地球の調べ方
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Essay■ 5_205 タンデムモデル 5:Grand Tack モデル
Letter■ 野外調査終了・帰省
Words ■ サバティカルの終了準備


(2023.09.14)
 惑星形成の標準モデルは、いくつか課題もありました。その課題を解決するために、新しいモデルが提唱されてきました。そのうちのひとつとして、グランドタックモデルが、有力なものとして知られています。

Essay■ 5_205 タンデムモデル 5:Grand Tack モデル

 惑星形成の標準モデルは、固体の粒子が円盤の中心面に落下しながら、小石サイズへと成長していきます。中心面の円盤では、小石が重力不安定性を起こして微惑星へと成長していきます。お互いに衝突することで、成長してていき、惑星になっていきます。
 しかし、課題もいくつかありました。例えば、ガス円盤内に乱流はないと磁気回転不安定が生じました。固体成分の密度が足らずに、重力的に不安定になります。固体は中心円盤内では移動がないと考えられていたのですが、固体粒子は移動することがわかってきました。微惑星の衝突による成長の速度が遅すぎました。
 これらの課題を解決するモデルはいくつかあったのですが、グランドタック(grand tack)モデルが有力でした。それを紹介していきましょう。
 このモデルは、太陽から離れH2Oが氷となる位置(3.5AU、AUは地球と太陽の距離を1とする天文単位)でできた木星が、内側(1.5AU付近)まで移動してきます。土星も内側に移動していきます。移動した先で、木星と土星が共鳴することにより、木星は外に向きを変えて移動し現在の位置(5.2AU)で停止します。土星も外に移動してきいます。
 木星が、内側から外側へと移動方向が反転することになります。舟のセーリングで風上に方向転換をすることを「タッキング」と呼びます。このモデルでは木星が移動方向を転換することから、この名称になりました。
 火星のサイズが小さいことと組成が異なっていることや、小惑星帯の軌道が歪(離心率と傾斜角が大きい)ことと全体の質量の小さいことなども、グランドタックモデルで、説明できました。
 ただし、グランドタックモデルをうまく機能させるためには、いくつかの条件が必要になります。
 木星と土星が移動しているときは、物質の合体や追加は無視しています。また、外に移動していくためには、軌道にはガスが存在する必要あります。しかし、ガスがあるので、質量の追加が起こらないというのは、矛盾しています。
 共鳴の状態によっては、タックが起こらないこともありました。時には、太陽に落下していくことになります。
 木星が、1AUまでの粒子を集めてしまうこともあり、地球などの岩石惑星の形成が進まなくなります。1から10AU間には、現在、種類の異なった物質が並んでいます。このような物質の勾配が、木星と土星の移動で消されてしまいます。
 このような問題が存在しているのですが、いろいろとシミュレーションの条件を調整することによって、解決が目指されてします。しかし、多様な系外惑星をグラントタックモデルでは、説明できないものもあるようです。


Letter to Reader■ 野外調査終了・帰省 

・野外調査終了・
サバティカルの期間の野外調査が
先週で終了しました。
台風の影響で一時激しい雨に見舞われましたが、
一応、予定通りのコースで、調査を進めました。
もっと見たい地域もありました。
天候不順で十分に調査できない地域もありました。
しかし、野外調査は自然相手なので、
予定通りにすべてが進むことはありません。
そんな名残を残した調査が、次回に繋がります。
まあ、サバティカルは今月で終わります。
四国の野外調査は、
最後のチャンスになるはずだったのですが、
仕方がありません。

・帰省・
来週、京都に帰省します。
今回が2度目となります
本来ならもっと2度ほど帰省する予定でしたが、
親族が対応してくれたので、半分の帰省ですみました。
今回の帰省では、子どもたちの在京のスケジュールが調整でき
なんと一緒に食事をできることになりました。
今回が、家族が一同に会する
最後の機会になるかもしれません。
いつもと同じような宴席となりそうですが。


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