地球の調べ方
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Essay■ 5_64 かなたの星まで4:ヒッパルコス衛星
Letter■ 発想と努力・調査
Words ■ 失敗は成功の母


(2007.09.06)
  大型の望遠鏡をつくって高精度の観測していくことは、技術の進歩とともに発展してきました。しかし、技術的に限界がありました。発想の転換が必要になります。


Essay■ 5_64 かなたの星まで4:ヒッパルコス衛星

 星の年周視差を観測するのは、非常に難しいことでした。それは、測るべき角度が非常に小さいためでした。星が遠くなればなるほど、高い精度で星の位置を観測しなければなりません。観測精度をあげるためには、望遠鏡の性能を上げればなりません。技術が進歩すると共に、望遠鏡の性能が向上しました。その結果、前回紹介した19世紀中ごろの、0.2秒ほどの年周視差の観測ができました。その後も、望遠鏡の性能は向上していきました。
  遠くの星を見るためには、かすかな光を捉えなければなりません。かすかな光をとらえるためには、望遠鏡の口径を大きくして、光を集めなければなりません。それために、大きなレンズを用いた望遠鏡が作られるようになりました。
  1949年には、直径200インチ(5.08m)のヘール望遠鏡が、パロマー天文台に完成しました。当時世界最大の望遠鏡でした。現在最大の光学望遠鏡は、日本がハワイに建設した直径8.3mの「すばる」です。1枚鏡としては世界最大です。その鏡を磨くのに7年を要しました。大きな口径のレンズをつくれば、光は集められますが、レンズ自身の重さや温度変化で歪みが生じます。「すばる」のように、大きなレンズの製作は、なかなか困難です。
  なんと言っても一番の問題は、大気のゆらぎです。大気がゆらぐことによって、星からの光もゆらぎます。せっかく高精度の望遠鏡を作成しても、大気のゆらぎのために、天体の像がぼやけてしまいます。
  つまり、機械的にも条件的にも観測の精度を上げることには、限界がありました。その限界を打ち破るためには、発想の転換が必要です。
  大気の影響のないところ、つまり大気圏外に望遠鏡をおけば、精度良く観測ができます。宇宙は、天気や大気の影響を受けません。また、レンズの重力の影響もありません。宇宙空間は、いろいろ問題もありますが、星の観測としては、なかなか条件のよいところなのです。そのような発想でつくられたのが、ハッブル宇宙望遠鏡です。
  また、年周視差を正確に測定する目的で作られた宇宙空間の望遠鏡があります。ヒッパルコス衛星と呼ばれています。ヒッパルコス衛星は、1989年8月8日、欧州宇宙機関によって打ち上げられたものです。目的は、恒星の位置やその年周視差を1ミリ秒の精度で観測していくものです。1993年6月の観測終了までに、ヒッパルコス衛星は、11万8274個の恒星の年周視差を観測しました。その範囲は、半径1,000パーセクにも広がります。
  しかし、現在ではもっと精度のよい観測を行うとしています。その最先端が「すばる」です。それは次回としましょう。


■ Letter to Reader 発想と努力・調査

・発想と努力・
ヒッパルコスは、ドイツの放送衛星とともに
アリアンロケットV33号によって打ち上げられました。
しかし、実は、アポジモーターの故障により
静止軌道に行くことができませんでした。
その軌道は、近地点約500キロメートル、
遠地点約3万6000キロメートルという極端な楕円軌道でした。
しかし、スタッフの4ヶ月に渡る観測システムの調整の努力で、
多くの観測は行われました。
このような科学者の陰の努力によって、
一見失敗したかのような打ち上げも、
なんとか成功裏に終わらせることができました。
複雑なシステムには、失敗はつきものです。
でも、失敗が起こったとき、できるだけ被害を少なく、
そしてできるだけ目的に沿ったデータをとること、
そんな発想と努力が重要なのでしょう。

・調査・
私は、明日7日から16日まで出かけています。
前半は野外調査で後半はいつものように西予市城川の地質館で
ホームページ作成をしています。
以前から計画してた高知県の模式的地層を用いて
地層を精度良く記録する方法を試すためです。
新しい工夫をいろいろしています。
新しい装置も完成しました。
さてさて、上手くいくでしょうか。
一番の目的は短時間で大量の高精細の画像記録ができるかどうかです。
野外調査がどこまで順調にいくかが問題です。
天気も気になります。
でも、まる3日間、狭い地域に張り付いて調査する予定ですので
天気が悪くても、1日でも天気がよければ
記録ができれと思うののですが。
条件しだいで、結果はどうなるかわかりません。


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