地球地学紀行

表紙に戻る


Essay■ 4_151 2019年残念シリーズ 4:歌登のデスモスチルス
Letter■ 北海道と台風・今年の紅葉
Words ■ 北海道は秋が深まってきました


(2019.10.17)
 北海道では、化石が多数見つかります。恐竜化石の産地としても有名ですが、他にもいくつかの大型化石が見つかっています。恐竜の時代よりもっと新しい時代にいた、大型哺乳類と、その化石の産地を紹介しましょう。

Essay■ 4_151 2019年残念シリーズ 4:歌登のデスモスチルス

 9月下旬に道北の調査にいきました。初日は幸い晴れていて、順調に調査をすることができました。最初の目的地に向かう途中に、歌登を通ることにしました。今年、道北を調査するのは3度目だったのですが、毎回ルートを変えるようにしてきましたので、歌登を通るのは初めてでした。
 歌登は、デスモスチルスの化石の産地として有名です。できればその産地を見たいと思っていました。幸い道道(北海道が管理する道のこと)120号を走っている時、カーナビでデスモスチルスの産地の表記がありました。それは、徳志別川の橋を渡ったところでしが、幸い看板があるのが目に入りました。車を止めて見学することにしたました。その看板には「デスモスの里 デスモスチルスの化石発掘跡」と書かれていました。
 デスモスチルス(Desmostylus)という学名なのですが、Desmosとは束(たば)という意味で、tylusは柱(はしら)という意味です。合わせて、柱を束ねたような歯をもつ生物であることから命名されました。体長に2m以上にもなる大型の哺乳類です。新生代の中新世中期から後期にかけて生息しました。
 全身骨格は2体しか見つかっていません。1933年に当時日本領であった樺太(からふと)から最初の化石が見つかり、産地の地名から気屯(けとん)標本と呼ばれています。気屯標本は、現在、北海道大学博物館に保管されています。しかし、その実体は不明で、さまざまな復元図がつくっれました。陸上生活に適したバクのようなものから、陸棲だが水辺にも適応したカバ、トドやアシカのように完全に水棲のものまで、多数の想像図が描かれました。
 1976年、歌登で2つ目の全身骨格の化石が見つかり、「歌登標本」となりました。既知の生物に合わせた復元ではなく、骨格に筋肉をつけて解剖学的復元がなされました。これが現在のデスモスチルスの復元図となっています。
 デスモスチルスの仲間(束柱類)の化石は、日本からカムチャッカ半島、アメリカ太平洋岸まで見つかっていますが、日本で多数の化石が見つかっています。似た仲間のパレオパラドキシアは関東から西で見つかっています。デスモスチルスは、本州でも見つかっていますが、北海道から多数見つかっています。中新世の日本、特に北海道を中心にした海岸では、多数のデスモスチルスが付近で暮らしていたようです。なかなかにぎやかな海岸であったようです。
 このエッセイでデスモスチルスに関する情報を紹介できたのは、枝幸市の南にある「オホーツクミュージアムえさし」という新しい博物館の見学ができたからです。デスモスチルスの化石や発掘の様子などが展示されていたので、詳しく知ることができました。
 ただ、発掘地を示す河原の看板は色あせ、草もかなり生えていて、近づきがたい状態でした。河岸に出てみたのですが、詳しい説明があるかと思ったのですが、どこが産地なのかわかりませんでした。残念でした。でも、その後の発掘調査で、デスモスチルスの産地は一箇所ではなく、歌登周辺で多数の産地があることがわかりました。そして、博物館は充実していたので満足できました。


Letter to Reader■ 北海道と台風・今年の紅葉

・北海道と台風・
私が住む北海道の街では、
関東から東北に大きな被害を出した台風19号の影響は
幸いながら受けませんでした。
今年は、本州に被害を与える台風が多いようです。
通常の台風は北海道に上陸する頃には、
温帯低気圧になっていることが多く、
被害はあまり受けません。
しかし、台風の勢力を保ったまま上陸すると
これまで台風の被害を受けることが少ないため、
被害は本州より大きくなります。
特に大木の倒木などが問題になります。
北海道では、昨年9月にひどい被害を受けました。

・今年の紅葉・
北海道は秋も深まり、紅葉が進んでいます。
例年は一気に紅葉が進んでいくことが多いのですが、
今年は、例年に比べて、色づき方がばらばらです。
夏から秋にかけて、暖かい日や寒い日の温度変化が
不規則で、激しかったように思います。
その影響でしょうか、紅葉が綺麗ではありません。
来週末は、道東に再度でかけます。
秋が深まっているので、
そろそろ雪が心配になってきました。