地球の調べ方
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Essay■ 5_169 系外惑星 4:大気組成
Letter■ コペルニクス的転回・寒暖の繰り返し
Words ■ 系外惑星はいろいろなことを教えてくれます


(2019.12.19)
 このシリーズで、系外惑星の軌道と質量以外の情報を調べるのは、難しいといいました。しかし、いくつかの惑星で、大気組成が観測されてきました。そこで、今までの太陽系の常識を覆すものが、見つかってきました。

Essay■ 5_169 系外惑星 4:大気組成

 系外惑星では、軌道や質量は求められますが、それ以外の性質を求めるのは難しいと紹介しました。これは少し考えればわかります。遠くの天体では、恒星は光を発しているので観測できますが、惑星は光を発していません。ですから、惑星の存在を探ること、そこから軌道や質量は恒星の変動を観測することで可能です。ところが、いくつかの系外惑星で、もっと詳しい情報が得られてきました。2つの系外惑星を紹介しましょう。
 かに座方向に97光年のところある恒星(GJ-3470)でみつかった、GJ-3470bという系外惑星です。この惑星は、質量が地球の12.6倍、公転周期が3.3日となっています。短時間の周期で、恒星の非常に近いところを回っていました。サイズは海王星に似ていて、恒星に近いところを回っているので、「ホット・ネプチューン」に分類されていました。海王星型の惑星なら、大気は水蒸気やメタンがになるはずです。
 公転周期が短いので、太陽の前を通るときの観測(12回)と、後ろを通るときの観測(20回)が繰り返しおこなわれました。この惑星からは、太陽に暖められて大気が飛び出していました。惑星から飛び出した大気に、恒星からの光の波長が吸収されて、大気組成を調べることできました。その結果、水素やヘリウムという、まるで木星のようなガス惑星に似た大気でした。「ホット・ジュピター」と呼ばれる惑星の典型でした。海王星と考えられていのですが、その大気組成とは異なっていました。系外惑星、GJ-3470bも今までの太陽系の常識を覆しました。
 もう一つは、しし座方向に124光年のところにある恒星(K2-18)にあるK2-18bです。この系外惑星は、公転周期が30日ほどでした。この惑星は、ハビタブルゾーンの軌道にありました。質量は約8.9倍で、地球と海王星の中間になります。地球より大きな「スーパー・アース」、あるいは海王星より小さい「サブ・ネプチューン」などに分類されています。
 恒星を横切った時に観測(9回)がなされました。その時、惑星大気の分光分析されて、組成が求められました。この惑星は、ハビタブルゾーンにある系外惑星ではじめて大気組成が明らかになったものでした。大気には、水素とヘリウムの他に、水蒸気も見つかりました。
 ただし、この惑星には、特殊な条件がありました。まず恒星が赤色矮星であることです。赤色矮星は、一般的な恒星(主系列星)と比べて低温で、核融合反応はゆっくりと進んでいます。質量は小さいのですが、寿命が長く(1000億年以上)で、周りに惑星系があれば、安定した条件が長期間維持されると考えられます。またこの系外惑星は、公転と自転が一致し、惑星の同じ面が常に恒星を向いています。地球と月の関係(潮汐固定)と同じです。表面温度は、265K(-8℃)と推定されています。
 大気中の水蒸気の発見は、惑星には表面の条件が整っていれば、水、つまり海の存在が期待されます。自転が固定されているので、恒星に暖められた大気が循環することで、場所によっては、水が安定に存在できる場所が生まれるかもしれません。ただし、このような海王星のようなガスの多い惑星で、地表に硬い大地があり、海洋があるかどうはまだ不明です。
 多数の系外惑星からは、特異性、意外性の報告が目に付きます。これいいことなのかもしれません。地球が宇宙の中心であるという天動説から、地動説へと気づく「コペルニクス的転回」が、系外惑星から生まれつつあります。今後も、もっとたくさんの特異性が発見されるでしょう。どこまでが地球、太陽系の理屈が通じるのか、注意深くチェックしていく必要があると思います。


Letter to Reader■ コペルニクス的転回・寒暖の繰り返し 

・コペルニクス的転回・
コペルニクス的転回は、
もちろんコペルニクス自身が、言ったものではありません。
これを言ったのは、哲学者のカントでした。
カントが、自己の認識を180度変更する
という意味として用いた言葉でした。
認識(主観)と対象(客観)の関係が
従来は客観→主観(認識は対象に依存)であったのを
主観→客観と、カントは転回しました。
これは、自分の認識がより中心になっているという意味です。
その意味では「天動説」的ですが。

・寒暖の繰り返し・
北海道は、まだ温かい日と寒い日が繰り返しています。
11月には根雪になったか
と思えるほどの雪になっていたのですが、
雨が降ったり、暖かさで雪が融けたりしました。
例年冬になっても温かい日もあるのですが、
さすがに何度も雨というのはあまり経験がありません。
まあ、これも気候の変動幅のひとつなのでしょうね。


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