地球と人と
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6_7 ヒトと宇宙と

(2001年5月2日)
 宇宙は人類、いや生命にとって、けっして快適なところではありません。そしてどんな危険が潜んでいるのかも、まだ十分に私たちは知りません。でも私たちはそこに向かうのです。なぜでしょうか。「そこに宇宙があるから」でしょうか。


 ヒトは宇宙を目指して今も挑戦しています。そして、宇宙に関する新しい技術、新しい挑戦、新しい発見が報道されると、興奮してしまうのは私だけでしょうか。単に知的好奇心という言葉では言い表せないほどの高ぶりが生じます。
 そのような心の動きは、フロンティアスピリッツと呼ぶような、ヒトの心の奥底にふつふつと燃えたぎるような感情ではないでしょうか。このような感情は、もしかすると、ヒトだけのものではないかも知れません。もっと根源的なものかもしれません。全生命のもっている習性ではないでしょうか。
 その習性の小さな例として、適応があります。都会に進出した生物たちにその好例が見ることができます。ヒトが住み良いように作られた都市にも、いつの間にか、予期せぬ生物が住み始めています。鳩、カラス、ネズミなどは、新しい環境に適応して定住しています。さらに、習性の大きな例として、進化と呼ばれるものがああります。海で生まれた生物は、陸地に進出しました。海の生物にとって陸は、非常に住みづらい環境でした。生命が地球から宇宙に出るほど、大変なことでした。そのためには、生物としての機能を変化させなければなりませんでした。しかし、進化をやり遂げ、生命は陸に進出しました。
 このように生命には、適応や進化という武器を用いて、新天地を目指します。新しい環境が手に入れば、そこを目指して生命は進出を試みます。そして幾多の困難を乗り越えて生き物の誰かがその目的を果たします。ヒトも生き物です。そして適応し、進化していきます。新たな環境への挑戦を目の当たりにすると心が躍るのは、そのようは生物の習性が心のなかでうごめいているのではないでしょうか。かつては、大航海時代の船の乗組員に、アメリカ西部開拓時代の幌馬車隊にエールを送ったのです。現在では、南極越冬隊に、スペースシャトルの宇宙飛行士に、未知の地域や目指す探検家に、未踏の山に挑戦する登山家に、私たちは心からエールを送っているのです。そして、そのニュースに感動するのです。
 ミールが寿命を終え、新たな宇宙ステーション・フリーダムが、始動しました。ヒトは今も宇宙を目指しています。そしてこれからも突き進んでいくはずです。宇宙へのフロンティアは成功するのでしょうか。多分、ヒトという生き物の中に刻まれた、強いモチベーションがある限り、いつかきっと成し遂げるのではないでしょうか。