地球の調べ方
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Essay■ 5_195 小惑星の有機物 3:リュウグウの岩石タイプ
Letter■ 野外調査終了・夏
Words ■ 暑い夏がきました。


(2022.07.07)
 イトカワは、もっとも一般的なタイプの小惑星で、隕石とも対応しました。では、リュウグウはどうなっているのでしょうか。今回から、リュウグウの特徴を紹介していきましょう。

Essay■ 5_195 小惑星の有機物 3:リュウグウの岩石タイプ

 これまでのエッセイでは、イトカワの岩石の特徴を見てきました。イトカワは、小惑星の反射スペクトルでは最も多いS型タイプで、隕石の中で最も多い普通コンドライトとは異なった特徴もありました。試料で確かめられた結果、イトカワは普通コンドライトと一致しました。惑星表面での宇宙風化によってスペクトルが変化していくことも、明らかにされました。これまで謎であったスペクトル型と隕石の違いが、サンプルリターンで解消されました。
 さて、リュウグウは、望遠鏡での観測ではC型スペクトルをもち、炭素の多い天体と推定されていました。炭素の多い隕石は炭素質コンドライトで、リュウグウはそれに相当すると推定されていました。ただし、炭素質コンドライトは、落下比率が5%程度しかなく、稀なタイプとなります。それが今回の試料分析から炭素質コンドライトであることが確認されました。
 炭素質コンドライトは、水も炭素も多く含むのが特徴となっています。普通コンドライトは高温状態を経験していることが多いのですが、炭素質コンドライトは高温の状態を経験することなく、地球に落下したことになります。炭素質コンドライトをもたらした天体(母天体と呼びます)は、内部が高温になったり、溶融したりすることのない状態で、太陽系初期からある小さな天体であったことになります。
 また、リュウグウの試料は、炭素質コンドライトの中でも水分に富むCIコンドライトであることがわかりました。CIコンドライトは、最大では重量比で20%まで含み、炭素も3wt%も含んでいますが、高温包有物(CaとAlに富む包有物でCAIと略されています)を含みません。ところが、CIコンドライトと比べて、密度が小さいこと、反射率が低いことなど異なる点もあることもわかってきました。
 水による変質を受けているかもしれませんが、太陽系初期の固体物質の特徴を、そのまま残している隕石の可能性があります。
 では、リュウグウの試料から、どのような新しいことがわかったのでしょうか。それは次回としましょう。


Letter to Reader■ 野外調査終了・夏 

・野外調査終了・
前期の調査が先週分ですべて終わりました。
今回は雨が少し降りましたが、
幸いなことに海岸沿いでは
晴れ間が多くて助かりました。
予定地域はほぼ調査することができました。
内陸はフェーン現象で高温になっていたのですが、
海岸沿いは涼しく、調査も順調でした。
しかし、自宅にもどったら暑くでぐったりしました。

・夏・
いよいよ後期の授業も2、3回となりました。
暑くなってきたので、学生も教員も大変です。
定期試験が最も暑い時期にあります。
しかし、北海道にある我が大学の教室にも
エアコンが設置されました。
酷暑の中での試験がなくなりました。
幸いなことですね。
しかし、研究室にはエアコンはないので暑いです。


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