地球地学紀行

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Essay ■ 4_69 車石と節理:道東の旅1
Letter■ 一応順調・好き嫌い
Words ■ 丸いか四角いか、それは環境による


(2006.05.11)
 5月3日から7日までの休日を利用して、北海道の東部を調査してきました。その調査の話をしましょう。


■Essay 4_69 車石と節理:道東の旅1

 例年では、札幌はゴールデンウィークには桜前線の通過するころです。春の花々が咲きはじめる時期になります。しかし、今年の北海道の春は遅く、雪解けも、桜の開花も、農作業も遅れています。さらに寒い道東では、春はまだ浅く、世界遺産で観光客を集めている知床も、峠が雪のためゴールデンウィーク中は通行できませんでした。それ以外の主な幹線道路の路面には雪はなく、ノーマルタイヤでの通行が可能でした。しかし、朝夕の冷え込んだときには、凍結注意です。
 さて、そんな道東の旅で、今回特に見たかったところが、2ヶ所ありました。いずれも以前一度は訪れているところなのですが、再度じっくりと見ておきたいところでした。そのひとつは、今回紹介する根室にある巨大な車石というものです。
 根室市街の南ににある花崎港の海岸に、「根室車石」と呼ばれる国指定の天然記念物があります。ここは、納沙布岬へ行く道からは少しはずれ、観光地としては孤立しているので、人が訪れにくいところです。特に私がいった日は、霧と雨の降る肌寒い天気でしたので、さらに訪れる人が少なかったのかもしれません。しかし、私にとっては、2度目の訪問ですが、なかなか楽しいものとなりました。
 駐車場から灯台の脇の道を歩いていきます。この灯台は明かりだけでなく、霧笛をならします。根室地方は霧の出やすいところですから、霧笛が必要となります。私が訪れたときも、霧がでていましたので、霧笛が大きな音で鳴らされていました。その音は、耳が痛くなるほどです。
 そんな霧笛を聞きながら、階段を下りて海岸につくと、そこには異様な景観があります。黒いごつごつとした岩場があります。なかでも目を引くのは、ひときわ大きな丸い石です。この丸い巨大な石が車石と呼ばれるもののひとつです。
 見慣れてくると、その周辺にも丸い石があちこにあることが分かります。車石というのは、直径1mから3mほどの丸い石のことで、大きなものでは、7.5mにも達します。丸い石が海岸沿いに広がっています。
 この石は、枕状溶岩と呼ばれるもので、マグマが海底や海底に溜まった地層の間に入り込み、急激に冷やされてできた形です。アルカリ成分をたくさん含む玄武岩質のマグマ(アルカリ・ドレライトという種類のマグマ)で、1000度以上の高温で海底に噴出しました。その時期には根室層群の中の浜中層とよばれる地層が海底に溜まっていました。白亜紀終わり頃の6500万年前にマグマの活動が起こりました。
 車石には、自転車のタイヤのスポークの位置に放射状の割れ目(節理と呼ばれます)が多数できています。ですから、丸さがより強調され、車の車軸のようにみえます。このような丸みと割れ目から、ここの石が車石と呼ばれているのです。
 そして、車石をつくった溶岩は、花崎港の海岸付近まで連続しています。観光客には多分そちらまで足は伸ばさないようなところです。もちろん私はそちらも見に行きました。
 すると、こちらでは、溶岩は大きな塊となり地層に入り込んでいるようです。その溶岩の割れ目は柱状(柱状節理)で、さらに垂直に立った柱を水平方向の小さな割れ目がたくさんできていました。このような割れ目を板状節理あるいは平行節理と呼んでいます。同じマグマの活動なのですが、どのような場所にマグマが噴出し、そのような冷え方をしたのかによって、その見かけが大いに変わっていきます。それも不思議なことですね。
 車石の付近では、白亜紀の海底で起こった火山活動と、そこの溶岩が冷えるときにできたいろいろな節理を見ることもできるのです。



■Letter to Reader 一応順調・好き嫌い

・一応順調・
今回の道東の調査の日程では、
一番みたいところを訪れる予定の5日が雨でした。
少々残念でしたが、仕方があません。
天気ばかりは、どうしようもありません。
しかし、道北の時の旅に比べて、
今回の道東の旅では、
同じ時期で、雪の多い寒い冬だったのですが
高い山に入らなかったし、
河川も深い山に源流をもたないので、
雪解けによる増水はそれほどではありませんでした。
ですから、川の調査もできました。
しかし、一応予定通りにコースを進むことができました。

・好き嫌い・
今回の調査も家族連れでした。
海岸沿いの調査でしたので、
海沿いの旅館やホテルなどに泊まりました。
すると、夕食には大抵、魚介類が豊富に出されます。
何度も、ホタテやカニが食べきれないほど出てきました。
残念ながら、我が家の長男は貝とカニエビが食べられないのです。
アレルギーではなく、単に嫌いで食ないのですが、
一口くらいは大丈夫なのですが、あとはもうだめです。
ですから、今回の旅行の食生活では、
長男にとってはなかなか大変なものだったようです。
最終日は十勝平野の池田のペンションに泊まりました。
牛肉とカニがメインの夕食で、長男はもちろんステーキを食べました。
聞くところによると市場価格で100g980円もするような
黒毛和牛の肉を使っているようです。
我が家では、安い肉やオージービーフをもっぱら食べていますので、
このような高級な肉はめったにお目にかかれません。
長男は、それがとろけるように軟らかく
非常においしかったらしく、いたく満足してしていました。
好き嫌いがあると旅の楽しみも半減してしまいますね。