地球と人と
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6_18 12月の誕生石

(2002年12月5日)
 12月の誕生石は、トルコ石とラピスラズリです。どちらも、色はあざやかなのですが、透明感のない宝石です。今年の最後の宝石についてのエッセイです。


 トルコ石は、古くから装飾用に使われてきました。古代エジプトの出土品として見つかります。ですから、人類が非常に早くから用いていた宝石といえます。
 なぜ、当時の人が用いてきたのかは、今ではわかりませんが、多分、色の美しさからではないでしょうか。トルコ石は、青緑色や、空色、濃青色をもちます。このような色の岩石は珍しので、珍重されたのだと思います。商品としては、色の濃いものほど、価値があります。
 トルコ石は、CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2Oという複雑な化学組成を持つ鉱物で、アルミのリン酸塩と、銅の水酸化物によってできています。トルコ石の青色は、銅の含有量が多いときに出る色で、銅が少なくなると青色が淡くなり、鉄や亜鉛が加わると緑色をおびてきます。
 トルコ石は、乾燥地帯の褐鉄鉱や砂岩の中に、脈石状や塊状に形成されます。その時、褐鉄鉱や小さな砂をトルコ石の中に取り込み、褐色や黒色の網目模様をもつことがあります。これを「ネット」と呼んで、珍重されます。
 トルコ石の青色は、乾燥状態で長く放置したり、日光に長くさらしたり、熱を加えたり、酸およびアンモニアなどに触れると、変色したり、つやがなくなったりします。また、硬度5〜6と、それほど硬くもありません。ですから、取り扱いには注意が必要です。
 トルコ石は、英語でも、Turquoiseといいます。ですから、トルコでたくさん取れるのだろう思ってしまうのですが、トルコでは、まったく採れないのです。トルコ石の産地は、昔からペルシア(現在のイラク)とシナイ半島でした。しかし、トルコ石は、トルコを経由して、トルコ人の商隊によって、ヨーロッパに持ち込まれたため、このような名前がついたと考えられます。
 イラクやシナイ半島は、現在では紛争地域で、供給は不安定です。トルコ石は、アメリカ合衆国のニューメキシコ州でも採れ、アメリカ・インディアンも、装身具として利用していました。ほかに、中国の湖北省でも多く産出します。日本では、ほとんど出ることはなく、栃木県で少量でたことがあるだけです。
 つぎは、ラピスラズリについてです。
 ラピスラズリも、トルコ石と同様、古くから利用されてきました。やはり、青色が特徴です。日本名は、瑠璃(るり)とよばれ、仏教でも、七宝(しっぽう)の一つして、珍重されました。
 ラピスラズリ(lapis‐lazuli)というのは、ペルシア語の紺碧色を意味するラズリに、ラテン語で石を意味するラピスがついてできた言葉です。
 ラピスラズリは、ソーダライト族とよばれる鉱物ではありますが、アウイン(藍方石)、ノゼアン(黝(ゆう)方石)、ラズライト、ソーダライト(方ソーダ石)を成分として、その4つの成分が混合した(固溶体といいます)結晶です。複雑な化学組成をもつ鉱物です。
 ラピスラズリの濃い群青(ぐんじょう)色は、ラズライトの成分が示す色です。ラピスラズリを粉末にして、この特徴的な群青色を利用したものが、ウルトラマリン(群青)とよばれる顔料や岩絵の具です。
 ラピスラズリは、単一の大きな結晶はまれで、粒状のものがあつまって塊となっています。ですから他の鉱物が混じることもあります。黄鉄鉱(金色を示す)と方解石(白色を示す)の細かい結晶が、ほどよく混じっているものが、貴重とされています。
 アフガニスタンのバダクーシャは、古くからの産地で、ロシアのバイカル湖周辺、チリのオバールなども有名です。アフガニスタンでは、古くから品質のいいのラピスラズリを産出し、ツタンカーメンの仮面を飾っていました。
 12月の誕生石は、両方とも、青色の宝石です。12月には、青色が似合うのでしょうか。