地球の調べ方
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Essay ■ 5_53 宇宙から調べる2:ランドサット
Letter■ 数値地図・技術の進歩
Words ■ 違いは説明するものではなく、一目瞭然でありたい


(2006.10.05)
  科学技術の進歩は、今まで人が思いもしなかったものを見せてくれます。そんな進歩の成果をみて、人は新たな世界観を持っていくようになります。


■5_53 宇宙から調べる2:ランドサット

 離れれば、より広く眺めることができます。地形でも、人の手の届くところから眺めるより、後に下がって眺めれば、より広く見えます。しかし、人が離れるにも限度があります。ですから、上空からみるという手段がとられています。
  かつては、上空からみるとは、地図を見るということでした。より広範囲をみるということは、より上空から、つまりより大縮尺の地図を見るということです。
  ところが、離れるにしたがって、細かいところが見えにくくなります。離れれば見えにくくなるということは、日常生活でも感じることで、しかたがないことです。視力には限界があります。地図でも同じで、同じ大きさにより広い範囲を書き込もうとすると、細かい情報は省かなければなりません。
  遠目でより広域を眺めるということは、細かい部分の情報を捨ててしまうことです。
  しかし、この一見当たり前にみえる情報を間引き現象を、現在の科学技術は、覆そうとしています。遠く離れていても、詳しく見ようということです。情報を間引くことなく、必要な情報をもっと細かく保持して必要に応じて提示するということです。
  遠く離れても、望遠鏡を使えば、近くにいるときに見た情報と同じようなレベルの情報を得ることができます。それを現在の地球観測衛星はおこなっています。望遠鏡の精度は、技術の進歩によって向上していきます。つまり、同じほど離れていても、より詳細な情報を得られるということです。
  地球観測衛星の中でもアメリカのNASAが打ち上げたランドサットは、非常に有名です。多くの人は、ランドサットとは知らないで、その画像を目にしているはずです。
  ランドサット1号は、1973年7月23日に打ち上げられ、その後6台の後継機が打ち上げれました。ランドサット6号は、1993年10月5日打ち上げられましたが、軌道投入に失敗しています。1999年4月15日打ち上げランドサット7号が、現在も運用中です。さらに、1984年打ち上げられたランドサット5号は、現在も運用中で、20年以上にわたって利用されています。6台のランドサットから得られた大量の画像で、地球を覆う画像が作成されています。それは全地球を覆う画像が、解像と時期の違いで、2種類が、無料で公開されています。
  ランドサットは、高度700kmのあたりを、地球を北極から南極を通る縦の軌道を、約100分で1周回っています。幅185km、縦170kmの範囲を1回の撮影でカバーできます。関東平野なら1〜2枚、日本列島も32枚の画像で覆うことができます。これほど広範囲を一度に撮影できるので、1枚のランドサット画像があれは、いろいろな地質、地形の情報が読み取れるはずです。
  ランドサットに搭載されているセンサーは、地表から反射する電磁波を、波長ごとに記録していきます。現在のランドサットでは、7つの波長帯()が利用されています。8番目のバンドだけは、7つの波長帯と重複する広範囲の波長帯で高分解能のセンサーとなっています。
  デジタルですので、画像の1ドット分が、地表ではどれほどの大きさになるかでそのカメラの性能を比べることができます。これを分解能と呼んでいます。かつてのランドサットは、80mの分解能がありました。地上で80m以上のものがあれば、見分けられるということです。ランドサット4号では、分解能が30mとなり、現在のランドサット7号のETM+というセンサーのバンド8では、15mの分解能を持っています。
  700kmのかなたから15mもののを見分けられるのです。15mといえば、住宅が見分けられるというレベルです。ランドサット画像から自分の家を探すことが可能となります。我が家も見つけることができました。
  700kmのかなたから15mもののを見分けられるすごさが、実感できないかもしれません。その威力は次のようなたとえをすれば分かってもらいやすいでしょうか。
  東京駅から館山辺りにいる人が見える、あるいは富士山の山頂から江ノ島にいる人が見える、というレベルの分解能を持っています。その分解能で全地球を撮影しているということです。この情報が、だれでも自由にみることができるのです。
  素晴らしいと思いませんか。しかし、現在の観測衛星はもっと高分解能となっています。その話は、次回としましょう。


■ Letter to Reader 数値地図・技術の進歩

・数値地図・
必要があって、ランドサット画像を日本のものを利用しました。
そのときに感じたのは、15mの解像度がすばらしいということです。
現在利用できる国土地理院の地図データでは、
2万5000分の1で日本全国が網羅されています。
国土地理院の標高データは50m四方の平均値を
出したもの(50mメッシュと呼ばれます)です。
国土地理院ではさらに5mメッシュも出していますが、
これは一部の都市部だけです。
あと有料ですが、北海道地図株式会社の10mメッシュあります。
15mのランドサット画像の分解能を活かすには、
10mメッシュか5mメッシュが必要です。
私は必要があって、北海道や関係している地域の
10mメッシュデータは入手していますので、
そのデータでランドサットの高解像度の画像を利用しています。
やはり感動します。
まるで近く景色を望遠鏡を使ったように
宇宙からでも見ることができるのです。
もし興味のある方は、
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
を覗いてみててください。

・技術の進歩・
技術は進歩します。
観測衛星には、何種類かのセンサーが搭載されています。
年々そのセンサーは、観測する電磁波の周波数の分解能が上がったり、
地表の分解能を上げられたりしていきます。
その進歩は、ランドサットのセンサーの分解能の
変化をみていてもわかります。
80mから30m、そして15mへとなってきました。
同じ地域を、違った分解能で眺めると差は歴然としています。
一度高分解能で見てしまうと、低分解能の画像は、
特別な目的がない限り見る気になりません。
それほど分解能の差が、誰の目でも分かるということです。
そんな技術の進歩を目の当たりすると、
人類の智恵、技術の偉大さを感じます。


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