地球地学紀行
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Essay ■ 4_34 尻別川:夏の道南2
Letter■ 湧水・野菜の季節・夏が忙しい
Words ■ 北海道の夏は涼しいです

(2003年7月31日)
 今回の道南の旅のいちばんの目的は、尻別川の調査でした。周辺には湧水で有名な羊蹄山もあり、きれいな川を期待していました。さてさて、その結果はどうだったでしょうか。


■Essay

 尻別川は、126kmしかない短い一級河川です。道南ではいちばん長い川ですし、流域にはニセコ連山や羊蹄山、さらに上流には洞爺、徳瞬瞥、無意根などの火山が連なっています。そこは、峨々としてた深い山並みとなっています。蹄山には、多くの湧水あることで有名です。京極町では水を商品として、売っています。もちろん、湧水は地下から湧いているので、冷たく綺麗なのですが、それが川に流れ込むと、川もきれいなはずです。
 今回の道南行では、尻別川は、河口、下流、中流、上流の4ヶ所の川辺で調査しました。
 上流の水はきれいでした。川原には、バッタや川原の草花、そして釣りをする人の姿もありました。ところが、上流以外は、川の水が汚いのです。川原の石が、コケではなく、水垢のような汚れで、ぬるぬるしています。乾いた石は真っ白な汚れがついていて、石の模様もよく見えなくなっています。とっても泳げるような水ではありませんでした。
 うちの子供たちも足だけはつかっていましたが、全身ぬらして水遊びをするような気も起きませんでした。石を集めて調査はしたのですが。下流と中流、特に下流の石はぬるぬるして、あまり気持ちがよくありませんでした。調べる時には、よくタワシで洗わなければなりません。尻別川の中流には、ラフティングをするようなところもあるようなのですが、私は、この川の水につかる気がしませんでした。その周辺のとった石も綺麗ではありませんでした。
 羊蹄山周辺は、いくつもの湧水があり、京極町では名水100選にも選ばれています。湧水がひとつの観光となり、かたやその観光の影響で川が汚れるとなると、なんとなく納得がいかないものを感じました。同じ川が、中流、下流になると、周りの景色は、緑あふれる山や田園風景なのに、川の水だけがこのように汚れているのは、川がちょっとかわいそうな気がしました。
 汚れている理由は、定かでないのですが、下水処理設備がなく、家庭用排水がそのまま川に流されているのではないかと思われます。日本で下水処理をしている地域は、人口密集地の一部でしょう。農村地域では、生活廃水は、浄化槽を経て、川に流れ込むのでしょう。これは、田舎では当たり前のことでしょう。
 ただ、尻別川の流域には、ニセコ、羊蹄山、ルスツなどがあり、スキーと温泉、遊園地などの観光地も多いため、関連施設が多いようです。このよな観光に力をいえているせいで、もしかすると川を、より汚しているのかもしれません。
 尻別川が特別汚いのではなく、たぶん、このような川は、日本では、ごく普通にみられる川、ごくありふれた川なのではないでしょうか。四万十川を春に見て、尻別川にも同じようなイメージを抱いて出向いたおかげで、このような気分になったにすぎません。私も通りすがりのものですから、根拠もなく、批判めいたことをいうのはよくないと思います。
 水は、人間にだけでなく、生物に不可欠のものです。そんな人間の生活とは切っても切れない水の最終到達地が、川なのです。だから、川を見たらその地の暮らしぶり、あるいは、生活基盤が何によっているかが、ある程度想像つくのかもしれません。尻別川流域は、農業と観光なのでしょうか。



■Letter to Reader 湧水・野菜の季節・夏が忙しい

・湧水・
この年の夏は、例年になく、涼しいのですが、
羊蹄山の周辺にいるときは、天気もよく暑い日になりました。
子供たちは、汗だくで走り回っていました。
そして、湧水があるたびに、
ペットボトルに冷たい水を汲んでは、飲んでいました。
もちろん大人も飲んでいました。
いつも旅行に出かけると、飲み物をコンビで買うのですが、
羊蹄山の周辺を巡っているときは、
飲み物を買う必要がありませんでした。

・野菜の季節・
羊蹄山周辺は、農産物の産地でもあります。
ジャガイモ、キャベツ、アスパラガス、トウモロコシ、かぼちゃ。
私が行ったときには、ジャガイモの淡い紫を帯びた白い花が
あちこちで見かけられました。
イチゴとサクランボのもぎ取りもありました。
海沿いの雷電温泉に、2泊目は宿泊したのですが、
ここは雷電スイカで有名です。
これから北海道は、野菜や果物がおいしい季節です。
毎日、露地ものの野菜がいろいろ食べられます。
楽しみな季節です。

・夏が忙しい・
調査には行きたし、でも、時間がない。
仕事があると、自由に時間を使って調査ができません。
夏は北海道、海外にもいきます。
学会もあり、他の共同研究にも参加しなければなりません。
ゼミの夏合宿、採点、成績など夏休み中の公務もあります。
ですから、夏休みが、私にはいちばん忙しい時となります。
こんな忙しさの合間を縫って、
調査するから、その味わいも深くなるのかもしれません。