地球の調べ方
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Essay ■ 5_45 電波をみる望遠鏡
Letter■ 電波・巨大パラボラ
Words ■ 人は見えないものも見てしまう


(2005.11.24)
 宇宙のかなたから、はるばる地球にやってく来るのは、目で見える光だけではありません。電波もやってきます。そんな電波を見る望遠鏡もあります。


■ Essay 5_45 電波をみる望遠鏡

 前回まで、望遠鏡の発展の歴史を見てきました。それは、私たちが常に見ている光を、どうすれば、よりよく見ることができるかということが、焦点となりました。ところが、他にも改善の余地があります。それは、見える光以外のものを観測することです。
 見える光(可視光)を含めてすべての電磁波を詳しく調べてみると、地表に届いているのは、可視光だけでなく、可視光よりもっと波長の長い赤外線や電波も、たくさん地表に達していることがわかります。電波とは、赤外線より波長の長い電磁波のことです。地表でも電波を使えば、私たちが見ている可視光以上の情報を、手に入れることができるはずです。そんな試みが、天文学ではなされています。
 実際に地表に届くのは、すべての波長の電波ではなく、ある限られたものとなります。40m以上の波長の電波は、大気中にある電離層で反射されてしまうので、地上に届きません。また、3cm以下の波長の電波は、大気中の水分子や酸素分子によって吸収されるので、地上にあまり届きません。ですから、波長でいうと40mから3cmの間の電波が、電波のでの観測の対象となります。
 可視光の望遠鏡では、レンズで屈折させて光を集めたり(屈折望遠鏡)、反射鏡を使って光を集める方法(屈折望遠鏡)がありました。電波は、屈折することがほとんどできないため、反射だけで集めるしかありません。そのため、電波望遠鏡の形は、すべておわんのようなパラボラになります。
 可視光を反射をさせるには、反射率の高い鏡面持つものでなければなりませんでした。しかし、電波は金属であれば、どんなもので反射できるので、さまざまな素材を利用することができます。さらに、電波の波長より小さければ、パラボラの反射面に隙間があっても反射できます。隙間を適切に取れば、望遠鏡が大型化しても、重さを軽くすることができます。波長が長ければ、金網でも反射鏡の役目を果たします。
 ここまで、電波望遠鏡の良い点ばかりをあげましたが、もちろん弱点もあります。反射鏡の形は、目的とする波長の4分の1以下のズレにしなければ観測精度が悪くなります。そのため、電波望遠鏡としてパラボラをつくると、ある波長の範囲の電波しか、精度良く測れないことになります。また、波長の長い電波を測定しようとすると、大きな反射鏡が必要となってしまいます。
 さらに、一般に望遠鏡の精度(分解能といます)の限界は、望遠鏡の直径に比例し、なおかつ観測する波長に反比例します。電波の波長は、可視光の波長の1万倍以上もありますから、電波望遠鏡の精度は、光学望遠鏡と比較すると、非常に悪いものとなります。
 このような欠点があるのですが、それでも、やはり電波望遠鏡が使われています。それは、可視光で見えないものが見えるからです。可視光は、星間ガスがたくさんあるようなところでは、光が散乱してしまって通過できません。つまり、星間ガスが多いところでは、雲がかかったような状態になり、星間ガスの向こうが見えません。ところが、電波は波長が長いので、星間ガスであまり散乱することなく、通り抜けることができます。つまり、雲に左右されることなく、雲の中や向こう側が観察できるのです。そのような星間ガスの多いところは、星の誕生の場所となります。電波を使えば、星の誕生を覗き見ることができるのです。
 その他にも、電波望遠鏡はいろいろな利用方法がありますが、それは次回としましょう。


■ Letter to Reader 電波・巨大パラボラ

・電波・
電波とは、赤外線より波長の長い電磁波のことです。
これは一般論で、電波法というものでは、
周波数が3,000,000MHz(= 3000GHz = 3THz)以下
波長ではいうと0.1mm以上の電磁波のこととされています。
しかし、すべての波長が利用されているわけではなく、
利用目的によって、非常に需要の多い波長帯もあります。
たとえば、テレビのVHFでは1m〜10mを、
UHFでは10cm 〜1mあたりの波長を使っています。
携帯電話は波長10数cmを使っています。
そこにたくさんの利用が殺到していますので、
それを混信なく早く使いこなすために、
デジタル化などのさまざまな手法が開発されています。
そのような電波を管理するところが、各国にあり
日本では、総務省となっています。
そしてそので定められているのが、電波法というものです。

・巨大パラボラ・
日本で最大の電波望遠鏡は長野県南牧村の八ヶ岳のふもとにある、
野辺山宇電波天文台の直径45mのパラボラです。
10数年前の一般公開で見に出かけたことを思い出します。
世界最大の電波望遠鏡は、
プエルトリコにあるアレシボ天文台の直径305mのパラボラです。
このパラボラは、自然のくぼ地にパラボラを設置したものです。
ですから望遠鏡は動かすことができません。
しかし、地球が自転しているので、
地球の自転を使って観測すことができます。
私は訪れたことがないのですが、
カールセーガン原作の映画「コンタクト」の
最初の場面でアレシボの電波望遠鏡が出てきました。
それがすごく印象として残っています。


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