地球地学紀行

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Essay■ 4_159 火星研究への旅 4:火星の核
Letter■ 汚れた残雪・対面と感染
Words ■ いよいよ昔通りの新学期のスタートです


(2022.04.14)
 火星に磁場がないことは、観測でわかっています。では、もともとなかったのでしょうか。どうすれば探ることができるでしょうか。地球の磁場の形成メカニズムが参考になります。

Essay■ 4_159 火星研究への旅 4:火星の核

 次なる火星研究の旅は、火星の磁場と内部の核に向かいます。
 現在の火星には地球のような磁場がないことがわかっています。では、もととも火星には磁場がなかったのでしょうか。地球から考えていきましょう。
 地球に磁場が存在するのが、中心部の核を構成している金属の鉄の一部が液体として存在し、流動しているためだと考えられています。もし一般的に金属鉄の流動が、天体の磁場をもたらすのであれば、火星の核が液体の鉄として存在していれば、磁場があったことになります。
 現在の火星には核があると考えられています。探査機インサイトの観測では、火星の核の密度が推定され、鉄だけより密度が小さいことがわかってきました。密度が小さくなるためには、軽くする成分が混じっていることになります。その成分として、イオウ(以前から混じっていると考えられていた)の他に、水素も混じっているのではないかと、考えられるようになりました。
 液体鉄の核があるのに、火星では磁場が観測されていません。なぜでしょうか。その課題に対してひとつの仮説が提示されました。
 Nature Communicationsという科学雑誌に、東大の大学院生の横尾舜平さんたちが共同研究で
Stratification in planetary cores by liquid immiscibility in Fe-S-H
(Fe-S-H系での液体不混和による惑星核での成層)
を2022年2月に報告されました。
 「Fe-S-H系」と「液体不混和」が専門的でわかりにくい内容となっています。
 Fe-S-H系とは、核は主にはFe(Niもあります)からできていますが、Feの中に取り込まれる可能性がある成分としてS(イオウ)の他にH(水から由来した水素)があると考えられたためです。この推定は、昔の惑星(原始惑星と呼ばれるもの)の核を構成していた隕石(鉄隕石)からも支持されています。
 横尾さんたちは、Fe-S-Hの3つの成分を素材にして、高温高圧実験がおこないました。ダイヤモンドアンビルという装置を用いて、火星の核に相当する高温高圧条件を発生して合成実験がおこなわれました。
 40万気圧(火星コア中心部のる圧力)、3000 K以上に加熱すると、イオウと鉄が均質に混じっている状態になりました。温度が下がると、イオウと鉄が分離しました。分離は、液体の状態で起こっていきます。その状態を「液体不混和」と呼んでいます。
 この結果から、横尾さんたちは、火星ができてすぐの核では、高温なので均質の液体になっていたのが、時間経過で温度が下がっていき、イオウの液体が分離したと考えました。
 この実験から、火星の核と磁場に関して、どのようなことがわかってくるのでしょうか。それは次回としましょう。


Letter to Reader■ 汚れた残雪・対面と感染

・汚れた残雪・
北海道も暖かい日が訪れるようになってきています。
時々寒い日もあり、薄っすらと積雪もあります。
温度変化の激しい日々となっています。
暖かい日には、雪解けが進んでいきます。
しかし、例年にない積雪量なので、
まだいたるところに雪が残っています。
残雪は汚いので、景色はよくありません。
汚れた残雪も春が来ている証拠ですよね。

・対面と感染・
先週から大学では、対面での授業が復活しました。
大教室での大人数での授業をおこないました。
久しぶりの感覚ですが、いいですね。
一方で、コロナ感染が
身近にも迫ってくるようになりました。
身内や担当学生にも感染者が続いています。
対面授業はいいのですが、感染拡大はいやですね。
両立できないのがつらいですね。