地球の調べ方
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Essay■ 5_99 隕石年代 2:母天体
Letter■ イトカワの試料公開・イトカワの素性
Words ■ 今は亡きはやぶさの忘れ形見からの成果


(2012.02.02)
  隕石の年代は、さまざまな手法で調べられています。技術が進めば、今まで不可能であった物質の年代も測定できます。今回紹介している報告は、技術とアイディアが加わっておこなわれたものです。


Essay■ 5_99 隕石年代 2:母天体

 隕石とは、太陽系のどこかの軌道をめぐっていた物体が、地球に落ちてきたものです。隕石は、地球に落ちてきた大きさ、形のまま、宇宙空間にあったわけではありません。地球に落ちてくるときに、壊れたりしていますが、隕石が由来した大きな天体がありした。その天体を、母天体と呼んでいます。
  母天体とは、太陽系初期に、多数形成されたものです。その多くは、軌道上では一番大きな天体(惑星や衛星)に合体されて、軌道上はきれいになり、なくなりました。実際に、地球をめぐる軌道には、母天体は見つかっていません。
  では、隕石はどこから来たのでしょうか。火星と木星の間にある小惑星帯には、多数の小天体があります。母天体の名残の天体が、今もあると考えられています。小惑星帯は、材料は多数あるのですが、大きな天体ができなかった軌道でした。そこには太陽系初期にあった母天体が残っているのです。小惑星帯が、隕石をもたらす場、供給源だと考えられています。
  小惑星帯の軌道をめぐっているのであれば、そこに留まるはずです。ところが、小惑星帯には多数の天体があるので、天体同士が衝突、分裂したり、ニアミスで、軌道が変わることがたびたびあるはずです。その一部は、太陽の引力に引っ張られて、小惑星より内側をめぐる軌道をとるようになります。そのような天体のうち、地球の軌道と交差し、落下したのが隕石となります。ですから、多数の隕石を調べれば、小惑星帯を構成する天体の種類の概要を知ることができます。
  一方、小惑星の表層物質を地球から望遠鏡によるスペクトル分析によって探る方法もあります。小惑星のスペクトルには、いくつかのタイプがあることがわかっています。そのタイプは、隕石の種類と対応させられていますが、実際に試料が入手できない限り、その対応関係が実証されたことになりません。
  はやぶさいってきた小惑星イトカワは、今は地球軌道の近くをまわっていますが、もともとは小惑星帯から由来した天体だと考えられています。ですから、イトカワの試料が手に入ったのは、非常に重要な情報源を得たことになりました。現在、着々と研究は進んでいます。
  隕石の中でも、もっとも原始的なものとして、炭素質コンドライトという種類があります。隕石において「原始的」とは、母天体があまり大きくなく、集まった材料が、ほとんと変化していないままの状態をいいます。炭素質コンドライトを調べれば、太陽系の起源を探ることになります。
  さて今回の報告は、炭素質コンドライトの年代測定をしたものでした。隕石の構成鉱物の年代です。炭素質コンドライトには、有機物や水も含まれていることがわかっています。中でも、炭酸塩鉱物は、母天体に水がある状態で形成されたものだと考えられています。しかし、今まで炭酸塩鉱物の年代測定で、正確な年代を求めることは、なかなか難しかったのです。その年代を、ある工夫によって正確に求めることができました。それは次としましょう。


Letter to Reader■ イトカワの試料公開・イトカワの素性 

・イトカワの試料公開・
はやぶさが持って帰ったイトカワの試料の
初期記載が終わりました。
これによって試料が研究者に公開されます。
カプセルからは、284個の微粒が見つかっています。
そのうちイトカワのものでないものや
小さいすぎるものは除かれました。
また、NASAに渡されるものと、
100μmより大きいものは保存されます。
それ以外の試料は、研究者に公開され、
リクエストして審査に通ると
試料が提供され研究できます。
初期的な研究の成果は
科学雑誌に公表されましたが、
それは、別の機会に紹介しましょう。

・イトカワの素性・
イトカワの表層物質は、
炭素質コンドライトではなく、
普通コンドライト(LLというタイプ)とわかりました。
ですから、イトカワは、どこかの大きな母天体で、
いったん変化(分化と呼ばれます)して、
その物質が再度集まってできたことになります。


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