地球の調べ方
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Essay ■ 5_30 適切な分類
Letter■ 川原の石・エプリルフール
Words ■ 適切な対応が大切だが、それが難しい


(2004年4月1日)
 石の素朴な疑問シリーズをはじめましたが、沖縄の地学紀行で一時中断していました。「いろいろな石」がなぜあるのかというがテーマで進めていました。続きをしていきましょう。


■ Essay 5_30 適切な分類

 「いろいろな石」を調べるためには、よく見ること、そして分類して名前をつけることが大切であるということを、説明してきました。さらに話を進めましょう。
 分類して名前をつけることで、実は、答えが出ているのです。「いろいろな石」があるということがわかるということは、分類ができるからなのです。でも、じつはそれほど簡単なことではありません。そうはいっても具体的ではありませんね。少し、具体的に話をしていきましょう。
 川原で同じように見える石ころを2つ拾ってきたとしましょう。川原の石ころは、落ちていたところより上流のどこかから転がって、今ある川原に転がっているのです。落ちていたところより上流とはわかるのですが、ではどこから転がってきたかは、なかなかわかりません。もしそれを知ろうとするとたいへんです。よっぽど特徴のある、珍しいものでないとむつかしいものです。
 もし、その2つの石ころを調べたとしたら、その石が違うかどうかは、細かく分類することで、見極めることができます。たとえば、見た目がどんなに同じように見えても、化学成分が同じものからはできないということを示していたり、年代測定の結果が、別の時代にできたものだというを示していたら、その2つの石は、違っているものであるといえます。
 調べられる範囲で同じであるということがわかったとしましょう。でも、それは、同じところの石という保障はありません。もし、上流のあるところに同時期に活動した2つの火山があったとしましょう。でも困ったことに、この火山は、同じ性質のマグマが別の噴火口からでてきたものです。ですから、別の火山というべきなのですが、同じ成分のマグマが活動していることになります。
 もし、この2つの火山からそれぞれ石ころが来ていたとしたら、そっくりなもので同じ分類の石ころとなります。地質学的には別の物と判別すべき石ころですが、川原に転がってきた石ころでは、区別できないこととなります。
 もうひとつ、別の例を出しましょう。ある崖の同じ露頭から2つの標本をとってきたとしましょう。ところが2つの標本は見かけがだいぶ違います。その露頭は、マグマがゆっくり冷え固まった深成岩からできていたとしましょう。同じマグマのはずなのですが、見かけがだいぶ違っていたとしましょう。ひとつは黒っぽくみえます。もうひとつは白っぽく見えます。
 この2つの標本を詳しく調べると、違った性質が見えてくるはずです。となると分類も石の名前も違ったものになります。でも、地質学的には同じ区分として扱うべきでしょう。そのマグマからできた深成岩には、白っぽいものと黒っぽいものをつくる性質があるということになります。
 川原の石ころにこれを適用すると、石ころの分類が違ったとしても、違うとはいえないし、分類が同じ石でも、地質学的は別ものとすべきこともありえます。
 何が言いたかったかというと、石を詳しく調べて分類するとしても、必要に応じた程度でするべきだということです。石ころを調べたければ、地質学的にどのような関係にあるのかを十分知った上でやらなければならないということです。


■ Letter to Reader 川原の石・エプリルフール

・川原の石・
上の例で、川原の石ころをどのように調べればいいのか
ということを述べました。
普通の地質学者は、川原の石ころを研究材料にはしません。
でも、私は、この川原の石ころを研究材料にして、日々悩んでいます。
川原の石ころは、上流から流れてきたものです。
川原の石ことを分類にするにしても、
どれほど分類していいか、基準が難しいのです。
分類しても、詳しく調べても、
それがなかなか役に立たないのです。
でも、私は、なんとかこんな川原の石ころを相手にして、
分類しています。
そんなに詳しく分類してもしかたがありません。
ほどほどにすべきでしょう。
でも、その兼ね合いがよくわかりません。
同じ分類名になっても、なんと違った見かけのものがあるのでしょう。
まったく違ったでき方をしたのだなあと思えるものもあります。
多分、その川原に転がってきた石には、
それぞれに固有の履歴があるはずです。
しかし、今の私にはその履歴を読み取る能力がありません。
石ころは、そんな驚きに満ちています。
それぞれの履歴に違いがある、ということだけしかわかりません。
石ころも自然の一部です。
こんな自然の切れ端に、悩む日々が続いています。

・エプリルフール・
今日は4月1日です。
世間は、エプリルフールでしょうか。
私の大学では、儀式的ですが、
全学の教員が集まっての全学教授会があります。
もちろん、教員全員は出席しません。
もし集まったとしたら、会議室には入りきれません。
まあいってみれば、学長のこの一年の考え方や方針を
周知するためのもの会議かもしれません。
私の大学では、今年度から学長が変わります。
これから私学は厳しい時代です。
今のままでは、存続は不可能です。
いかに進むべきか。
いかに変わるべきか。
その指針が問われます。
決してエプリルフールではすまないことです。