地球の調べ方
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Essay■ 5_185 酸素と自転 6:底生酸素
Letter■ 冬至・卒業研究
Words ■ 寒さがつのります


(2021.12.09)
 自転速度の変化と酸素濃度の変化の相関がありました。その原因は、生物の酸素の生産量ではなく、海底での埋没量によるようです。今後、天文学的変動と生物活動、そして地球環境との結びつきを再考していく必要があるようです。

Essay■ 5_185 酸素と自転 6:底生酸素

 この論文では、酸素の形成と地球の自転の関係を見てきました。地球史の中で、自転の変化と酸素濃度の変化の起こった時代が一致していました。では、なぜこのような一致がみられたのでしょうか。その原因を探っていきましょう。
 まず、現在生きているシアノバクテリアで、光合成による酸素の形成効率を測定します。測定値からモデルを作成して、日照時間の関係を調べていきました。シアノバクテリアも生物ですので、常に酸素呼吸をしています。昼は酸素を使用して光合成もしますが、光合成が勝ります。一方、夜は光合成はできず、酸素の消費だけとなります。シアノバクテリアの光合成の効率は、一日が長くなっても変わらず、一日の酸素の総生産量は一定でした。しかし、酸素の供給が増えることがわかりました。
 論文では、"diel benthic oxygen export"と"resultant daylength-driven surplus organic carbon burial"表現されています。訳すと「日周で底生酸素の輸出」と「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」という意味にりますが、少々ややこしい理屈になります。
 「底生酸素」とは、本来なら海底に保存されるはずの酸素です。「日周で底生酸素の輸出」とは、日周期が長くなると「底生酸素」として海底から酸素が放出されてくることです。観測とモデル計算から、日周期が長くなると、大気中の酸素量が増えていくことがわかってきました。
 「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」とは、酸素があれば本来なら海底で有機物を分解をしていくのに使われている酸素が、大気中に放出されていくので、堆積物中に埋没される炭素が多くなるということです。
 酸素の放出されると炭素が埋没されることになり、両者は相反する作用となります。このような原理が働いたため、前回紹介した24億年前頃の大規模な酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)と、6億年前(原生代後期)頃の酸素形成イベンド(Neoproterozoic Oxygenation Event:NOE)が起こったと説明しています。
 これまで、自転速度の変化は天文現象として、酸素量の変化は生物活動として捉えられてきました。その関係はあることは想定できますが、十分検討されてきませんでした。それが解明されてきたので、今後、天文学的運動と生物活動、あるいは地球の自転と大気組成変化(二酸化炭素、オゾン量など)の関係なども、考えていく必要がでてきました。
 昼の時間変化は1年でもおこっているはずです。今回の論文の結果では、酸素の生産量も変化しているはずです。二酸化炭素には季節変化が現れているのは知っていたのですが、酸素量は知りませんでした。調べると、酸素量にも季節変化がありました。また二酸化炭素の年々の増加に呼応するように、酸素量も減少していました。なかなか興味深い現象です。


Letter to Reader■ 冬至・卒業研究 

・冬至・
北海道は、繰り返し積雪がありました。
日中にはすぐに溶けるので、
根雪になっていないのですが、
日に日に寒さが募ってきます。
日の出も遅くなり、日没を早くなり、
一日が短くなっていきます。
今年の冬至は12月22日で、もうじきです。

・卒業研究・
このエッセイが配信される頃には、
卒業研究の提出期間が終わっています。
4年生にとって、大学での学びの集大成となります。
大変な思いをして書き進めていくことになりますが、
長文の報告書の書き方を体験することで
研究の一端を身に着けられることを願っています。
そのため、大半の空き時間を
学生の添削に充てています。


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