されていませんが、
そのうちかならず原因は突き止められるはずです。
それは、今までNASAが成し遂げた数々の実績からも明らかです。
そのような原因追求の結果、あらたな進歩がもたらされるはずです。

・ショック・
私が、ニュースを見たのは、2月2日の朝刊でした。
テレビのニュースを見ました。
最初は画面にかじりつくようにしてみていたのですが、
何度も繰り返し流される映像を見ているうちに、
あの中に、7人の人間が乗っていたのだと考えると、
見るのがつらくなってしまいました。
同じことが、2001年9月の貿易センタービルのテロの映像、
そして1986年1月のスペースシャトル、チャレンジャー号の映像
を繰り返し見たときと同じような気持ちになりました。