地球地学紀行

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Essay■ 4_162 火星研究への旅 7:熱的進化
Letter■ のんびりと
Words ■ このエッセイは予約配信です


(2022.05.05)
 火星のリンクルリッジの形成年代には、偏りがありました。この年代の偏りは、何を意味しているのでしょうか。リンクルリッジから、火星と地球の違いが垣間見えてきました。

Essay■ 4_162 火星研究への旅 7:熱的進化

 リンクルリッジとは、天体表面に形成されているシワのような地形です。火星では、リンクルリッジは、火山の周辺に多数形成されていました。そこから、火山活動が終わったあと、周囲の地殻が収縮したり、歪むことで形成されたと考えられています。
 集中している27箇所でリンクルリッジで、それぞれの形成年代を正確に決めていくと、38〜25.2億年前の間に形成されていることがわかってきました。中でも特に、35.9〜35.5億年前にもっと多くできていることがわかりました。
 もし各地のリンクルリッジがバラバラの年代を示すのであれば、それぞれの火山の活動時期の終焉を示していることになります。ところが、リンクルリッジ形成時期は、ある時代に集中していました。その年代の偏りには、どのような意味があるでしょうか。
 時代の偏りとは、火星全体で同時期にリンクルリッジができていることになります。これは、火星全域で火山活動が一気に停止したことを意味します。火星の内部の条件で、ある時期集中的にマグマが活動して、その後活動が停止するような状態に移行したと推定できます。
 このような火星内部の冷却の歴史は、天体の地質活動の変遷となるはずです。これが論文のタイトルにも使われていた「熱的進化」と呼ばれるものです。
 38億年前より古い時代にはリンクルリッジが見られませんでした。この時期にも火山活動があり、形成されていたはずです。火星の創生期には、大気や水が存在し、雨が降り、川ができ、海がありました。そのため侵食作用が強く働いていた時期でした。多数あったはずのリンクルリッジが、初期のものは消えてしまったと考えられます。
 38億年前ころには侵食作用がおさまり、36億年前から火星内部の熱の放出によって一気に火山活動が激しくなり、4000万年ほどでで活動がおさまり、火星全体が収縮する時期になります。そして、25億年前には火星内部にはマグマができるような条件がなくなり、火山活動が停止します。
 35億年前には火星では激しい火山活動が終わっています。ところが地球では、やっと岩石などの記録が残ってくる時期に移行します。これ以降、地質活動が記録に残されていきます。地球には大気や海洋が豊富で、常時、古い地形を侵食していくのですが、大陸の内部には古い岩石の断片が残されていました。そこから、地球の地質活動の歴史が読み取られてきました。


Letter to Reader■ のんびりと

・のんびりと・
前回紹介しましたように、
現在、夫婦で田舎に1週間ほど滞在しています。
そのため、このエッセイは、予約配信しています。
コロナ感染を避けながらが、
ひっそりとのんびりと過ごしています。
北海道はやっと桜の季節になりました。
滞在している田舎の桜前線はどうでしょうか。
晴れて桜が咲いていれば、いいのですが。
人のいないところをうろうろしながら
春を満喫するつもりです。
家内は地元で漁港で取れた
おいしい魚を楽しみにしています。
地元でテイクアウトできる店を探して
いこうとも考えています。
こんなにのんびりできるのは3年ぶりでしょうか。
楽しもうと考えています。