地球の調べ方
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Essay■ 5_150 光子顕微鏡 3:光子の観測
Letter■ 応用・野外調査
Words ■ 現在調査中です

(2017.09.14)
 小さいものを見る各種の顕微鏡について、これまで概観してきました。今回は、最新の「光子顕微鏡」という装置の紹介します。その原理とは、どのようなものでしょうか。



Essay■ 5_150 光子顕微鏡 3:光子の観測

 さて、いよいよ「光子」顕微鏡の紹介です。「光学」顕微鏡と、言葉は似ていますが、「光子」と「光学」の違いがあります。光子顕微鏡とは、名称通り、光子を見る顕微鏡です。
 光学顕微鏡では、光を物質にあてて、その反射や透過した光をみていました。ですから、可視光の光であれば、色を観察することできました。ただ、小さな部分になれば、届く光の量が限られており、光が微弱になり、検出できなくなります。光量が少なくなると、色どころか、光の有無すらもわからなくなることもあるでしょう。それは検出限界で、「見えない」ということになります。
 電子顕微鏡では、電子でみていたので、凹凸やもの(原子など)の存在の有無を、ただ示すことになります。電子は可視光の範囲の性質をもっていないため、色はありません。色でみるためには、可視光で光学顕微鏡で見なければなりません。
 光学顕微鏡には小さい部分が限界がありみれない、電子顕微鏡では色の性質はわからないということが、両者の弱点でもありました。
 ところで、光には、粒子としての性質と、波としての性質の両面があることがわかっています。光子は、素粒子のひとつです。光子の検出だけであれば、有無の判定だけで、1個、2個と数えたり、有無を見ることできます。でもそれで電子顕微鏡の時同じで、色は見えません。
 観測時に、もし光子のエネルギーも測定できれば、光の別の性質を知ることができます。
 エネルギーと振動数の関係は、アインシュタインの光量子説でわかっています。アインシュタインは、
  E=hν (E:エネルギー、h:プランク定数、v:振動数)
という関係を示しました。また、振動数と波長の関係は、
  c=λν (c:光速、λ:波長)
と、わかっています。以上の関係から、
  λ=c・h/E
という式が導き出せます。ですから、光子1個であっても、そのエネルギーが測定できれば、波長を求めることができることになります。光子の波長がわかれば、それから色として示すことができます。光子顕微鏡は、この原理を利用しています。
 光子顕微鏡は、2017年4月4日に、Scientific Reportsで報告されたもので、
Few-photon color imaging using energy-dispersive superconducting transition-edge sensor spectrometry
(エネルギー分散型超伝導光センサー分析装置を用いた2、3光子によるカラー画像)
とタイトルでした。産業技術総合研究所の丹羽一樹さんたちの共同研究の成果です。
 ニュースによると、光子をひとつずつ観測することができるとのことです。ひとつの光子のエネルギーも同時に測定して、波長を知ることができるというのです。まだ開発途上のようですが、将来性を感じる装置です。
 研究グループでは、超伝導光センサーの開発を進めてきて、光子を1個を検出し、その波長を識別する光センサーをつくっていました。それを小さいものをみると「光子顕微鏡」として応用したものでした。ひとつの技術を活用していくいい例ですね。


Letter to Reader■ 応用・野外調査 

・応用・
新しい技術ができ、それをどう活かしていくかが応用です。
通常、新技術の開発と応用は
別々進められることも多いのですが、
今回は、開発と応用が並行して進められました。
日本人は、原理発見、新技術の開発より
応用が得意とされていたのですが、
今回は原理の開発と応用を並行して進んでいます。
このような技術は、益々、応用の範囲が
広がっていくようになるのではないでしょうか。
いろいろな場での利活用が期待されます。

・野外調査・
このメールマガジンが発行されている時、
私は、南紀に調査に出てている最中です。
予約発行を行いました。
いつも、この時期に私は野外調査をするので、
年々スケジュール調整が難しくなってきています。
でも私にとって野外調査はライクワークの一環ですので、
これなしには、研究も思索もすすみません。
また、野外調査をすれば、エッセイのネタにもなります。
あとどれくらいこのような調査が続けられるかは不明ですが、
地質学の先輩は同輩たちは、ままだまだ現役で歩いています。
私も無理せず、続けられればなあと思っています。


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