地球地学紀行

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Essay ■ 4_85 白砂の白良浜:南紀2
Letter■ 人工と自然・雨不足
Words ■ 人工と自然は最終的には折り合えるのだろうか


(2009.04.16)
  南紀の旅の2回目は、白浜の白良浜を紹介します。白浜は、関西では有名な観光地です。しかし、白浜は、結構遠くて、関西在住の人でも、いったことのない人も多いのかもしれません。私も、今回が始めての訪問でした。白浜を象徴するような白い砂浜を見てきました。


■Essay 4_85 白砂の白良浜:南紀2

 南紀白浜は、関西では有名な観光地です。しかし、私は今までいったことがありませんが、今回の南紀の旅で、はじめて訪れることができました。白浜の中でも白良浜(しららはま)と呼ばれるところは、感動をするような海岸です。白良浜は、丸い弧を描いたような海岸線(鉛山湾)に、長さ700mほどにわたり白い砂浜が続いています。まるで、海外のリゾート地の海岸を思わせるような砂浜が広がっています。
  白い砂は、石英を主成分としています。波にあわられ、円磨された砂となっています。かつては、ガラスの材料にも使われていたほど淘汰のいい砂です。ところが、白良浜以外の周辺の海岸は、特別に石英が多い、白い砂浜ではありません。白良浜は、白い砂浜になるための限られた条件を満たしていたためにできたのです。
  その条件の一つは、砂の供給源(後背地と呼びます)に石英がたくさんあったことです。後背地は、湯崎半島全体となります。半島は、新第三紀中新世(1500〜1600万年前)に形成された田辺層群の中の白浜累層と呼ばれる地層から成り立っています。白浜累層は、砂岩と泥岩の繰り返し(互層と呼びます)や、礫岩、泥岩などからできています。それらの地層から石英が供給されることによって白い砂浜ができます。
  その供給経路は、その石英の多い地層の中を流れ、白良浜に流れ込む川となります。白良浜に流れ込んでいるのは、寺谷川です。ところが、この寺谷川は、コンクリートに護岸されているため、供給源としての役割を果たさなくなりました。結果、砂浜は、波の浸食作用で砂がなくなっていきました。白良浜の白砂は、重要な観光資源です。それを守るために、対応策がいろいろととられました。
  ひとつの対応策として、砂を補給するという方法がとられています。しかし、石英だけからできた白い砂はそうそうありません。遠いのですが、オーストラリアの西海岸から持ち込まれています。1989年から2005年まで、7万立方メートル以上の砂が持ち込まれたそうです。
  他の対応策として、海底に石やブロックを入れて堤防(潜堤といいます)を波による流出を防ごうとされました。しかた対策むなしく、砂の流出は止まっていません。現在、海面上に堤防が建築中です。これは海岸の砂の流出対策かどうかわかりませんが、この人工的な堤防が白砂の海岸では異質な存在に見えました。
  白良浜は、もともとは自然にできた白い砂浜だったのです。ところが、現在では、人が手を入れなければ砂浜が維持できない状態となっています。堤防だけでなく、砂自体が、人工的に補われたものです。しかし、これが、白浜という有名な観光地の現状でもありました。できれば、自然状態でこのような浜が残ればいいのですが、都市化した観光地では、なかなか難しい問題です。
  国民の祝日「海の日」を記念して、1996年に運輸省(当時)認定を受けた「日本の渚・中央委員会」が、関係公官庁の後援を受けて「日本の渚・百選」を選定しました。「日本の渚・百選」は、自然の海岸だけを選ぶのではなく、環境保全などの対策や、生活者との深い関わり合いをもっていることも考慮されて選ばれています。ですから、人工的に維持されている白良浜も、「日本の渚・百選」に選ばれています。
  白良浜は白浜でも有数の観光名所なので、平日にもかかわらず、駐車場がいっぱいで、車を停めることができずに困りました。仕方なく、白浜周辺の他の名所を見ることにしました。その日は白浜に泊まることになっていたので、夕方になって白良浜にいくと、公営の駐車場が空いていて停めることができました。夕刻の浜辺を、散策することができました。そして、白砂の行方に思いを馳せました。


■Letter to Reader 人工と自然・雨不足

・人工と自然・
人工の砂浜だとわかっていても、
やはり白砂の海岸は見事でした。
さすがに「日本の渚・百選」に選ばれているだけのことはあります。
現在では人手によって維持されていますが、
かつては、自然のままの白砂が広がっていたのです。
それを思うを自然の偉大さを感じます。
ここ20年は、人工的に多くの労力を使って
白砂の浜が維持されています。
そもそもは陸側に住む人間の都合で後背地から
新しい砂が供給されないことが、
砂浜消失の大きな原因だったはずです。
しかし、そこは人間が住んで暮らし、
観光産業を営まなくてはなりません。
どこか論理矛盾しているような行為をしているように見えます。
でも、人工の砂浜を守る努力は、
今後も続けなければなりません。

・雨不足・
北海道は4月になって、
雨がほとんど降らない天気が続いていました。
晴ればかりではないのですが、
曇っても雨が降りませんでした。
もちろん晴天の日も多かったのです。
今週中ごろになって雨が降りだし、
雨不足の心配はなくなりました。
北海道は、春は雪解けの時期なので、
農業用水は飲料水の心配はないはずです。
でもはやり、雨が降らないと
心なしか、木々の元気がないように見えます。
私は、雨の日も好きなのですが、
春はやはりぬけるような快晴の日がいいです。
4月の前半は晴れが多く、春を満喫していたのですが、
ここらで一休みでしょうか。
雨の情緒を楽しみましょう。