地球の調べ方
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Essay■ 5_153 深海から陸の環境を 2:層の成因
Letter■ 露頭に惚れる・学位授与式
Words ■ 大学も節目の時期となりました


(2018.03.08)
 深海底でできたチャートは、陸地でもみられます。ただし、陸地では層状チャートになっています。そのでき方には、いろいろな説があるのですが、まだ決着をみていません。なかなか難しい問題です。

Essay■ 5_153 深海から陸の環境を 2:層の成因

 前回、深海底で形成されたチャートが日本列島に見られる、という話をしました。陸地でみられるチャートは、層構造を持っています。そのため層状チャートと呼ばれています。層は珪質のチャートの間に薄い粘土をはさむことで形成されています。この構造が繰り返されることで、層状チャートができます。前回お話したように、チャートは深海底に堆積したプランクトンの珪質の殻が起源です。粘土は大陸から風や海流に運ばれてきた非常に小さい粒が集まったと考えられています。なぜ層ができるのか、なかなか難しい問題です。
 主流とされる説は、生物大絶滅説です。生物の大絶滅があると、プランクトンもいなくなり、その間チャートの堆積がストップします。絶滅の期間は、粘土だけが堆積します。やがて生物が復活していくると、またチャートが堆積します。大絶滅が繰り返し起こることで層構造ができるという説です。
 他の説としては、生物がある時期だけ一気に大繁殖していくという説、他のところに溜まったチャートか粘土か、深海底を移動してたり、混合物が移動して堆積時に分かれて堆積するなどの説が有力です。他の説もありますが、今のところ、根拠が弱かったり、可能性が低かったりします。
 有力な説は、それぞれで根拠を示され、それに対応する露頭がわかっているところもあります。ですからそれぞれが対等の可能性なので、また成因が決着がついていない状態です。いずれにしても、層の形成には、なにか大きな事件が起こっていることだけは確かなようです。
 さて、チャートのもととなるシリカとは二酸化ケイ素からできています。二酸化ケイ素は、岩石の主要な構成成分です。大陸の花崗岩類には7割以上、海洋の玄武岩でも5割ほど含まれています。チャートの素材の二酸化ケイ素は、チャートの下の地殻にも一杯あります。しかし、地殻は岩石からできているので、二酸化ケイ素として海水に溶け込む必要があります。そして、プランクトンは海水に溶けて海の表面付近にある二酸化ケイ素を、殻の材料として取り込みます。たくさん使ったとしても、なくなることはありません。ですから、海に常に、二酸化ケイ素が常に供給されている必要があります。
 シリカの地表の循環を調べると、その多くは大陸の風化により河川から海に運ばれたものだという研究が報告されました。つまり、深海底に堆積したチャートが、巡り巡って、大陸の風化に関係があるということです。その詳細は次回としましょう。


Letter to Reader■ 露頭に惚れる・学位授与式 

・露頭に惚れる・
現在、私は層状チャートを調べています。
露頭で層構造がきれいに見えるところが最適です。
それぞれの露頭が、どのような成因でできたのかを
認定していくのは不可能です。
でも、野外で見事な層状チャートを見ると
圧倒され、大いに感動します。
そして気に入った露頭には何度も通いたくなります。
ただし、一般の人にはその露頭が
どうみえるかわかりませんが。

・学位授与式・
明日、学位授与式です。
大学では大きなホールでセレモニーがおこなわれ、
その後学科ごとに行事が行われます。
私の所属している学科では、
卒業生に全員に学位記を手渡しします。
今回で私からは最後になります。
保護者のかたも多数出席されますので、
厳かな雰囲気の中、
全員への思いを噛みしめることができます。
その後は大学の祝賀会、そして学科の祝う会という
お楽しみになります。


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