地球の調べ方
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Essay■ 5_97 新定義への期待:キログラム 4
Letter■ 卒論が佳境・師走
Words ■ 未来の人類に期待を


(2011.12.01)
  今までの質量の定義には、問題がありました。質量の新しい定義を決めることになりました。ところが、その定義の方法は、まだ決まっていません。手順が逆のような気がしますが、これは、人類の英知や将来にかけた決定ともいえます。私たちは、その期待を叶えられるのでしょうか。


Essay■ 5_97 新定義への期待:キログラム 4

 前回も紹介しましたが、質量の定義が、見直されてることが、決まりました。2011年10月21日、フランスでおこなわれたた国際度量衡総会で、その決議がなされました。キログラム原器が、現代の科学技術の精度や扱いにおいて、もはや充分な役割を果たしえないということになったからです。質量の基準に関わる問題は、多くの研究者も知っていました。新しい基準を定義しなおすことが、この度やっと決まりました。しかし、非常に困難な障壁が、そこには待ち構えています。
  質量の定義をどうするかは、実は現在でも、まだ決まっていないのです。現代の技術を持ってしても、質量の定義は、困難なものであることを意味します。
  もちろん、いくつかの方法は提案されています。
  ひとつは、原子を正確に数えていくという方法です。元素としては、ケイ素が候補となります。かつては炭素が候補でしたが、今ではケイ素が候補になっています。ICTにかかわる各種の技術の進歩が背景にあります。ケイ素の純度は高い結晶がつくれるようになっています。ケイ素の原子を、一個ずつ扱える技術もあります。ただし、大量の個数を扱うことになるので、どのように数えるのかが問題となります。そのための技術を開発していくために、日本と米国、英国、ドイツが共同で取り組んでいますが。しかしそこには、競争もあります。
  ある質量数のケイ素(28)をアボガドロ数(6.022 141 29×10^23)、集めれば、1molになります。1molとは、質量数のグラムになります。ケイ素であれば、正確に28gになります。それを質量の基準とする方法です。
  操作中に原子の数が変動しないようにしなければなりません。さらに、アボガドロ数を正確に定義しておく必要があります。モルは、もともと12Cでつくられた定義ですから、そちらを正確にしていく必要があるかもしれません。
  もうひとつの方法は、非常に精密な天秤をつくって、コイルに電流を流した時の磁力と、分銅を釣り合わせるというものです。その過程で、コイルの動き(距離とスピード)と電流と電圧を精密に測り、質量を定義していこうというものです。これは、アンペアを定義するのに用いられテクニックの逆用でもあります。1Aの電流が流れたときの質量を、1kgと定義していこうというものです。
  距離とスピードは長さと時間の測定なので、厳密さを持っています。ところが、電流は質量が用いられている単位となっています。これは、自己矛盾しているようにみえます。まあ、それなりの解決策があると思います。この方法は、即効性はありますが、将来性は少々危うい気がします。
  アインシュタインのE=mc^2という式を用いる方法もあります。ある振動数の光子のエネルギー(E=hν)と等しいエネルギーを持つ物体の質量から、1kgを定義しようとするものです。
  今後、数年かけて決定していく予定となっていて、いろいろな提案がされています。私は、原子を数える方法が、大変ですが、シンプルでいいと思います。まだ、技術も確定されていないものでに定義を委ねています。未来の技術に委ねたことになります。さて今の人類は、その期待を叶えることができるでしょうか。非常に困難な技術だと思いますが、日本の貢献にも期待したいと思います。


Letter to Reader■ 卒論が佳境・師走 

・卒論が佳境・
学生の卒論が佳境となりました。
あと10日ほどで提出なります。
連日、だれかの卒論の添削をしています。
やる気の問題で進展ぐわいは違います。
でも、やればやるだけ、内容は前進していきます。
本来ならもっと早く、
自分の置かれている状態を
気づいて欲しいのですが。
人間とは、切羽詰らないと
気付けないのものでしょうね。
できれば、生涯最高の達成感を
味わって欲しいものです。

・師走・
とうとう12月になりました。
本当に1年の経過は早いものです。
昨年は四国にいましたから
師走も例年とは違っていました。
今年はいつもの師走です。
そして、いつものように
私は、時間に追い回されています。
いつになったら、時間を
気にせずに生きていけるのでしょうか。
時間は、正確に定義されていますが、
体感時間は変化します。
せめて気持ちだけは、
ゆったり流れる時間を味わいたいものです。


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