地球地学紀行

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Essay■ 4_158 火星研究への旅 3:20億年前の流水
Letter■ 火星画像・新年度の活気
Words ■ いよいよ対面授業が戻ってきました


(2022.04.07)
 火星には液体の水が存在していました。いつまで存在していたのでしょうか。流水が存在していた時期に関して、新しい報告がありました。火星の地形と鉱物の観察データをもとにしています。

Essay■ 4_158 火星研究への旅 3:20億年前の流水

 火星は、地球より太陽から遠いところにあるのですが、表層環境さえ整っていれば液体の水が存在できる条件(ハビタブル・ゾーンと呼ばれている)に位置していました。火星は液体の水が存在できる条件にあり、実際に、水の流れてできた河川の地形や、河川が流れんでいるところや海岸など海の地形なども見つかっています。このような地形から、少なくとも誕生した時、火星には表層に水が存在していたことになります。
 厚い大気のある地球や金星と比べて、火星は半径も小さく、重力も小さいので、大気も薄くなっています。そのためでしょうか、現在では、火星の表面には、液体の水が恒常的には存在しない天体となりました。
 では、いつまで液体の水が火星表層に存在していたのか、また周期的であっても流水があったのかなどが問題です。それは、生命誕生から進化に至るまで、十分な期間、水が存在していたかどうかに繋がる重要な条件となるからです。
 そんな謎に対して、リースク(Ellen Leask)とエルマン(Bethany Ehlmann)さんたちの研究が報告されました。
 2005年にNASAが打ち上げられたマーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter、MROと略されています)は、2006年から火星周回軌道から観測をはじめました。高解像度カメラや高精度分光計、レーダーなどを用いて、火星の地形や鉱物の分布などが調べられました。河川、流水の地形や火山、大気による地形など、詳細な画像やデータがえられました。そのデータを元に研究が進められました。
 画像から多数の火山も発見されてきました。また、レーダーから数値標高モデル(緯度経度ごとの標高データ)から、詳細な地形がわかります。分光計による地層や鉱物の分布がわかってきました。固体表面のある天体ではクレーターの数密度から年代が推定されています。詳細な地形がわかれば、表層地形の形成年代がより精密に推定できるようになります。
 リースクさんたちは、塩の堆積物に注目して、その堆積場の地形を調べました。低地で河川が流れ込んでいるような地形のところに、塩が薄く堆積(3m未満)していました。河川は、氷床や永久凍土から、時々溶けて流れ出したもののようです。そこに塩が堆積しています。
 塩の堆積物は、23億年前に形成された火山地形にも見つかりました。火山や衝突クレータの年代から、塩の堆積、つまり流水の発生は、約20億〜25億年前まであったことが判明した。これまでは、火星では、30億年前には水がなくなっていたと考えられていましたが、もっと永い期間、流水が形成されていたことになります。
 どれくらいの期間があれば、生物が誕生し、進化するかはまだわかっていません。また、火星の生物の痕跡も、まだ確実なものは見つかっていません。しかし、長い期間のほうが可能性が増えるはずです。


Letter to Reader■ 火星画像新年度の活気

・火星画像・
素晴らしい火星の画像が
https://mars.nasa.gov/mro/multimedia/images/
で公開されています。
デルタ地形や流水の地形、風紋、クレータなど、
地球とは似て非なる詳細な画像があります。
一度のんびりと眺めながら、
遊覧飛行気分を味わってみていはいかがでしょうか。

・新年度の活気・
今年の北海道は雪が多かったので
4月でも至る所に雪が残っています。
しかし、暖かい日が回ってきましたので
雪解けも一気に進んでいます。
大学の入学式も終わり、ガイダンスがはじまっています。
対面授業も復活してきたので
キャンパスに学生が溢れて、
新学期のはじまりを久しぶりに味わっています。