地球の調べ方
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Essay ■ 5_28 いろいろな石1:よく見るということ
Letter■ 石の素朴な疑問シリーズのはじまり・石の記載
Words ■ 数で勝負ではないのだが、数に負けてしまいそう


(2004年2月26日)
 ものを調べるということは、調べるものをよく見ることからはじまります。こんな簡単なことを、ついつい忘れてしまいます。そして、どんなベテランの研究者であっても、最初の一歩はよく見ることからはじまります。今回はそんな当たり前の話です。


■ Essay 5_28 いろいろな石1:よく見るということ

 以前のエッセイ(5_22 大地は何からできているか(その1)、と5_23 大地は何からできているか(その2))で、地球の大地は、なにからできているを考えていきました。その結果、石からできているという結論に達しました。その石から、スタートしましょう。
 石というと、いろいろなものを、思い浮かべます。石の名前は知らないとしても、川原や浜辺でみかけた石には、いろいろなものがあったという記憶を持っている人がたくさんいるでしょう。なぜ、いろいろな石があると思ったのでしょうか。そんな素朴な疑問について考えていきましょう。まずは、「いろいろな石」ということについて考えていきます。
 人間のものを見分ける能力は、すぐれたものです。色でも、模様でも、形でも、何か違った点があるときは、瞬時に見分けることができます。似ているものでも、よく見たり、見慣れれば、かなり小さな違いも見分けることができます。人の顔を見分けることなどは、この能力をいかんなく発揮されています。双子の顔も、身近な人には、簡単に見分けることができます。
 川原の石には「いろいろな石」があるということを思い描いたということは、無意識に石を見分けて、「いろいろな石」があるということを記憶していることになります。これは、人間のものを見分ける能力を利用して、記憶していたのです。しかし、これだけでは、どんな石があるのかと聞かれたとき、答えることができません。これは、あまり意識しないで、無意識なんされた行為だからではないでしょうか。
 無意識、あるいは意図しない能力を使うのではなく、意識して、意図的に見分ける能力を使うことが必要です。難しい言い回しをしましたが、何のことはない、石をよく見ることです。
 石だけでなく、詳しく調べるためには、まず、ものをよく見ることがはじまりです。つまり、観察することです。教科書で習った知識より、よく見ることが一番大切です。私も知識や経験によってついつい石を見てしまい、詳しく見るということを怠ることがあります。知識や経験があると、無意識ではないにしても、「パッと見」によって石の名前を決めることができます。しかし、これには、注意する必要があります。
 その経験によって「パッと見」による判定が、よく見ることによって、わからなくなることもあるし、間違っていることもあります。なんといっても、よく見ることによって、「パッと見」では気づかなかったことが、いろいろ見えてきます。
 「いろいろな石」があることは、無意識にでも、わかることです。しかし、そこに意図的に「いろいろな石」を見出すことよって、次なるステップが現れてきます。これについては、次回としましょう。


■ Letter to Reader 石の素朴な疑問シリーズのはじまり・石の記載

・石の素朴な疑問シリーズのはじまり・
石に関する素朴な疑問をシリーズとしてお送りします。
足元に転がっているなんの変哲もない石ころ。
そんな石ころを調べることから初めていきましょう。
石ころを調べて、どこにたどり着くのでしょうか。
私にも、その行き先はわかりません。
でも、その先には、なにか自然の神秘や不思議さがありそうです。
自然の神秘や不思議さを解き明かすには、
知識も、時には必要でしょう。
経験も、時には必要でしょう。
しかし、なによりも素直に自然をみる心が必要ではないでしょうか。
先入観、思い込み、常識はいりません。
それより、正しく、筋道をつけて考える知恵のほうが大切だと思います。
そんな気持ちでこのシリーズをはじめましょう。

・石の記載・
私は、今、毎日何個も石を見つめています。
それは、石の記載するためです。
私がおこなっている石の記載とは、
石をひとつひとつ照明をあてながらセッティングしてデジカメで写真撮影し、
計測(質量、3次元の長さ測定)し、
岩石学的は分類による命名をしていきます。
川の石の統計を取るために、
ひとつの地点で100個の石を統一した方法で採取しています。
その地点が、整理すべきところとして12ヶ所あります。
つまり、1,200個の石それぞれについて、
上の記載をおこなうことになります。
これは、昨年1年間、私が調査で採取した資料の
半分ほどの分量にあたります。
あとの半分は、すでに記載が終了しています。
残された12ヶ所の石を、2月から3月にかけての
2ヶ月ほどで整理する予定です。
現在、7ヶ所の整理が終わりました。
まだまだ、たくさん残っていますが、
上で書いたような疑問を強く感じています。
ある目的で、ある期間内に、ある仕事量をこなさなければなりません。
ですから、ついつい機械的になってしまいます。
でも、自然を素直に、そしてよく見る姿勢が必要だと考えながら、
日々、記載に励んでいます。
なんとか3月までに終わらせたいと考えています。
2月26日から3月2日まで沖縄に同じ手法を用いて、
川原での石の採取をおこなに出かけます。
採取地点は何ヶ所になるかはわかりませんが、
またまた試料が増えていきそうです。
そのためにも、早く今ある試料を整理しなければなりません。
急がねば、春が来てしまいそうです。