地球地学紀行

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Essay■ 4_164 火星研究への旅 9:コーティングの発見
Letter■ 初夏・野外調査
Words ■ 今シーズン最初の野外調査は初夏にはじまります


(2022.05.19)
 前回は、火星の表層を探査しているパーサヴィアランスを紹介しました。ローバーが観測をはじめてから、1年ほどです。ローバーの観測から、成果がではじめてきました。そのひとつを紹介します。

Essay■ 4_164 火星研究への旅 9:コーティングの発見

 探査機ローバーのパーサヴィアランスの成果が、2021年12月のアメリカの地球物理学連合(AGU)の学会で発表されました。探査機が降り立った地域の岩石の特徴を報告したものでした。2021年2月に到着して1年にも満たないのですが、成果がではじめてきました。
 パーサヴィアランスにはマストカムZというカメラが搭載されています。特定の波長を遮断するフィルターをつけて、撮影できます。そこから、ある程度組成を推定することができます。また、スーパーカムは、2つのレーザー、4つの分光計を使用して、岩や土壌の化学成分を測定できます。
 ローバーは、ジェゼロ・クレーターに着陸し探査しているのですが、火星の表面は、基本的にサビの赤っぽい色をしています。そのような赤の中に、紫色をしている岩石があることを発見しました。紫色の部分が、中の岩石よりも柔らかく、化学的に異なる物質の層が存在していました。紫色の部分は、岩石をコーティング(被覆)していることがわかりました。
 このコーティングは、特別な岩石にだけみつかるものでなく、いろいろな形やいろいろなサイズの岩石にもあることがわかってきました。ローバーの探査したところで、至るところにみつかっています。少なくとも、このクレータでは、よくある現象となります。この紫色のコーティングは、どうしてできたのでしょうか。
 マストカムZの画像では、酸化鉄のようなものの可能性があり、スーパーカムの画像からは、水素とマグネシウムを多く含んでいそうなことがわかってきました。
 火星での岩石のコーティングは、1970年代のバイキング(火星に着陸したNASAの探査機)ですでに見つけていました。黒っぽい斑点が見つかっていたのですが、表面の汚れではないかとも考えられていました。
 今回、パーサヴィアランスは、黒っぽいコーティングされているものも見つかっています。ですから、バイキングが発見したものがコーティングであることが判明しました。黒っぽいコーティングはマンガンを多く含むことがわかっています。
 2種類のコーティングは、どういう意味があるのでしょうか。次回としましょう。


Letter to Reader■ 初夏・野外調査

・初夏・
北海道は遅咲きの桜も終わり
若葉の季節になりました。
先々週末に最後の桜を見いくつもりでいたのですが、
天気が悪く風も強かったので諦めた。
先週末に晴れたのやっとでかけました。
予想通り桜は終わっていましたが、
若葉の季節となっていました。
北海道にも初夏がきました。

・野外調査・
明日から調査にでかけます。
今シーズンはじめての野外調査です。
コロナ感染はおさまってはおらず
レベル2で警戒の状態のままです。
一方でGotoキャンペーンもあります。
ブレーキとアクセルを踏んだ状態でもあります。
泊まるところは仕方がないのですが、
野外調査なので、
人があまりいないところを周る予定です。
久しぶりの野外調査なのでワクワクします。