地球地学紀行

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Essay ■ 4_71 マントルからの眺望:アポイ岳
Letter■ 興味・キツネ
Words ■ 山は高きが尊からず


(2006.08.10)
 アポイ岳に登りました。アポイ岳はマントルの岩石がめくれ上がっているところです。そんなマントルからの眺望を楽しみました。


■Essay 4_71 マントルからの眺望:アポイ岳

 2006年8月3日にアポイ岳に登りました。家族連れだったので、露岩がみえ、眺めのよい馬の背までいければいいと思っていました。
 予想に反して、いちばん体力のあるはずの長男が、登りはじめて、すぐに疲れたといい出しました。いつもは一番元気に登っています。実は、長男は夏休みに入る直前に、夏風邪をひいて体調を崩していたのです。しかし、今回の登山に備えて、体調を整えていたのです。プールにも行っても大丈夫でした。ですから、体力は回復していると思っていました。でもまだ、体調不十分だったようです。
 無理せず、いけるところまで行こうと、長男の様子を見ながら休み休み登りました。普通なら1時間ほどで登れるとこを、2時間近くかけて5合目の休息所までたどり着きました。そして、そこから馬の背が見えたら、少し気力が回復したらしく、なんとか7合目の馬の背まで登ってくれました。そこを目的地としていたので、登りはもう終わりです。そこで昼食をとり、ゆっくり休みました。風があったのですが寒くはなく、快適でした。日差しも弱く、爽快な気分で昼食をとりました。それに平日だったので、登山客も少なく、のんびりと眺望を楽しました。
 馬の背で、私は、景色を見て、岩石を見て、写真撮影をしました。子供たちも、景色や、虫を見つけては、一生懸命撮影していました。
 私は、大学の4年生のころにアポイ岳には登っています。そのあと調査で何度かアポイ岳周辺には入っています。アポイ岳の頂上からの眺望は木が茂っていてよくないのを知っていました。ですから、馬の背あたりが岩石も露出し、景色がいいと思っていました。アポイ岳周辺には、近年には2度ほど来ていますので、石も色々見ていました。ですから、今回はアポイ岳に登って、周囲の景観を見ることが、一番の目的でした。
 私は、山の頂上に登ることに、あまり興味がありません。その山で、自分が一番興味のあるところや、一番素晴らしいと思うところを、自分なりに味わえばいいと考えています。ですから、今回も馬の背まで来て、岩石や景色が見れればいいと思っていたのです。
 アポイ岳には、今や花の山として多くの登山客が訪れます。アポイ岳の固有種も多く、高山植物群は国の天然記念物に指定されています。しかし、私にとっては、岩石に興味があります。アポイ岳周辺は、もともとマントルにあった岩石が、めくれ上がって地表に出ているところなのです。ですから、アポイ岳を登るということは、地表を歩きながら、マントルの中を歩いていることになるのです。実際の地球深部、数10kmにあるマントルへの旅行は不可能です。でも、ここアポイ岳なら、歩いてマントル旅行ができるのです。
 アポイ岳は、海岸近くから立ち上がっている山なので、標高が低い(810.6m)割りに、その眺望がよく、登山したという充実感のわく山です。そして、なんといっても、マントルから、地殻、海洋、大気、生物という地球の重要な要素を、眺めることができます。こんな経験は、そうそうできません。今回はそんなマントル旅行を心いくまで楽しみました。



■Letter to Reader 興味・キツネ

・興味・
下りで、長男は膝がわらって、疲れが足に来たようです。
本当に不調だったようです。
なんとか、駐車場にたどりついたとき、
もう足が疲れて歩けないといって、車の中で座り込んでいました。
しかし、そこに突然、鹿が現れました。
周囲には川遊びする人たちや、車も何台もありました。
そんなところが鹿が出てきたので、皆驚いていました。
長男は、自分が一番に見つけたのだといって、
足ががくがくなのも忘れて、車から飛び出そうとしてました。
追いかけてもダメだとなだめて、車から見るだけにしました。
子供は目先の興味のほうが、肉体より反応するようですね。
大人では自分の体をまず考えてしまうのですが、
それは老いなのでしょうかね。

・キツネ・
アポイ岳の登山の前日、一つ南側の川である幌満川に入っていました。
私は石を見るために、子供たちは水遊びをするためです。
そこで、2組のキツネを見かけました。
一匹目は、幌満川を登り出してしばらく行った道路脇の側溝にいました。
近づくと側溝の中に隠れていました。
まだ子供のキツネでした。
親がどうしたのか心配だったのですが、
下りの時、同じあたりに来ると、親子連れのキツネを見かけました。
多分登っていくときに見た子供のキツネとその親キツネでしょう。
親がエサを捜して行ってる間、その側溝に身を隠していたのでしょう。
もう一組のキツネも上流で見かけました。
車の前に子キツネを見かけたので車を止めて眺めていました。
しばらく眺めていたら、後からもう一匹のキツネが近づいてきました。
多分子キツネを心配している親キツネでしょう。
盛んに小さいですが鋭い警戒の鳴き声を出しています。
でも、子キツネは、車に興味があるようで、車の前から、なかなかどきません。
しばらく見ていたら、やっと道路わきの茂みに入っていきました。
それと共に親も、キツネの子育ても
そろそろ終わりに近づいているのでしょうか。
今回の旅では、こんな野生に接することができました。