地球地学紀行

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Essay ■ 4_89 茂津多:狩場2009年 2
Letter■ 秋の訪れ・お出かけ
Words ■ 夏から秋へ


(2009.10.01)
  今回も、8月にでかけた道南の狩場山の紀行の続きです。今では、涼しく秋めいてきたのですが、夏の道南の話です。蒸し暑い夏を思い起こしながら、火山に思いを馳せましょう。


■Essay 4_89 茂津多:狩場2009年 2

 道南の渡島半島の付け根に位置する島牧村と瀬棚町にまたがって、狩場山はあります。狩場山の西の裾野は、日本海に向かって急激に落ち込んでいます。狩場山は、新生代の火山ですが、活火山ではなく、現在は活動していません。比較的新しい火山なので、狩場山周辺では火山岩をいたるところで見ることができます。
  今年の夏、狩場山に登るつもりで島牧村にでかけましたが、天気が悪く断念しました。しかし、狩場山の奥懐にあたる賀老渓谷では、活動した時代の違いや、性質の違うさまざまな火山岩を見ることができました。
  さらに見たかった火山岩が、茂多津(もったつ)の海岸線にでていました。この周辺で火山岩は、縞模様が発達しているのが特徴です。さらに、面白いことに、水中で活動した火山の特徴をもった岩石もみることができます。火山活動できた岩石は、火山砕屑岩と呼び、一般には陸上で活動したものです。しかし、水中や海岸近くで活動した火山もあります。そのような火山では、水の中でできる固有の特徴をもった水中火山砕屑岩(hyaloclastite、ハイアロクラスタイト)ができることがあります。
  ハイアロクラスタイトは、陸上のものとは、産状が違います。水の中でマグマは、急冷されるので、壊れます。溶岩が壊れたものが主体となることが多いのですが、溶岩の壊れ方はさまざまで、また海底を崩れ落ちて堆積岩の構造を持つこともあります。また、冷え方つまりマグマが固まるスピードもいろいろで、結晶のできない緻密で黒っぽい透明感があるガラスから、ある程度結晶化しているところもあなります。このようなガラスの縁を急冷縁(chilled margin)と呼みます。急冷縁は、水中に溶岩が固まったことを示しています。急冷縁の有無が、ハイアロクラスタイトを見分ける一番の特徴となります。
  マグマの量が多く、粘り気(粘性といいます)が小さいとき、水中に流れ込んでもマグマが壊れないことがあります。ある割れ目から出てきたマグマは、まるで練り歯磨きのチューブを押し出したように、円柱状にでてきます。周りは海水のなので、すぐに急冷縁を持った溶岩になります。勢いが止まると、先端は丸い球状の急冷縁ができます。丸太のようなものが何個も何個も連なり、まるで枕を並べたような形状になることがよくあります。このような溶岩を枕状溶岩と呼びます。枕状溶岩は、急冷縁とともにマグマが水中で形成されたことを示しています。
  このような多様性ができるのは、マグマが熱いのと岩石に断熱効果があるためです。表面が海水に触れて冷え固まっても、内側はまだ熱いマグマのまま固まらないで、溶岩の流れで新たな割れ目ができて、またそこが急激に冷却され、壊れたり、ガラスができたりします。枕状溶岩とハイアロクラスタイトとが連続的に変化していくこともよくあります。
  狩場トンネルの途中にある休息所で、不思議な縞模様を持つ溶岩と、ハイアロクラスタイトを近くで見ることができます。そんな過去の壮大な火と水のせめぎあいを、今では穏やかな海岸で見ることができます。


■Letter to Reader 秋の訪れ・お出かけ

・秋の訪れ・
北海道は秋めいてきました。
気温はそれほど下がっていないのですが、
高山での初雪の知らせもとどきました。
わが町でも、紅葉がはじまり、
気の早い木々は葉を落とし始めています。
一気に秋に向かいそうです。
雪が来る前にしたいことがいくつかあるのですが、
さてさて間に合うのでしょうか。

・お出かけ・
8月のでかけたときのことを
前回と今回書きましたが、
9月は、あちこちでかけました。
ですから、狩場山への旅行が
遠い以前のような気がします。
愛媛県西予市、宮崎県各地、
神居古譚-日高、京都から奈良
を1月の間にめぐりました。
ほとんど出かけていました。
今年は特に多く出かけました。
調査のためだけではないのですが、
チャンスさえあれば、エッセイのネタは探していました。
機会をみて、順番に紹介していきたいと考えています。