地球の調べ方
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Essay ■ 5_50 惑星の新定義
Letter■ 私の定義・どたばた
Words ■ 誰もが納得するものとは何か


(2006.08.24)
 最近新聞をにぎわしている惑星の定義について紹介します。


■ Essay 5_50 惑星の新定義

 火星と木星の間には、多数の惑星のある小惑星帯と呼ばれる軌道があります。小惑星帯最大の惑星としてセレスと呼ばれる天体があります。セレスの直径は約950kmありますが、他の惑星と比べると小さく、小惑星と呼ばれていますが、惑星に昇格できませんでした。
 しかし近年、冥王星の外側のカイパーベルトと呼ばれるところでも、大きな天体が多数見つかってきました。中でも、2005年にアメリカの天文学者たちが発見した2003UB313という天体は、月(直径約3400km)よりは小さいですが冥王星(直径約2360km)よりも大きく、直径約2400kmもあるため、「第10惑星」として論文を発表し、話題になりました。
 惑星は古くからあったもので、多くの人にとって当たり前のものでした。ですから、天文学では惑星を定義をしてきませんでした。いちばん最後に見つかった惑星は、1930年に発見された冥王星で、それ以来、惑星が9個であることが、市民に定着してきました。
 もともと、冥王星は月より小さく、公転の軌道も他の惑星とかなりずれていました。惑星らしくない惑星であったのです。そんな冥王星が惑星とされるのであれば、他の天体で、惑星らしいものは惑星にしようという主張です。
 このような新しい大型の天体の発見にともなって、惑星の定義が問題となってきました。国際天文学連合(IAU)では、2年前から、天文学者だけでなく、作家や科学史家など7名で構成されている「惑星定義委員会」で、新定義を検討してきました。多彩なメンバーで議論されているのは、惑星に関する定義が、歴史や文化にも影響を与えると考えられるからです。
 IAUでは、歴史的経緯から、冥王星を惑星のままにすることは決定しました。ですから、冥王星が惑星でいれるような定義を考えることにしました。その結果、
・天体が自ら球状の形を維持できる重力をもつ
・恒星(太陽)を周回している天体で惑星の衛星ではないもの
という2つの条件を満たす天体という新しい定義が提案されました。
 この定義が認められれば、月の約150分の1の質量、月の約4分の1の直径(800km)の天体まで惑星に含まれることになります。「第10惑星」として発表した天体のほか、小惑星帯の最大の天体セレスや冥王星の衛星とされていたカロン(約1200km)は新たな惑星として加わることになります。冥王星とカロンは惑星と衛星の関係ではなく、二重惑星となります。今後も、定義にあてはまる惑星がでてくるはずです。
 これらの新しい惑星は、「プルートン(冥王星型惑星)」という特別なグループに入れられます。冥王星、カロン、第10惑星の3つが、このグループに入ることになります。
 IAUの惑星の新定義には、多くの批判が出ています。そこで修正案が考えられています。現在チェコの首都プラハで開催中のIAU総会では、新しい定義案を、3つに分けて採択されることになっています。
1 惑星は「自己重力で球形を作り、恒星の周りの軌道を回る天体」と定義すること。そこでは、水星から海王星までの8個の惑星を「古典的惑星」としています。
2 冥王星や、新たに惑星に昇格する「2003UB313」などを「プルートン(冥王星族)」とした分類名を変える
3 冥王星の衛星カロンは惑星とする
の3つです。現在もまた修正はされているかもしれません。
 24日朝(日本時間では25日未明)に再度、改定案が提示され、その日の夕方の全体会議で決議される予定となっています。どういう結果になることでしょうか。目が離せません。
 この議決の是非をめぐって、今後も議論されることになるでしょう。新しい決定がなされれば、研究者間だけでなく、各種の本や教科書に反映されていくでしょう。市民に普及するまでには、長い時間がかかることになるでしょうが、これも科学の進歩です。


■ Letter to Reader 私の定義・どたばた

・私の定義・
冥王星のカロンは小さい天体です。
それが惑星になるのであれば、
月のような大きな衛星は、不自然な存在になります。
ですから、私は、冥王星を惑星から降格させた方が
すっきりすると思います。
水星程度の4800km以上の直径をもつものに限定して
惑星にしたほうが、分かりやすくなります。
でも、冥王星が惑星とされるには歴史的な経緯があります。
1930年に発見された冥王星は、遠く暗い天体だったので、
当時の観測技術では大きな惑星と考えられていました。
ところが観測が進むにつれ、直径がどんどん小さくなっていき、
ついには最小の惑星であった水星よりも小さいことが判明しました。
その後、カロンという衛星がめぐっていること、
軌道が他の惑星と違って公転面から大きくずれていることなどから、
惑星らしくないということがいわれるようになりました。
しかし、それは天文学者や科学者の間のことであり、
冥王星が惑星であることは、世間では定着していきました。
80年間も惑星とされてきたものを、
いまさら惑星でないとするには、
混乱が大きいというのがIAUの判断です。
でも、その決定のおかげで、
惑星の定義が複雑になってしまいました。
それが今回の騒動のもととなっていると思います。
さてさて、どのような判定が下されることになるのでしょうかね。

・どたばた・
北海道では、小・中・高校も2学期がはじまりました。
私は、大学の紹介をするため、
高校巡回を今週になってやっています。
釧路の方は高校の都合で中止になりました。
1泊2日での巡回になるところだったのですが、
正直なところ、日程があいて助かっています。
9月になるとすぐに、四国と帰りに東京によってきます。
5泊6日の予定で出かけいていきます。
その間不在になるので、
いろいろとやっておかなければならないことがあります。
そんなどたばたが、もうはじまっています。


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