地球と人と
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6_11 5月の誕生石

(2002年5月2日)
 5月の誕生石は、エメラルドとヒスイです。5月の誕生石は、どちらも緑色です。そう、5月は新緑ころです。さて、その緑色には、どんな秘密が隠されているのでしょうか。そして、どんな宝石かみていきましょう。


 エメラルド(emerald)の日本名は、翠玉(すいぎょく)です。エメラルドは、いわゆるエメラルド・グリーンと呼ばれる緑色のきれいな鉱物です。しかし、エメラルドは、内部に傷や割れ目があることが多く、くもってみえたり、半透明にみえたりします。また、不純物として、他の鉱物などができていることもあります。このようにエメラルドは、傷のないものは少ないため、高品質の透明感のあるものは、高価になっています。
 エメラルドの鉱物名は、ベリル(緑柱石(りょくちゅうせき)、beryl)です。化学組成は、Be3Al2(SiO3)6、です。アクアマリン(3月の誕生石)と同じ鉱物です。エメラルドの緑色の原因は、少量含まれているクロム(Cr)とバラジウム(V)のためです。
 エメラルドは、古くから宝石として使われてきました。紀元前5000年頃から利用され、クレオパトラも愛したといわれています。そして、歴史上有名なエメラルドの多くは、エジプトのクレオパトラの鉱山から採れたものです。しかし、その鉱山は、いまでは、品質のいいエメラルドはあまり採れなくなってしまっています。
 もう一つの誕生石とされるのは、ヒスイです。ヒスイは、漢字では翡翠とかきます。ヒスイは、以前は一つの種類の宝石と考えられてきましたが、1863年に、実は2種類の別の鉱物があることがわかりました。輝石の仲間と角閃石の仲間の2種類です。
 輝石の仲間のヒスイは、ヒスイ輝石(jadeite)という鉱物で、硬玉(こうぎょく)と呼ばれています。Na(Al, Fe)Si2O6、という化学組成をもっています。ヒスイ輝石は、単一の結晶ではなく、小さな結晶が集まって(交差繊維状組織と呼ばれています)いるもので、さまざまな色(緑、白、ピンク、褐色、赤、青、黒オレンジ、黄色など)のものがあります。クロム(Cr)によって、緑になったもので、きれいなエメラルド・グリーンのものが高価とされ、インペリアル・ジェードと呼ばれています。
 もう一つの閃石の仲間のヒスイは、ネフライト(nephrite)という鉱物(Ca2(Mg, Fe)5Si3O22(OH)2)で、軟玉(なんぎょく)と呼ばれています。硬玉(硬度7)とくらべて、軟玉(硬度6.5)は、やや硬さ(硬度(こうど))が低くなっています。それは、鉱物の種類を反映したものです。ネフライトも、単一の結晶ではなく、繊維状の組織をもった結晶が集まったものです。ネフライトも各種の色を持ちますが、一様なものか、しみ状、縞状になることがおおく、鉄(Fe)を含むものは濃い緑色となります。
 どちらのヒスイも、弾力性があり、丈夫であるので、彫刻を施すのに適していました。そのため、古くから宝石として利用されてきました。その一番古い利用の歴史は、日本なのです。縄文中期には、勾玉(まがたま)として、ヒスイ輝石が使われていました。
 エメラルドも、ヒスイもどちらも緑色でした。エメラルドとヒスイ輝石の緑はクロムで、ネフライトは鉄でした。それも、少量ふくむとそのような色になります。ところで、ヒスイ輝石に鉄が少量含まれると何色になるとおもいますか。それは、紫です。不思議ですね。人の世も、宝石の世界も、色の道は奥が深そうです。