地球の調べ方
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Essay■ 5_196 小惑星の有機物 4:アミノ酸の発見
Letter■ 慌ただしさ・昔の仲間
Words ■ 北国もいよいよ夏の暑さになってきました


(2022.07.14)
 次の報告は、リュウグウの粒子の分析からです。粒子から見つかった有機物の紹介ですが、その分析結果にはさらに重要な内容が含まれていました。その意味は太陽系の化学的均質化が重要な意味をもちます。

Essay■ 5_196 小惑星の有機物 4:アミノ酸の発見

 岡山大学の中村栄三さんたちは、共同研究でリュウグウの試料を分析しました。用いたいのは1〜4mmほどの粒子16個(合計約0.055g)で、非常に微小の粒子を高精度の分析をしていることになります。その技術は素晴らしいものです。
 分析で23種類のアミノ酸を検出しています。アミノ酸に使われていている元素を含めて、70種の元素を分析しています。地球外の物質からの有機物の発見は、珍しいことではありません。例えば、隕石からは多くの種類の隕石が見つかっています。地球以外でも、有機物が形成されていることは、すでに明らかになっています。
 今回の報告で注目したのは、これら有機物を構成する元素の中に特異なものが含まれていたことです。それを説明する前に、太陽系の化学組成の特徴について理解しておく必要があります。
 太陽系をつくっている元素には、それぞれ固有の由来が考えられています。水素やヘリウムは、宇宙の創成の時期に合成されました。それより質量の大きな元素で鉄までは、恒星内の核融合できます。恒星の最後の超新星爆発には、鉄より大きな元素も合成されるます。
 ただし、ひとつの恒星の内部や超新星爆発で合成された元素だけが、太陽系の素材になったとは限りません。いろいろなところから集まってきた可能性があります。また、元素だけでなく、いろいろな場でできた化合物も含まれていたはずです。そのような化合物も、太陽系の素材になったはずです。
 初期の太陽系は全体が、化学的に均質な組成をもっていることがわかっています。その後、天体では化学的に分化を起こしていきます。
 均質化は、太陽で代表されるような化学組成は、太陽系初期に形成された隕石と類似した化学組成を示していることからわかります。隕石は、恒星の太陽とは異なった場所、条件で固化したものです。そんな隕石が太陽と同じ組成をもっているのは、太陽系初期の段階に、化学的均質化作用が起こったと考えなければ説明できません。
 その作用は、もともとあった化合物もほとんどが、元素までバラバラになり、均質化されてしまうものであったことになります。かなり高温状態での元素の混合がおこったと考えられます。
 そのような均質化作用は、元素内の同位体組成にも及んでいます。その詳細については、次回としましょう。


Letter to Reader■ 慌ただしさ・昔の仲間 

・慌ただしさ・
先週は、襲撃事件から週末の選挙とその結果など、
慌ただしく各種の報道がおこなわれました。
また大学でも校務が詰まっているのと
論文の締め切りが迫っているので
落ち着かない日々が、月末続きそうです。
コロナ感染もまた増加しているようで
あまり話題にならないので心配もあります。
あげれば切りなく心配事はあるのですが、
まずは、身近なところから
着実に歩んでいくしかないでしょうね。

・昔の仲間・
今回、紹介した論文の筆頭著者の中村さんとは
研究所で3年間一緒に仕事をしていました。
現在、現役では退職されて、再雇用になっていると思いますが、
研究を継続されて、成果をだされているのは
素晴らしいことだと思います。
私もまだまだ頑張らねばと思っています。


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