地球の調べ方
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Essay■ 5_72 二酸化炭素の変化:炭素4
Letter■ 夏休み・地球の歴史
Words ■ 北海道の夏を満喫中です


(2008.08.07)
  二酸化炭素が何かと話題になります。二酸化炭素の増減を、地球の時間スケールでみると、現在話題にしていることが、それほど大事にはみえません。地球にとっては、ささやかな変化です。


Essay■ 5_72 二酸化炭素の変化:炭素4

 地球温暖化の主犯として、二酸化炭素が話題によく登ります。現在、二酸化炭素の濃度は、400ppm弱です。もともと、200ppmほどしなかったものが、2倍の400ppmにも増えたのだから、大変だということです。
  ところで、ppmという単位は、parts per millionの頭文字をとったもので、100万分の1のことを意味します。たとえば、大気(空気)の体積を1としたとき、ある成分が100万分の1の量があった場合、1ppmとなります。ppmとは、非常に少ない濃度のものを表すための単位なのです。もっと多いものは、御存知のように、百分率(%)を使って表します。ppmと%を換算すると、1ppmは0.0001%となり、1%とは10000ppmとなります。400ppmとは、0.04%のことです。
  0.04%という量は、普通であれば無視するほどの量です。その増減が、地球温暖化では問題にされています。200ppmを基準にして多い少ないを考えていますが、地球の大気中の二酸化炭素は、もともとどれくらいの濃度だったのでしょうか。言い換えると、地球誕生以来、どう変化してきたのでしょうか。もともと200ppmだったのでしょうか。実は、昔の大気の組成を測るのはなかなか難しいのです。
  現在、一番信頼性ある過去の大気のデータは、南極などの氷床から得られたものです。南極のような寒い地域では、雪が降っても、解けることなく何年も積み重なっていきます。積み重なった雪では、下の方が圧縮されて氷になっていきます。雪が氷になるとき、雪の中に含まれていた空気も一緒に圧縮されて閉じ込められます。つまり雪が降った時代の大気が保存されることになります。厚い氷床を掘りぬくと、古い時代の氷が手に入ります。その氷の中の空気は、その時代のものです。
  この方法で得た過去の空気から、成分を測定することができます。現在から40万年前までの二酸化炭素の濃度が公表されていますが、200ppmから300ppmの間を周期的に変動しています。氷床のコアとしては、今では約80万年前まで到達していて、今後100万年前まで達することを目標としています。でも、そのあたりが限界ではないでしょうか。
  なぜなら、古い氷床は流れてなくなること、同じ場所で積雪があり氷床が常にできるわけではないこと、暖かい時期があると融けることなどがあります。さらに、4000万年前より昔の地球には、まったく氷床がなかった暖かい時代があった長く続いていたと考えられています。
  いずれにしても、45億年におよぶ地球の歴史からすると、数百万年前や数千万年前の記録でも、あまりに短時間で不完全な記録です。もっと、古い時代の二酸化炭素の記録はないでしょうか。残念ながら、古い時代の大気の情報はありません。ですから、間接的に推定するしかありません。
  まだ、時代ごとの完全な濃度変化のパターンは描かれていませんが、地球誕生当初は、二酸化炭素が大量にあったと考えられています。その理由は、地球の両隣の同時にできた金星と火星の大気が二酸化炭素を主成分としていること、惑星の材料物質である隕石に含まれている気体(揮発成分)の主成分が二酸化炭素であることなどです。
  大気の主成分といっても、今とは比べ物にならないほどの量の大気があった考えられています。当時の大気は、現在の50倍から100倍あったと推定されています。その量は、二酸化炭素がほとんどを占めていたと考えられます。もちろん、当時の地表はすごい温室効果が起こっていたはずです。ところが、海が完全に蒸発するほど高温(100℃以上)にたっしたことはありませんでした。なぜなら、すべての時代を通じて、海でたまった地層が見つかるからです。つまり、海があったということは、地表の温度は100℃以下に保たれていたのです。
  では、地球の初期にあったの考えられる大量の二酸化炭素は、いったいどこにいったのでしょうか。それは、地層の中に今もあります。その答えは、次回としましょう。


■ Letter to Reader 夏休み・地球の歴史

・夏休み・
皆さんは、夏休みをとられたでしょうか。
私は、8月早々から夏休みをとっています。
実は、このメールマガジンが届く時は、
私は、旅行中で不在です。
北海道の中央部、然別湖周辺をうろうろしています。
家族旅行で、避暑をかねてのんびりしています。
然別までは遠い道のりですが、
周辺の宿を点々としながら、あまり移動せずに、
いろいろなところを見てこようと考えています。
最近は、石探しや、川原遊びは家内や子供たちから
つまらないといわれて、
調査がなかなかしにくくなりました。
でも、できるだけ両立させていきたいとたくらんでいます。

・地球の歴史・
人類が直面している温暖化問題は、
地球にとっては、ささやかな変化に過ぎません。
もっとすごい時期を地球は経てきています。
それも、地球の歴史の一ページです。
人類の右往左往がはたして
地球の歴史の一ページに残るのでしょうか。
人類が大騒ぎしている問題は、
果たして地層の中に残るのでしょうか。
人類の痕跡のコンクリートや人工物が
地層の一部に残るに過ぎないのではないでしょうか。
未来の知的生物は、その地層から何を読み取るのでしょうか。


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