地球地学紀行

表紙に戻る


Essay■ 4_166 火星研究への旅 11:SNC隕石
Letter■ 野外調査・涼しい週末
Words ■ 6月になりました


(2022.06.02)
 火星の岩石はいまだに持ち帰ることはできていません。しかし、火星起源隕石があるので、それを用いて岩石学的研究ができます。火星のどこに由来するのがわかっていなかったのですが、最近特定されてきました。

Essay■ 4_166 火星研究への旅 11:SNC隕石

 アポロ計画で月から岩石を持ち帰っています。実物資料があるので、詳しく調べることができて、他の天体の岩石は、イトカワとリュウグウから無人探査機が試料を持ち帰りました。小惑星だったので、重力が小さいため、タッチダウンの後、簡単に離脱することができました。また、無人探査機だったので、生命体が乗っていないため、そのためのシステムが不要で、長い時間を要しても問題はありませんでした。
 火星には多数の探査機が訪れていますが、火星の岩石はいまだに地球には持ち帰られてはいません。火星は大きな天体なので、重力も大きく離脱するために、多くの燃料が必要になります。また、遠くなので、地球に戻るためにも燃料が必要になります。そのため、岩石を入手するのが難しくなります。
 しかし、幸いなことに、火星から飛び出して地球に落ちた岩石が見つかっています。火星起源の隕石です。
 火星起源とされている隕石が何種類があります。SNC(Shergottite シャーゴッタイト、Nakhlite ナクライト、Chassignite シャシナイト)と呼ばれるものに区分されています。斜方輝石岩(Orthopyroxinite)も火星起源です。隕石のデータベースで検索すると、火星起源と考えられているものが334個もでてきます。また、斜方輝石岩のAllan Hills 84001からは、化石のようなもの見つかって話題になったことがあります。
 そもそも火星起源を決定づけたのには、いくつかの根拠がありました。通常の隕石は45億年前の年代を示すのですが、火星起源の隕石は、若い形成年代(shergottiteは6億5000万〜1億6500万年前、nakhlaとchassigniteは13億年前)を示しました。マグマから結晶ができて火成岩ができるのですが、火成岩の組織として、重力のあるところ(大きい天体)で形成されたものになっていること、高圧下(大きい天体)でのマグマが形成されたことを示す鉱物組成をもつこと、酸化度の高い鉱物と含水鉱物をもつこと、火星の表面の岩石の化学組成にも似ていることなど、さまざまな証拠があるため、火星起源と考えられています。
 2021年11月のNature Communications誌に、ラガイン(Lagain)さんらの共同研究で
The Tharsis mantle source of depleted shergottites revealed by 90 million impact craters
(9000万個の衝突クレータから明らかにした枯渇したシャーゴッタイトのタルシスのマントルが起源)
というタイトルでした。シャーゴッタイトという火星起源の隕石が、タルシスのマントルから由来したことを特定したというものです。
 隕石の火星由来はいろいろな証拠があったのですが、飛び出したクレータの場所が特定されたということになります。その方法は次回としましょう。


Letter to Reader■ 野外調査・涼しい週末

・野外調査・
今週末に、調査にでます。
今回は道南方面です。
コースとしては何度も通っているところですが、
目的が違っているので、
見るところや見方が変わってきます。
今回は、通常の火山とカルデラを伴う火山
そして、古い付加体中の地層と地層を見ることです。
野外調査がやっと自由にでききるようになって助かっています。

・涼しい週末・
本州では暑い日なっていたようですが、
先週末は、北海道では風雨が激しく、
気温も低目になっていて肌寒く感じました。
さすがにストーブをつけることはありませんでしたが、
冬の室内着を出して着ていました。
布団も夏の肌掛けだけでは寒いので、
毛布をかけてちょうどいいくらいでした。
変わりやすい天気です。