地球の調べ方
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5_6 宇宙の年齢

 

ハッブル望遠鏡
で見た深宇宙

(2001年3月8日)
 科学雑誌ネイチャー(Nature)の2月8日号に、放射性核種を用いた方法で、より正確な宇宙の年齢が求められたというニュースが出ていました。その年齢は、125億年でした。宇宙の年齢決定の裏には、どのような原理が隠されているのでしょうか。見ていきましょう。


 宇宙の年齢は、いくつかの方法で見積もられています。直接求める方法と間接的に求める方法があります。直接求める方法はハッブル定数を正確に決めるのがその一つです。間接的に求める方法として、一番古いものを探すという方法があります。宇宙で一番古いものより、宇宙は古いはずです。ですから、最古の物質から宇宙の年齢の最小値が求まるわけです。
 今回調べられたのは、私たちの銀河にある古い星です。私たちの太陽系のある銀河は、渦巻き銀河と呼ばれるタイプです。渦巻き銀河は、空飛ぶ円盤(UFO)のような形をしており、中心の球状の部分と回りのCDのような円盤状の部分とからできています。球状のところをハロー、円盤状の部分をディスクといいます。銀河の模様やつくりはすべて星(恒星)からできています。ハローには古い星が、ディスクには新しい星があることが知られています。
 今回調べられたのは、ハローにある星で、「くじら座」の11.7等で金属の欠乏しているCS31082-001と呼ばれる星でした。CS31082-001は、鉄が私たちの太陽の800分の1しかない、種族IIと呼ばれる星です。鉄がないということは、この星が、宇宙にまだ鉄ができてないほど初期につくられた非常に古い星であるということを示しています。
 CS31082-001に、今まで見つからなかった238U(ウラニウム)のスペクトルが、見つかりました。スペクトルとは、ある波長の電磁波(光や電波、X線もその一部)のことで、今回は238Uだけが放出する電磁波の波長(385.96ナノメートル)が発見されました。太陽系以外でUが検出されたのは、これが最初でした。
 今まで、半減期(もとあった放射性核種の半分になる時間)の長い232Th(半減期140.5億年)は検出されており、年代測定に利用されてきました。しかし、今回はもっと半減期の短い(44.68億年)238Uが検出されたので、100億年前後の年代を精度良く決めることができます。
 UやThだけの測定値では、測定精度が充分でなかったり、さまざなま条件を仮定しないと、年代を精度良く求めることができません。そこで、いくつかの元素を組み合わせることで、その相対存在比から、より精度良い年代決定が可能になってきます。核種の比を用いると、いろいろな仮定の値を使わなくて済みます(数式上、両元素の仮定の値を消すことができる)。ですから、年代測定では、核種の比が良く用いられます。今までは、Thと安定核種のOs(オスミウム)やIr(イリジウム)の組み合わせだけから求められたいた年代は、156億年±46億年でした。
 Uが検出されるたことによって、いくつもの核種の比を組み合わせて年代を決めることがきるようになりました。その結果、CS31082-001の年齢は、125億年±33億年と決定されました。
 今後、元素合成のモデルや実験データの精度が改善されれば、上記の誤差範囲はもっと小さくなると考えられています。今まで、ハッブル定数の値が話題によくなりましたが、今回の値も、今までの値に近いものとなりました。さまざまな方法で求められた年齢が一致してくれば、宇宙の年齢はより確かなものとなるはずです。




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