地球の調べ方
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Essay■ 5_70 カーボンナノチューブ:炭素2
Letter■ 実用化・不調
Words ■ 発見すること、知ること、そして使うこと


(2008.07.24)
  炭素に関して20世紀後半に、新構造が相次いで発見されてきました。このように炭素の新しい構造が次々と発見されてくるのは、私たちの知らないことがまだまだいっぱいあることを物語っています。そしてそこでは日本の研究者が重要な役割を果たしていました。


Essay■ 5_70 カーボンナノチューブ:炭素2

 炭素は、私たち人類にとって、非常になじみのある元素です。私たち生物の体は、炭素を中心に構成されています。ですから、炭素は私たちにとって必須の元素ともいえます。そのため、炭素の関する私たちの知識も、他の元素と比べれば非常に多くなっています。文章にすれば、知識の体系は、教科書何冊分にもなるはずです。
  そころが炭素に関する私たちの知識は、まだまだ不十分なのです。それは未だに、炭素に関係する新しい発見ががあることもからもわかります。そんな発見のいくつかを紹介しましょう。
  炭素だけがつくる結晶構造としては、石墨(グラファイト)の層状結晶やダイヤモンドの硬い結晶があることは、古くから知られていました。ところが、20世紀後半になってから、炭素には、いろいろな新しい構造があることがわかってきました。
  1961年、当時通商産業省工業技術院の進藤昭男さんが、炭素繊維(カーボンファイバー)を発明しました。また、進藤さんは、1967年に、金属よりも丈夫な炭素繊維の製法を開発しました。その後も技術は進み、今では炭素繊維はいたることろで使われる素材となってきました。
  1985年、炭素が60個集まってサッカーボール状のフラーレン(C60フラーレンと呼ばれる)という構造があることが、アメリカとイギリスの研究者によって発見されました。ところが、このC60フラーレンの発見に先立って、豊橋技術科学大学の大澤映二さんは、ベンゼンの構造の研究から、サッカーボール状のC60も存在しうると予言していました。しかし彼がその予言を書いたのは、日本語の雑誌でした。欧米の科学者には、その予測を知られていませんでした。実際の発見は、予言から15年どの後のことでした。
  1991年には、NEC筑波研究所の飯島澄男さんが、炭素のフラーレン構造体をつくっている途中に、カーボンナノチューブをたまたま発見しました。カーボンナノチューブとは、炭素(カーボン)の小さい(ナノ)チューブのことです。炭素が6個環状につらなったものが、筒状の構造を持ちます。
  カーボンナノチューブの発見の経緯は、あちこちで紹介されていますから、御存知の方も多いことでしょう。偶然の発見ですが、そこには常日頃研究対象に向き合っていたこと、そして発見をするための技術を持っていたことが重要なカギになりました。
  カーボンナノチューブは、ナノという名称がついているように、ナノサイズ(10億分の1m)の非常に小さいものなので、その発見は、電子顕微鏡の操作に長けた飯島さんだからできたといえます。また、飯島さんは電子線回折という仕組みを使って、炭素が小さいな筒状(ナノチューブ構造)をしていることを突き止めました。この構造の解明が、カーボンナノチューブの発見となります。
  現在では、カーボンナノチューブについて、いろいろ調べられています。構造にもいくつのもタイプがあることや、6個の環が、時々5個になったり、7個になるような乱れもあることが分かってきました。
  カーボンナノチューブ特有の性質がも分かってきました。鉄の数百倍もの強度をもつこと、電気を通すのですが、ある構造になると半導体になること、ガス(特に水素が注目されている)をよく吸着すること、熱をよく伝えることなどの性質がわかっています。ですから、新素材として注目されています。
  判ってきたことは、いいことばかりではありません。悪いこともわってきました。それは、カーボンナノチューブが、アスベストと似た健康被害を起こす可能性があることがわかってきました。ですから、取り扱いには注意が必要だとなってきました。
  私たちは、炭素という身近な元素をよく知りだしたのは、最近のことです。そして、今も新しいことが次々と発見されています。炭素は生命にとって重要で不可欠な元素であるのですが、まだまだ分からないことがいっぱいあるようです。


■ Letter to Reader 実用化・不調

・実用化・
炭素のさまざまな構造の発見には、
日本の研究者が関わっていました。
このような発見は、日本が誇るべきことだといえます。
発見からある程度時間が経過して、研究が積み重ねられると、
その特性を活かした、新しい素材が生まれ、実用化されます。
先行した炭素繊維は、今ではいろいろなところで利用されています。
また、フラーレンは、潤滑剤として実用化がはじまっています。
カーボンナノチューブは、発見されてまだ新しいためでしょうか
実用化はまだです。
研究が進めば、いろいろな実用化が進められるでしょう。

・不調・
咳がなかなか抜けません。
私は、風邪をひくと咳が長引くので、
今回はその症状がひどいようです。
咳のため、腰痛もでています。
だいぶ納まってきたのですが、
まだまだ本調子でありません。
無理せずにいきたいのですが、
締切りのある原稿、こなさなければいけない講義や校務、
そして今週末からは、定期試験がはじまります。
すると採点と成績評価がまっています。
なかなか気の抜けない夏休みですが、
なんとか体調を戻したいと考えています。


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