地球の調べ方
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Essay■ 5_197 小惑星の有機物 5:同位体異常
Letter■ 面談練習・論文の締め切り
Words ■ 夏休みの前に


(2022.07.21)
 太陽系の材料は、初期に元素レベルで均質化され「太陽系ブレンド」になりました。太陽系の材料にあった多様性が、消えずに残っていることがわかりました。隕石の中に見つかる「同位体異常」と呼ばれているものです。

Essay■ 5_197 小惑星の有機物 5:同位体異常

 中村さんたちの論文は、
On the origin and evolution of the asteroid Ryugu: A comprehensive geochemical perspective
(小惑星リュウグウの起源と進化:包括的な地球化学的見通し)
というタイトルで56ページにおよぶ大著です。副題の「包括的地球化学的見通し」に、大局的な地球化学的視点で見ていこうという意気込みを感じます。
 前回、均質化が太陽系成分の同位体組成にまで及んでいると紹介したのですが、そこに重要な意味があります。同位体とは、同一元素の中で中性子の数が異なるもので、質量数の違いとなります。放射性の同位体がなければ、同じ元素内の同位体の比率は決まっています。まったく起源の違う物質では、異なった同位体組成をもつことになります。
 前回紹介したように、さまざまな起源の元素、さまざまな由来の化合物から太陽系はできたと考えられます。しかし、現在の地球や月、火星、隕石などすべての物質の同位体組成は、均質になっています。太陽系の材料に混じっていた化合物も、元素、同位体にまで均質化されたことを意味します。
 しかし、例外が見つかりました。同位体組成から、稀に均質化を免れた物質が見つかっています。そのような太陽系外の固体物質は、ばらばらの同位体組成をもっているはずなので、当然太陽系の均質化した値とは異なっているます。そのような太陽系外の同位体組成が見つかったので、「同位体異常」と呼ばれました。
 同位体異常は、隕石の中にあるいくつかの粒子から見つかっていました。そのような粒子は太陽系形成前のものなので、プレソーラー粒子(presolar grian)と呼ばれています。何種類かの同位体組成が、何種類かの粒子から見つかっています。隕石で見つかっていた同位体異常を示す物質が突き止められていて、いずれも高温でも残るような鉱物でした。
 今回、リュウグウの有機物で、そのような同位体異常が見つかったという報告です。有機物は高温に弱いので、高温状態にはならない場所に由来するものです。これは重要な発見です。その詳細は、次回にしましょう。


Letter to Reader■ 面談練習・論文の締め切り 

・面談練習・
大学はいよいよ前期最後の講義になってきました。
8月上旬からは定期試験となります。
並行して学科の4年生の教員採用試験のために
面談練習をしています。
8月初旬まではバタバタしています。
昨年は、オリンピックの開催のため
教員採用試験のスケジュールも変更されていました。
それが以前の状態に戻りました。
1次試験の発表から2次試験がすぐなので
準備期間が短くなりました。
集中的にできるのでいいのかもしれません。

・論文の締め切り・
7月下旬に論文の締め切りが迫っています。
現在、まだ完成していません。
空き時間は論文にかかりきりになっています。
毎年、論文の締め切りではバタバタします。
一方、著書の出版には、締め切りがないで
自分のペースで進められます。
精神的には非常に楽なので健全です。


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