地球地学紀行

表紙に戻る


Essay ■ 4_66 神々の降臨した柱状節理:九州1
Letter■ 風邪・異常気象
Words ■ 目的は目標でもあり、達成できないことも多い


(2006.01.19)
 2006年1月5日から12日まで、九州を巡りました。今年は九州も寒波のせいで積雪があり、予定通り見れないところがありました。今回は、高千穂峡を紹介しましょう。


■Essay 4_66 神々の降臨した柱状節理:九州1

 阿蘇山は、日本でも有数の大きなカルデラを持つ火山です。現在のカルデラの壁をつくっている外輪山を東に乗り越えると、かつてあったであろう阿蘇山の火山の裾野にでます。なだらかな傾斜の斜面に、深い谷が刻まれています。そんな位置に高千穂峡があります。
 高千穂峡の谷は、柱状節理が作り上げています。柱状節理とは、マグマや岩石が冷めるときにできる割れ目です。マグマが固まり、熱い岩石が冷めるとき、少し体積が減ります。そのときに、岩石に割れ目ができます。その割れ目は、冷める方向に対して垂直にできやすくなります。高千穂峡の柱状節理は、垂直に立っていますから、上下から冷えたことになります。
 柱状節理の上部では、柱状ではなく、放射状の節理もあります。ここでは、表面に近く、丸くなるような冷え方をしたようです。自然の造形ですから、同じようでも、2つとして同じものはありません。
 垂直の柱状節理は、川によって侵食されていくと、柱が一つ一つ倒れていきます。ですから、切り立った崖として侵食され、深い谷ができます。高千穂峡も、そのような作用でできました。
 この柱状節理は、阿蘇山の火山のふもとにありました。ですから、阿蘇の火山によってできたものです。柱状節理をよく見るとそこには、黒っぽいガラス状の石が延びて含まれています。これは火山の火砕流によって放出された軽石などが、熱のために溶けてガラス状になったものです。火砕物が溜まった時の圧力で、平たく伸ばされたものです。このような岩石を溶結凝灰岩といいます。柱状節理は、阿蘇の火山噴火で火砕流が起き、火砕物が溜まり、再度熱くなり固まり、それが冷えたときできたものです。
 阿蘇山は、過去に4度の大噴火を起こしています。最初は26.6万年前で、2度目が14.1万年前、3度目が12.3万年前、4度目が8.9万年前です。3度目と4度目の大噴火の時、火砕流が高千穂を襲い、火砕堆積物を堆積しました。これが、今では柱状節理となっています。
 火砕流は、マグマが地表付近で大爆発して、膨張したものが、流体として熱いまま流れていきます。600度から1000度ほどの熱い流体で、高速で流れていき、山があっても乗り越えて、遠くまで達します。
 阿蘇山の4度目の火砕流は、非常に大規模で広範囲に及びました。この火砕流は、南は人吉盆地まで達し、南以外はすべて海にまで達しています。北は海を越え山口県宇部市、東は五ヶ瀬川の河口から海へ、西は海を越え、島原半島、天草下島にまで達しました。その規模は、火砕流だけで、九州を半分近くを覆うような大火砕流だったのです。また、火砕流だけでなく、火山灰も大量に放出し、北海道東部でも15cmもたまっています。
 そんな大噴火によって形成された高千穂峡ですが、今ではそんなことに気づく人はどれほどいるでしょうか。高千穂峡を橋の上から見下ろすと、そこには切り立った崖と、音も無く落ちる滝、そして静かな水面という、神秘に満ちた景観をみせてくれます。時折静かな水面をボートが行きかい、これが現代であるということを、思い出させてくれます。こんな景観の中で、いろいろな神話が生まれたのも納得できます。



■Letter to Reader 風邪・異常気象

・風邪・
九州調査から帰ってすぐ、私は風邪でダウンしました。
長男は、旅行中の10日の夜にダウンし、
救急車で運ばれ治療を受けました。
長男はお腹に来る風邪で激しいを嘔吐を伴いました。
私は、一般的な風邪の症状で、
悪寒から、周期的な発汗でした。
私は、食欲も落ちることなく
発汗による不調だけで、4日ほど寝込み、直りました。
この時期の旅行なので
インフルエンザの予防接種は家族全員で受けていました。
出かける前に、次男と家内が風邪を引き、
旅行中に長男が、旅行後に私が、
それぞれ別の風邪を引いたようです。
私の風邪は、ほぼ治ったのですが、
ただ、咳がなかなか抜けません。
私は、いつも風邪を引くと咳が抜けませんが、
今回もそうでした。
教員にとって、この咳は大問題です。
講義が非常にやりづらいですし、
学生も多分聞きづらい講義となります。
こんなとき、教員というのは、非常につらい仕事であると思います。
講義を他の人に頼むことができません。
その時期の講義の全体を掌握しているのは、本人だけです。
急遽代役を立てることはできません。
教員として、研究者や教育者としての素養も重要ですが、
健康であることが非常に重要となります。
私は、怪我だけはしないように、
スポーツの旅行も注意し選択しています。
怪我はかなり予防できるのですが、
ただ、病気だけはなかなか予防し切れません。
病気になりたい人はいません。
ただ、教員は多くの学生の前で話し、
対面するものですから、
どうしても風邪などの伝染病にかかりやすい環境にいます。
どう注意しても、1、2年に一度は風邪にかかります。
そのたびに私は咳に悩まされます。
困ったものです。

・異常気象・
雪の九州という異常な気象条件のもとでの調査となってしまいました。
6日に島原から、雪の中、ノーマルタイヤで、
雲仙温泉までなんとかたどり着きました。
しかし、濃霧で視界が利かず、
普賢岳を眺める有料道路も通行規制がかかっていました。
ですから、スリップしながら命からがら降りてきました。
残念ながら、普賢岳を近くから眺めることはかないませんでした。
また、長男の急病のため、後半の目的であった
日南海岸の四万十層と桜島は
ほとんど見ることができませんでした。
11日は宮崎の旅館から桜島の旅館への移動。
12日は、旅館から鹿児島空港までの移動だけでした。
まあ、長期の旅行では、こんなこともあるでしょう。
残念ですが、これも旅の思い出としておきましょう。