地球地学紀行

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Essay ■ 4_74 カルスト:沖縄2
Letter■ 金剛石林山・パワーポイント
Words ■ 南の木には精霊が宿る


(2007.04.12)
  沖縄には石灰岩がたくさんあります。そのうち、前回は、新しい時代の石灰岩を紹介しました。今回は、古い時代の石灰岩を紹介しましょう。


■Essay 4_74 カルスト:沖縄2

 沖縄本島の北部は、山地が多く、深い森がある地域となっています。「山原」と書いて「やんばる」と読みます。国の天然記念物に指定されている「ヤンバルクイナ」のヤンバルは山原から由来しています。山道を走っていると、道路には「ヤンバルクイナ注意」の看板があります。
  ヤンバルの山には、ごつごつしたものや、こんもりとした山など、不思議な形のものを見かけます。実は、この不思議な形をしたものの多くは、石灰岩からできています。
  この石灰岩は、前回紹介した「琉球石灰岩」と比べると非常に古いものです。時代は、古生代二畳紀から中生代三畳紀にかけてのものです。そのような石灰岩からは、アンモナイトなどの古い時代の化石が見つかっています。
  北部の石灰岩は、古いだけでなく、現在の位置にたどりつくのにも少し変わった履歴をもっています。オリストストロームと呼ばれる大規模な海底地すべりのような仕組みで巨大が石灰岩のブロック、土砂の中に埋まりこんだものです。ですから、石灰岩ができた時代と周りの土砂の形成された時代が違っています。
  このようなオリストストロームという仕組みは、日本列島ではよく見られるもので、付加体と呼ばれる地質構造となっています。
  今回、沖縄本島の最北端にあたる辺戸岬を見下ろす山に行きました。「金剛石林山」と呼ばれるところで、公園として整備されています。ヤンバルの道を、ながながと登った頂上付近にあります。マイクロバスでの送迎があり、バリアフリーのコースもありますので、子供や車椅子などの人も見学することができます。
  公園は、石林と名称にあるように、中国の石林と似たような景観をもっています。石が林立したり、奇岩が多数あったりします。
  実は、オリストストロームに巻き込まれた巨大な石灰岩のブロックが、侵食によってカルスト地形をつくったものです。沖縄の北部の西海岸付近には、このようなオリストストロームが多数ある地質帯なのです。その一つとして金剛石林山があります。
  カルスト地形とは、石灰岩地帯が、雨水によって侵食を受けたものです。琉球石灰岩でも、カルスト地形がありましたが、古い時代の石灰岩地帯でもカルストがあります。
  石灰岩地帯に形成されるカルスト地形は、日本の本州でも多くみらますが、温帯地方の特徴を持ったカルストです、ところが、辺戸では、熱帯のカルストとなっています。熱帯カルストの特徴は、円錐カルストで、こんもりとした山になります。沖縄本島の北部には、このような円錐カルストがよく見られます。それが奇妙な山の正体でした。
  金剛石林山にも、円錐カルストが高い頂きとしてあります。そして、そこから辺戸岬から北の海を見渡すことできます。金剛石林山は、沖縄本島の北端にあたり、熱帯カルストの北限ともなります。コックピットと呼ばれる星型に侵食された深い窪地や、針の塔のようにとがったピナクルなども見られます。
  奇岩の織りなすカルスト地形が、ソテツやガジュマロなどの熱帯植物からなるヤンバルの中にあります。非常に不思議な熱帯の景観を堪能しました。


■Letter to Reader 金剛石林山・パワーポイント

・金剛石林山・
金剛石林山の金剛とは、非常に硬いことをいいます。
金剛石とは、もっとも硬い結晶であるダイヤモンドのことです。
金剛砂とは、研磨剤に使われるやはり硬いカーボランダムのことです。
石灰岩は、方解石という結晶かできています。
方解石は、実はそれほど硬くはありません。
カッターナイフの刃で、傷つけることができます。
ですから、表現としては「金剛」は、
地質学的には、ちょっといただけませんが、
固有名詞ですので、あまり「堅いこと」をいってもしかたがありません。
金剛石林山の麓のヤンバルには、
とてつもなく大きなガジュマロの木があります。
非常に大きく、枝から地面に降りてきて根になった
気根と呼ばれるものが、多数形成されています。
沖縄では、大きなガジュマロには、ブナガヤー(木の精)が
宿っているといわれています。
本州や北海道ではみられない、不思議な景観の中に立ち、
木の精が存在するような感じを味わいました。

・パワーポイント・
いよいよ学校が本格的に始動しました。
私の講義も、はじまりました。
今年から私はコンピュータのプレゼンテーションソフト(パワーポイント)を
利用してある講義を行うことにしました。
今まで学会や研究会ではパワーポイントは当たり前に使っていましたが、
講義では意識的にレジメと板書だけにおこなっていました。
そして、この度、6年目にしてはじめてパワーポイントを講義に導入します。
それは、今後PCレターを使った講義への伏線でもあります。
PCレターを使うと講義をよりアトラクティブにそして記録できます。
しかし、講義をそのまま公開するのは、なかなか困難です。
なぜなら著作権や個人情報などの配慮すべきことが色々あるからです。
そのために、講義や記録ファイルを見直す必要もあるでしょう。
すると簡便さが薄れていくような気がします。
パワーポイントは多分非常に便利だと思います。
一度使うと多分非常に便利で病み付きになるかもしれません。
まあ、ほどほどに、そして冷静に使っていきましょう。