地球の調べ方
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Essay■ 5_56 宇宙から調べる5:一目瞭然
Letter■ Africa Megaflyover・抑止力
Words ■ コンピュータでの世界旅行もいいか


(2006.10.26)
  今まで宇宙から地球を観測する技術の進歩をみてきました。今回は、衛星データが、どのような利用の仕方があるのかを考えていきましょう。


Essay■ 5_56 宇宙から調べる5:一目瞭然

 地球観測衛星が観測したデータは、デジタルとなっています。ですから、画像であれ、位置情報であれ、すべてデジタルデータとして地球の中継基地に送信され、解読、解析されていきます。それをどのように利用していくかが、今回のテーマです。
  デジタルデータの操作ですから、コンピュータの使用が前提となります。コンピュータを使って衛星のデータを見るというのは、一部の研究者だけのことかと思われるかもしれませんが、今では、市民でも自由に利用できる時代になってきました。
  地球の全陸域をカバーするランドサットの補正された衛星画像を無料で公開しています。人工衛星による標高データも無料で公開されています。これらのデータは、市民が自由に利用できます。もちろんその画像やデータを見るには特別なソフトがいりますが、無料のソフトもあります。
  衛星データでは、やはり画像でみるのが一番わかりやすい利用法でしょう。地表の様子を何の基礎知識や技術もなしに、見ることができます。
  たとえば現在インターネットで話題になっている
Google Earth(http://earth.google.com/)
では、世界中の詳細が画像が連結されて無料で公開されています。Google Earthで遊んでいると、まるで世界各地を旅行しているような気分になります。また、Google Earthは衛星画像だけでなく航空写真も連結しているので、地域によっては非常に高解像度になっています。
  このように画像を見れば、その意味するところが一目瞭然でわかります。それに空から覗かれることに対しては、国家だって人間だって無防備なのです。あるいは自由に同じ精度でどこでも観測できるというのが衛星画像の特徴です。
  Google Earthでは、北朝鮮からアメリカの軍事施設まで見ることができます。イラクの激戦地帯も眺めることができます。高解像度の航空写真のある地域では、ラクダや牛などの家畜、野鳥の群れ、人間(マンションの屋上でトップレスで日光浴している人が映っているのがネットで話題になりました)まで見ることができます。ちなみに、私の家も見分けることができました。
  このような興味本位な見かただけでなく、ランドサットのように長年上空から観測記録を撮り続けていると、経年変化をみることができます。有名なものでは、アマゾン流域の伐採の進行や、東南アジアの熱帯林の焼畑による消滅、都市化による緑地の減少などを知ることができます。その時間変化を画像として見せられると、どんな理屈などより、誰でもわかる説得力のある証拠となります。まさに、論より証拠、百聞は一見にしかず、です。
  肉眼(可視光を範囲を見ています)で見えないものも、地球観測衛星からは見ることができます。地球観測衛星では、いろいろな波長で観測することができますから、陸域では植生や氷の季節変化、資源探査、防災などに利用されます。海域では、海水温、海流、プランクトン、海底地形なども調べることができます。いろいろ応用がなされています。
  宇宙から地球を調べると、国境や環境などの条件に左右されないで、全地球を一定精度データを集めることができます。また、経年変化を調べることによって、地球の移り変わりや、人間の営為による環境変化などをモニターすることができます。このようなメリットを活かした観測やもっと智恵をしぼった利用方法も考えられていくでしょう。


■ Letter to Reader Africa Megaflyover・抑止力

・Africa Megaflyover・
家畜や鳥、人まで映っているのは、アフリカです。
なぜアフリカなのかちょっと奇異な気がしますが、
これはアフリカの生態系調査のプロジェクト
「アフリカ・メガフライオーバー」で撮影されたものです。
野生生物保護協会(WCS)とナショナルジオグラフィックが
生物学者で探検家でもあるマイク・フェイ(Mike Fay)と
一緒に進めたプロジェクトでした。
フェイが2004年の6月から12月にかけて
セスナで低空飛行をして撮影したものが
Google Earthに加えられています。
Google Earthのツールバーでレイヤから
特集コンテンツ(英語版でFeature Content)を開き、
ナショナルジオグラフィック誌
(英語版ではAfrica Megaflyover)を表示すれば、
飛行機のアイコンがでてきます。
そこにズームインすると
いろいろな面白いものが見ることができます。
このプロジェクトは人間の営為が
環境に及ぼす影響を探るためものです。

・抑止力・
衛星は、地上の国境や障害なしに
どこでも自由に見ることができます。
紛争地帯でも、軍事施設でも、地上では気づかないうちに
観察することができます。
ですから、地球観測衛星はもしかすると
軍拡の抑止力なるかもしれません。
以前は軍事的に飛行機による偵察が問題でしたが、
それは航空機であればレーダーでいち早く察知し、
領空あるいは領海内であれば、
警告をすること時には撃墜することもできました。
しかし、宇宙からの観測に関しては、対処しようがありません。
やれることといえば、地下もしくは建物内で
軍事行為を秘密裏に行うことになります。
野外での隠し事は今やできません。
地上の人の目からは逃れれたつもりでも、
宇宙からは覗かれてしまうことがあります。
トップレスで日光浴をしている人を見つけるというのは、
よっぽど偶然かしつこく見ている人なのですね。
ちなみに、位置は、
N52.07871096586479 E4.33277760814038
です。
ただし、鮮明でないのであまり期待しないで下さい。


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