地球地学紀行

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Essay■ 4_156 火星研究への旅 1:明るいレーダー反射
Letter■ 学位記授与式・重点措置解除
Words ■ 火星への空想の旅を


(2022.03.24)
 今回から、火星に関する研究をいくつか続けて紹介していきます。地球地学紀行は、昨年末のエッセイを最後にして、しばらく滞っています。火星の旅を地学紀行として紹介していきます。

Essay■ 4_156 火星研究への旅 1:明るいレーダー反射

 このエッセイを書くために、地質、地球、惑星、宇宙など興味をもっている話題のニュースや論文を見つけると、データとして記録しておきます。次のエッセイのテーマを決めて、その論文や資料を読みながら、書いていきます。次のテーマを考えている時、火星に関係する研究の話題がいくつかあることに気づきました。まとめてシリーズとして紹介していくことにしました。
 最初の話題は、火星での水の存在です。火星にH2Oの氷があることはわかっています。問題は、安定的に液体の水が存在するかどうかです。表層には一時的に水が存在できるのですが、恒常的に存在するかどうかが重要です。なぜ、重要になるかというと、恒常的に水が存在すれば、生命が発生していれば、現在も生物がそこに暮らしている可能性があるからです。そのような環境があれば、地球外生命がはじめて見つかることになります。
 欧州宇宙機関(ESA)のマーズ・エクスプレスという火星探査機の地下探査レーダー(MARSIS)で観測データが根拠になりました。そのデータには、南極になる氷床の下、地下1.5kmあたりに、強い反射が見つかりました。そのレーダー反射は、地底湖があるためだと2018年に報告されました。さらに2020年には、反射をより詳しく調べて、この湖のまわりには小さな湖がいくつかあるとされました。
 ただし、反論もありました。地下探査レーダーでよく反射するものとして、粘土、水和物、塩水などが考えられます。反射の原因を調べるために実験がされました。候補となる粘土鉱物(スメクタイト)を低温にしていくと、レーダーは水と同じ反射信号を受け取ることを実験で示しました。そのため、南極の氷床の下の反射は、粘土鉱物ではないかという反論がされました。
 それに対して、さらなる反論、つまり水の可能性が示されてました。地球のいろいろな時代(2億年前から現在まで)の粘土質の堆積物(6箇所)をとってきて、実験室でいろいろな温度(-73℃から+24℃まで)にして、いろいろな電波(周波数1MHz〜1GHz)で観測されました。その結果、火星の強い反射信号の観測データは、粘土鉱物のいずれとも似ていないということがわかりました。そのため、レーダーの反射波は、水によるものだという反論への反論でした。しかし、水であるという証拠を示したわけではありませんでした。
 他にもこの明るいレーダー反射について、議論が起こっています。その議論は、次回としましょう。


Letter to Reader■ 学位記授与式・重点措置解除

・学位記授与式・
先週、学位記授与式がおこなわれました。
例年になく雪が多いので、
外での集合写真が大学の象徴的な場所での
撮影ができませんでした。
室内での撮影でした。
しかし、記念写真は記念です。
問題は、その時の思い出が大切です。
さらには、4年間の学びや経験の証が
学位記でもあるわけです。
その学びと経験を大切にしていくべきでしょう。

・重点措置解除・
全国的にまん延等防止重点措置が、
21日ままで解除されていきます。
ワクチン接種も遅ればせながら進められてきました。
多くの人は、危機感が薄れそうです。
感染数の減少はゆるいようです。
これまで丸2年間、断続的ですが
自粛を強いられてきました。
社会は3月末の卒業、退職から
4月はじめの入学、入社などがあり
それを祝う宴会なども、解除によって
多くなるのではないでしょうか。
COVID-19の感染力は強力なままなので、
感染爆発がぶり返すのではないかと心配です。