地球地学紀行
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Essay ■ 4_33 利別川:夏の道南1
Letter■ 夏が忙しい・調査の成果
Words ■ 北海道の夏は涼しいです

(2003年7月24日)
 昨年(2002年)12月に訪れた道南地方に再度でかけました。昨年暮れの調査は雪のために、十分できなかったからです。当たり前のことですが、北海道の冬は雪があって地質調査はできないのです。でも、少しくらいはという期待のもとに出かけたのですが、惨敗でした。今は夏です。去年の雪辱を果たすためにいきました。


■Essay

 瀬棚郡今金町(いまがねちょう)美利河(ぴりか)というところにある温泉宿泊施設に泊まりました。昨年来た時も、ここに泊まりました。
 昨年は冬だったので、ホテルの裏山は、スキーのゲレンデになっていました。今年の夏は、今北海道ではやっているパークゴルフのゲレンデコースとなっていました。ホテルの正面には、平地のパークゴルフ場があります。こんな小さなところに、2つものコースがあるというのは、すごいブームだということです。でも私が泊まったときは、平日で天気が悪かったせいか、だれもコースにはいませんでした。温泉だけでは、今や集客力がなくなったせいでしょうか。どこにでもあるパークゴルフ場をつくるということは、他の施設と差別化がはかれないような気がしますが、大きなお世話でしょか。
 さて、今金町に再訪したのは、一級河川の利別川(としべつかわ)の河川の石ころ(転石)の調査と、ピリカカイギュウの化石をみること、そして、河川礫としてマンガン鉱石やメノウの転石が採集するというのが目的でした。
 利別川では、上流と河口付近で石ころの統計的採集をする予定でしたが、河口では、石がたまっているところがなく、砂だけでした。砂の採集をして終わりました。また、カイギュウは、展示室が金・土・日曜日の3日しかやっていません。私は木曜日に行きました。ですから、今回も見ることができませんでした。今金の有名な石ころも、河口で転石がなかったので、拾えませんでした。でも、地元のメノウは、物産店で磨いたコースター状の板を2つ購入しました。これで良しとしました。川の各所で、転石を探せば、目的のものを見つけられたかもしれませんが、まだ先のある旅でしたのであきらめました。
 この地での一番の目的は、利別川の調査でした。利別川は、十勝川の同名の支流と区別するために、正式には後志(しりべし)利別川と呼ばれています。源流を長万部岳とする流路延長が80kmしかない短い川です。短い川ですが、上流へいくと、山の奥深くでいかにも源流に近づいているというようなところでした。でも、今回は源流を調べるのが目的ではありませんでしたので、できるだけ上流まで林道を進み、林道の橋の下の河原で調査をしました。
 明け方まで降っていた雨で、川に下りるだけで、草露で靴の中までぐっしょり濡れてしまいました。冷たかったですが、心地よいものでした。深山幽谷という気分にさせられるところでした。
 教科書どおり、上流では、石の大きさは不揃いで、角張っています。そんな当たり前のことを、これからしばらく研究していくつもりです。地域の自然そのものをデータベースとしたいと考えています。もちろん科学的原理の追及は重要ですし、行なうつもりです。素朴に自然を感激できるようなデータベースを構築したいと考えています。
 まだまだ、途上ですが、北海道のすべて一級河川の石ころと、北海道の全火山、北海道の河川と海岸の砂のデータベースをつくりたいと考えています。数年かけてつくり上げていくつもりです。その利用方法や、科学的な部分も、遊びの部分も、これからいろいろ考えながら、少しずつ充実していくつもりです。
 いつの頃からでしょうか、私は、人里はなれた山奥にくるとホッとした気分になります。最初は一人で山に登ったりするのは怖かったのですが、大学生のころ、自分の好きなところを、好きのときに、好きなように登りたいと思うようになり、単独行の山登りをはじめまして。その後、地質学を目指す学生として、調査は一人でするのが当たり前となり、深い山をひとりであるくようになりました。
 天気が悪いときは嫌な時ももちろんありましたが、気分のいい時、すばらしい沢を登っている時など、渓流の奥深くに滝や野生で生物に出会ったとき、こんな景色、こんな気分を独り占めする幸せを味わっていました。そのころからでしょうか、人里はなれた山にくると、なぜかホッとした気分になるようになったのです。



■Letter to Reader 夏が忙しい・調査の成果

・夏が忙しい・
とりあえず、昨年の雪辱は半分くらいは果たせました。
でも、まだまだ、心残りがあります。
出かけるたびに、その地は、いつの日にかまた来たいという気持ちが残ります。
こんな地が増えていきます。
調査が目的となると、ある程度の収穫があると、
次の目的の地へと進まなければなりません。
とどまることはできないのです。次を目指さなければなりません。
北海道は広いです。
上で述べましたような目的を数年で果たすには、
何度も調査にでなかればなりません。
でも、限られた時間、許された時間で行なわなければなりません。
本当に目的が果たせるのでしょうか。
でも、調査していて楽しいのがいちばんです。

・調査の成果・
今回の道南の調査では、次のような成果をあげました。
デジカメによる撮影は、1,269枚で、
一部動画を含みますが、1.6Gbになりました。
調査した川は、国縫川、後志利別川、尻別川で、
国縫川以外は、目的の一級河川です。
石の調査は、8ヶ所でしました。
そのうち統計的調査は、5ヶ所でおこない、700個以上の資料を採集しました。
砂は、15ヶ所で採集しました。
火山の撮影は、室蘭岳、有珠山、昭和新山、羊蹄山、尻別岳、
ニセコアンヌプリ、 雷電山、洞爺湖中島の8山でおこないました。
支笏湖周辺の火山を、最終日に撮るつもりでしたが、
小雨で霧のため、撮影できませんでした。
これから、調査の写真と資料の整理が控えています。
これが、時間がかかり、単調ですが、楽しいものでもあります。
面白い結果が出そうな予感があります。
そして、データを出しながら、次なるターゲットに向けて、夢が膨らむみます。