地球地学紀行

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Essay ■ 4_72 城川へ:そこには、きっと固有の大地がある
Letter■ 日陰者として・城川自然ロッジ
Words ■ いいものは残って欲しいのだが


(2006.09.14)
  私は毎年城川町にきています。もう14年近くなるでしょうか。今年も9月2日から6日まで滞在しました。そのとき感じたことがあります。


■Essay 4_78 城川へ:そこには、きっと固有の大地がある

 今年も城川に来ました。城川とは、四国愛媛県西予市の中にあります。山奥の小さな町です。その城川町でもさらに奥の窪野というところにある公園施設の一つとして地質館があります。地質館の近くにもとは窪野小学校の跡地に、城川自然ロッジがあります。
  今年は、4泊しましたが、正味3日間の仕事時間となりました。その間は、地質館とロッジだけの往復だけでした。今回の仕事は、地質館のデータベースの作成でした。城川町の地質データベースは、すでに完成していました。しかし、3年前に市町村合併で西予市になったことで、西予市の地質館としてカバーすべき地域が広くなりました。
  城川町では、野外での地質観察ポイントをもうけて、その地点の様子や岩石の写真などを紹介していました。そのような観察ポイントを、合併した他の4つの町でもみつけて、作成していくことにしました。そのため、2年間、野外調査をして、データを集めてきました。
  城川町は、地質学的に非常に面白く、見学すべきところもたくさんありました。そのため地質館ができたのです。城川町と比べると、合併した他の市町村は、地質学的には見劣りがしました。ですから、調査をはじめるまでは、本当に見るべき観察ポイントがあるだろうか心配していました。
  しかし、そんな心配は杞憂にすぎませんでした。
  詳しく地域の地質を見ていくと、そこには必ずその地を構成している岩石や地層があります。それは地域によって固有であり、その地域の地質が地域の自然をつくり、風土を生んでいます。ですから、なんとか岩石のでている露頭さえみつければ、それなりの観察ポイントにすることができました。
  その中には、第一級の構造線(仏像構造線)の露頭を見つけることができました。また町内には、四国カルストの石灰岩地帯や、古生代の海底に噴出した溶岩、深海底に堆積した海のプランクトンの死骸からできている層状チャート、きれいに重なった凝灰岩の地層、などなど、地質学的に面白く多彩なポイントが、海や山で見ることができることが判明しました。
  本当はもっと各地を詳しく調査していきたかったのですが、研究費で定められた期限が今年まででした。ですから今年が一応の区切りとなります。
  今回、それらの集大成として、調査結果をデータベースとしてホームページ上で公開できるようにすることが、城川に出かけた目的でした。残念ながら、時間不足と画像データの撮影が残ったため、完成できませんでした。あとは、こつこつと、つくりこんでいきたいと思っています。


■Letter to Reader 日陰者として・城川自然ロッジ

・日陰者として・
どの地域にも固有の自然があります。
自然は、その地の土壌、気候と地形に大きく左右されます。
そして土壌や地形は地質が大きく関わっています。
地質が、その地の自然に大きなかかわりを持っています。
地域の自然を理解するには、地質の理解は不可欠といえます。
西予市を歩いて感じることですが、
城川町の人は地質で有名なところですから、
地質に関心を持っています。
しかし、他の地域の人は、地質に関して人は非常に無関心です。
ある生物がいなくなると、どこでも騒ぐのですが、
地質学的に第一級の露頭が、
コンクリートに覆われようとしているのですが
だれも関心を持ちません。
地質は日陰者の存在のようです。
縁の下ではなく地下の力持ちとして
ばんばるしかないのですかね。

・城川自然ロッジ・
私がいつも泊まっている城川自然ロッジは、
かつては、第三セクターによる運営でした。
しかし、赤字でいったん閉鎖したのですが、
今年の8月から再度運営形態を変更して再開しました。
非常に雰囲気のいいロッジで、私はここが大好きです。
ただ、集客のためにはハンディがあります。
国道からは離れているし、
奥まっているために観光地への中継地点でもありません。
ですから、どうしても集客力がありません。
それに町内には宝泉坊温泉があり、そこは交通の便もよく、
昨年の11月から大きな保養施設へと改築されました。
ですから、どうしても観光客はそちらに向かいます。
今回泊まったとき、ロッジの人といろいろ話をした。
いい人で、なんとか存続してもらいたいものです。
一人の人間の希望、努力には限界がありますが
微力ながら影で応援したいものです。