地球の調べ方
戻る

Essay ■ 5_40 時代境界2:模式地
Letter■ 桜の季節・恐竜を見に
Words ■ 北海道は雪解けの季節


(2005年3月31日)
 前回は時代時代に関して、ウィリアム・スミスという地質学者を中心にして、地質学における地層の考え方の変遷についてきてきました。今回は、時代区分の基準となる地層の模式地(もしきち)というものについてみていきましょう。


■ Essay 5_40 時代境界2:模式地

 時代区分とは、19世紀に長い時間をかけて、カンブリア紀から第四紀まで、すべての紀が定義されてきました。それは、系統的な研究成果に基づくものではなく、あるときは便宜上、またあるときは「こうあればいいな」程度の理由など、さまざまな根拠で決められてきました。そして、古いものから順番に決められたものでもありませんでした。今から見ると、当初は、必ずしも科学的根拠のない時代境界であったのですが、その境界は幸いにも、現在でもある程度通用するものとなっていました。
 当時の地質学者も、不十分ながら、化石の証拠を持っていました。ですから、当時の地質学者は、大型の植物や動物の化石の連続性が途切れるところに、時代境界をもってきました。
 しかし、歴史が示しているように、時代区分とは、自然現象、つまりは地層に見られる何らかの異変や特異性をもとに、時代境界が決められています。このような時代区分を、時代(あるいは年代)層序区分といいます。層序とは、地層が「地層累重の法則」で重なっているという考えを用いて、その地域の地層を、さまざなま地質学的証拠に基づいて並べられたものです。
 地質学的証拠には、岩石の特徴(岩相と呼ばれます)、地層の溜まっている様子(堆積形態と呼ばれます)、あるいは地層の物理化学的特長などがあります。そしてその証拠の一つとして、化石があります。時代層序区分には、化石が重要な証拠になるのは違いありませんが、それがすべての根拠となりません。
 とはいっても、化石は重要な証拠には違いありません。そのため、化石をもとに、時代区分における細分がなされてきました。このような化石をもとした時代区分を化石層序(あるいは生層序)区分とよびます。細分化された時代層序区分には、化石によって決められる化石層序区分が用いられることもあります。
 これらの時代層序区分と化石層序区分が一致していれば問題ないわけです。しかし、この時代層序区分自体が、人間が人為的に時間を区分したものです。ですから、そこにはいくつもの問題が生じ、現在も議論されています。その問題とは、時代層序区分がある典型的な地域の層序によって決められていることと、化石自身の性質によることから起こります。
 時代層序区分がある典型的な地域の層序によって決められているという問題についてです。地層による時代区分は、その時代の地層が一番よく出ているところを模式地(タイプ)の模式層序として選び、そこを基準にして決められています。もともとこのような地層による時代区分の考え方は、ヨーロッパを中心にしてなされました。ですから、その時代の模式地の多くはヨーロッパにあります。ところが、すべての時代の地層が最適な状態でヨーロッパにはあるとは限りません。
 時には、ある時代の地層の模式地と次の時代の模式地が違うところにあることがあります。すると、そこでは、ある時代の地層の重複や欠落が起こることがあります。時代境界という重要なことを議論するためには、時代境界をまたいで連続している地層を用いるべきでしょう。模式地として適切な地層は、連続的に堆積した地層があり、なおかつそこにたくさんの化石を含んでいることです。ヨーロッパの模式地で適切でなければ、他の適切な模式地が変更されることも起こります。
 もうひとつの問題である化石についてです。過去の大絶滅があったということは、化石の証拠からのみ、探ることができます。そしてそれはもちろん、時代境界には大きな手がかりになります。しかし、化石は、化石が当時の生物のすべてを代表しているとは限りません。化石になるのは、当時の生物のほんの一部に過ぎません。特に陸上生物は化石になる率は少なくなっています。さらに、化石のもとである生物は、住める環境が限られていて、ひとつの種ですべての環境に住めるものはいない、ということを常に頭に入れておかなければなりません。大絶滅とはいっても、ある限定された条件に生きていた生物に起こったと考えるべきです。特に陸の動物や植物の化石を扱うときは注意が必要です。
 以上のように模式地による時代境界を決めるという地質学の研究方法は、一見当たり前のアプローチのように見えますが、なかなかいろいろな問題があるようです。


■ Letter to Reader 桜の季節・恐竜を見に

・桜の季節・
とうとう3月も終わります。
そして、明日からいよいよ4月です。
ある人は、新学期を迎える季節です。
ある人は、新入学生として迎えることでしょう。
ある人は、新社会人として迎えることでしょう。
またある人は、迎える側となることでしょう。
そんな新陳代謝があるということは、いいことです。
4月は、家族にとっても、組織にとっても、
ひとつの区切りのなることです。
最初はギクシャクするでしょうか、
しばらくすると新しい組織が新しいパターンを持って
動き出すことでしょう。
そんな変わり目の季節を迎えました。
そんな季節には、なぜか桜が似合いますね。

・恐竜を見に・
このメールが皆さんのお手元に届く頃には、私は、東京にいます。
それは、科学博物館でおこなわれている恐竜展2005を見るためと
もうひとつは林原自然科学博物館の化石が展示されている
ダイノソアファクトリーを見るためです。
恐竜展2005のURLは
http://www.kahaku.go.jp/dinosaur2005/index.html
ダイノソアファクトリーのURLは
http://dinosaurfactory.jp/
です。
興味にある方は、実物を見られてはいかがでしょうか。
いずれも、ぜひ見たいとおもっていた標本があるので出かけます。
そのあと、私の実家である京都に移動します。
かなりの大移動ですが、今回も家族同伴でいきます。
本当なら、恐竜展2005などは春休みを避けたいところですが、
家族と一緒ですから、この時期になりました。
詳細はこのエッセイで紹介できるのはないかと思います。


戻る